監督&キャストが解説。『ドクター・ストレンジ』に仕掛けられた“扉”とは?(ぴあ映画生活) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170116-00000001-piaeiga-movi #Yahooニュース

 

ベネディクト・カンバーバッチが主演を務めるマーベルの新作映画『ドクター・ストレンジ』が27日(金)から公開になる。本作は、観客の常識をくつがえすような神秘的な世界や、アッと驚く魔術が登場し、これまでにないバトルとヒーロー誕生のドラマが描かれるが、観客に予備知識がなくても、すんなりと神秘の世界に入り込める“扉”が劇中に仕掛けられているという。キャストのティルダ・スウィントンとスコット・デリクソン監督に話を聞いた。

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本作の主人公は、圧倒的な腕を誇るが、いつも“上から目線”で他人に接する神経外科医スティーヴン・ストレンジ。彼は複雑な手術を次々に成功させ、富も名声も手にしていたが、交通事故に遭い、オペをするために最も必要な“手”の機能を失ってしまう。あらゆる治療を試みるも失敗に終わったストレンジは、最後の望みをかけてたどり着いた地で、指導者エンシェント・ワンに出会い“人智を超えた力と世界”を体験する。

1960年代から続くコミックの世界を基に、誰も観たことがない映画をつくるため、デリクソン監督は「コミックに立ち戻って、この作品がどんな要素で構成され、成立しているのか研究した」という。本作ではストレンジ医師が、エンシェント・ワンの下で修行を積み、想像もつかないような“魔術”を身につけて、闇の勢力と戦うことになる。そのため劇中では、時間は巻き戻り、一瞬で遠くまで移動できたり、目の前のビルが細かく折りたたまれたりする。子どもの頃に三面鏡で遊んだ時に見たような“摩訶不思議な世界”がスクリーンに出現するのだ。「この映画を語る上では“スーパーナチュラル(超自然的)”という言葉は正しくないかもしれないね。もっと空想的で、ミステリアスで、私たちの世界を超えるリアリティが描かれるんだ」

監督の話を聞いていると、とても楽しそうだ。しかしスウィントンは「通常、こういうタイプのアクション映画を観ていると、アクションやエフェクトを使ったシーンで一体、何がどうなっているのかよくわからないことがあるんです」と笑みを見せる。「誰がどのタイミングでスキをみせたから、誰のパンチが飛んできて、誰にあたったのか……わかろうと思って観てるんですけど、何が何だかわからないんです!」。確かに、何の説明もないまま、いきなりビルが折りたたまれたり、登場人物が瞬間移動したら、観客は置いてきぼりになってしまう。

しかし、本作を観賞したスウィントンは「この映画は最初から最後までちゃんと観客が“ついていける”映画だった」という。デリクソン監督によると、秘訣は「観客が作品世界に入っていける“扉”として、観客が共感できるキャラクターを描く」ことにある。「ベネディクトが演じてくれたストレンジは、懐疑主義者なんだけど、エンシェント・ワンによって、それまでの自分の常識がすべてひっくりかえってしまう。だから観客がストレンジに共感しながら映画を観ていくことで、彼と同じ体験をしてもらえると思ったんだ」。その手法をスウィントンは「スプーンで子どもに食事を与えていくようなもの」と表現する。「ストレンジは観客の分身だけど、自分のマインドを少しずつ広げて、多次元的な出来事が積み重なっていくので、観客は少しずつ学んで、最後には画面で起こっていることを自然に受け入れられるようになるんです」

製作陣は、観客が自然に作品世界に入っていけるよう、エピソードの順番やアクションの構成を徹底的に考え、さらに“上から目線”のストレンジが、無理やり改心したり、急に“いい奴”になったりしないままヒーローになるドラマを盛り込んだ。ここでのポイントは、スウィントン曰く「ストレンジの柔軟さ」だ。「私が演じたエンシェント・ワンにはたくさんの弟子がいますが、ストレンジは考え方や態度に柔軟性がある。これは重要なことです。彼は最初、エゴの強い人間ですが、自分の柔軟性を何度も試されていくうちに、エゴを手放しはじめようとします。そこでエンシェント・ワンは初めて、彼なら後継者になれるかもしれないと思うわけです」

ストレンジは天才医師で頭もいいが“勉強だけができる”タイプではなく、“圧倒的に要領がいい”タイプで、それが彼の高圧的な態度の根本にあるが、エンシェント・ワンは彼のその部分を利用して修行を積ませ、試練を与え、いつしか人間的にも成長するように導いていく。映画『ドクター・ストレンジ』は、作品世界もキャラクターも“大きな変化”を描いているが、観客は何の心配もなく劇場に足を運べば良さそうだ。

『ドクター・ストレンジ』
1月27日(金) 全国ロードショー