中国西域警備隊がローマ帝国軍と激突! ジャッキー・チェンの歴史アクション大作『ドラゴン・ブレイド』(紀平照幸) - Y!ニュース http://bylines.news.yahoo.co.jp/kihirateruyuki/20160210-00054261/


ジャッキー・チェンは長年、「世界に通用する映画を作る」ことを目指してきました。香港でスターになった後、80年代には『バトルクリーク・ブロー』『キャノンボール』シリーズ『プロテクター』でハリウッドに挑戦。海外ロケも果敢に行ない、スペイン、モロッコ、マレーシア、日本など世界中を駆け巡りました。その努力は95年の『レッド・ブロンクス』で花開き、初の全米興行成績初登場1位を獲得。以後は『ラッシュアワー』シリーズや『シャンハイ・ヌーン』『タキシード』などで堂々のハリウッド・スターとなりました。



そんな彼が7年の歳月をかけ、中国語映画最高の製作費6500万ドル(約40億人民元、日本円にして80億円)を投入して作り上げた大作映画が『ドラゴン・ブレイド』。ハリウッドからジョン・キューザックとエイドリアン・ブロディを、韓国からはアイドル・グループSUPER JUNIORのチェ・シウォンを招くという国際色豊かな作品になっています。世界各国から招いたスタッフにより、撮影現場には10カ国語以上が飛び交っていたといいます。ダブル・ヒロインは弓の名手ムーンに扮するリン・ポンとジャッキーの妻ショーチン役のミカ・ウォン。監督・脚本は『三国志』『項羽と劉邦』など歴史大作に実力を発揮するダニエル・リーで、ジャッキーは製作者兼アクション監督として、全体の指揮をとっています。


物語の舞台は前漢時代の中国(紀元前50年)、シルクロードの国境地域。広大な砂漠地帯では36もの部族が入り乱れ、領土や利権をめぐって紛争を続けていました。国境警備と治安維持を任務としている西域警備隊の隊長フォ・アン(ジャッキー)は、陰謀によって反逆者の汚名を着せられ、わずかな部下と共に辺境の関所・雁門関に送られてしまいます。一方その頃、ローマ帝国の将軍ルシウス(キューザック)は、暗殺された執政官クラッススの末息子を守って自らの部下たちとシルクロードに落ちのびてきました。辺境の地で偶然に出会い、国の違いを超えた友情で結ばれるフォ・アンとルシウス。しかしそこに、クラッススの長男ティベリウス(ブロディ)率いるローマ帝国の最強軍団が迫っていました。父を殺して執政官の座を奪ったティベリウスは、弟の命を狙い、さらには中国侵略の野望も胸に秘めていたのです。この危機に立ち向かおうとするフォ・アンですが、中国側にも裏切り者が存在したため窮地に追い込まれてしまい…。


シルクロードの一角でローマ帝国軍と中国連合軍が闘うという壮大な物語ですが、実はこれはまったくのフィクションではなく、現地に残る落武者伝説をもとに作られています。戦いに敗れ、東方に脱出したローマ帝国軍兵士の一部が捕虜や奴隷となった後、甘粛省に定住し、今もその末裔が暮らしているというもので、実際に住民のDNA検査を行なったところ、約3分の2の住人が白人の遺伝子を持っていることが確認されたといいます。


この伝説に基づき、リー監督が脚本を執筆。撮影は中国最大の規模を誇る浙江省のヘンディアン・ワールド・スタジオや敦煌、アクサイ・カザフ族自治県で行なわれました。特にメインのロケ地であるアクサイでは、絶え間ない砂嵐に苦しめられながらの撮影だったそうです。

見せ場の一つは崩れかけていた雁門関の再建シーン。これはCGに頼らず実物大のものを作り上げており、その質感はまさに本物。このシークエンスは、ルシウスたちローマ人兵士が中国人たちに当時最先端のローマ式建築法を伝授し、共に協力し合って砦を建て直していくという感動的な場面になっています。最近のジャッキー映画には「争いのない世界を模索する」というテーマが隠されていて、このフォ・アンとルシウス、辺境守備隊とローマ兵士との交流に、その願いが見て取れます。フォ・アンがティベリウスの軍勢に対抗するのも、普段はいがみあっている辺境の部族たちを一致団結させることによってなのです(フォ・アン自身も辺境の民族の孤児だったという設定)。もちろんジャッキー映画に人々が期待するのは激しいアクションなのですから、その点は期待を裏切ることなく壮絶なバトルの数々を堪能することができます。しかしそれでもなお、戦わずに済むならば…という平和への祈りがうかがえるのがジャッキーの優しさなのですね。


ところで本作では情容赦のない残虐な悪役を演じているブロディですが、実は大のカンフー映画マニアで、ジャッキーの熱烈なファン。出演依頼があった時にはすぐに飛びつき、憧れのヒーローとの共演に大はしゃぎだったそうです。劇中では敵同士ですが、撮影時以外では大の仲良し。ブロディはジャッキーのことを「ビッグ・ヒーロー」と呼んで尊敬の念を隠さなかったとのこと。


(付記)

通常は「映画は字幕」派なのですが、今作に限ってはジャッキー役の石丸博也はもちろん、家中宏、宮本充、浪川大輔、森川智之、水樹奈々、井上喜久子といった一流声優陣が揃っているので日本語吹替版も見てみたいな、と思いました。

(『ドラゴン・ブレイド』は2月12日から公開)