待ち時間が楽しくなる! ロンドンで脚光浴びる新スタイルの映画館(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160813-00010006-asahit-movi #Yahooニュース

 

【モードな街角】

 映画界に不況の波が押し寄せているのは、ここ英国でも同じ。しかし、このご時世にあえて、レストラン、カフェ、会員専用のバー、屋上テラスまでを併設した映画館が出現して話題を呼んでいる。「ピクチャーハウス・セントラル」が位置するのは、ロンドンの繁華街のど真ん中であるピカデリー・サーカス。約1年前にオープンした。

【写真】ギャラリーのような内装、ゆったりシートの7スクリーン

 「ピクチャーハウス」は英国内に20軒あるのだが、ここの規模と豪華さは突出している。

 入り口はひっそりと目立たない印象だが、中に入ると、60年代のアメリカンダイナーを彷彿(ほうふつ)させるカフェと、オーク材を使った大きな階段が目の前に広がる。そして、この映画館のために描かれた数々の絵画が壁にかけられ、高い天井からはランプが優雅につり下がり、単なる映画館というよりも、夢の世界にやってきたような感覚を覚える。

 それもそのはず、建物は1896年に完成したトロカデロ(高級レストランと劇場の複合施設)で、国の保存指定建築物。外観保存は厳守しなければならず、内装にも当時の面影が所々に残っている。

 上階はレストラン・バー。ミッドセンチュリーの家具をそろえており、独特の淡いブルーやイエローのソファなどが目を楽しませてくれる。これだけ飲食スペースが広く充実している映画館を筆者は過去に見たことがなく、仮に映画を観なくても、あるいは上映までの待ち時間が長くとも、ゆっくりと楽しめることは容易に想像できる。

 インテリアデザインを手がけたマーティン・ブランドウイツキ・スタジオは、「60年代のアメリカ東海岸の映画館に行って、ダイナーで食事して、という楽しみを再現してみたかった」のだという。

 「チケットの売上はもちろん大きいですが、収入の大部分は飲食なんです」と、ジェネラル・マネージャーのダニエル・アンドレ。ロンドン市内のトップシェフやバーマネージャーのスカウトに奔走したのだそう。

 スペースを活用して、レッドカーペット付きのイベントなどにも貸し出しており、その収入も重要なようだ。改装には莫大(ばくだい)な費用が投じられたと察するが、いくらくらいかかったのだろうか? 「それは公表できません」と、アンドレ氏。

 パソコンやスマホで、どこでも映画が観られる昨今。しかし映画館に行けば、大型スクリーンとサウンドの迫力が必ず楽しめるし、映画の前後に友だちと飲食しながら映画について語り合う、という全体の「パッケージ」が素晴らしいのだ。

 「ピクチャーハウス・セントラル」を訪れ、映画館が提案するそんな新たなパッケージに元気をもらった気がした。