「ドクター・ストレンジ」と「メッセージ」の共通点とは?
同じ役者が出ているということは別の記事で書いたので、今回は別視点で。ネタバレになりますので未見の方はご注意を。
「ドクター・ストレンジ」と「メッセージ」の共通点、それはズバリ「時」を操って世界を救っていることだ。「ドクター・ストレンジ」ではカタストロフィが起きた時間を巻き戻してその惨事をなかったことにし、さらにタイムループを形成して同じ時を永遠に繰り返すという事象をネタに敵を脅して退かせた。一方「メッセージ」では未来に起こることを「記憶」として思い出すことで危機を回避する。いわゆるタイムトラベルものとは一線を画した「時」の扱い方が新鮮で面白かった。
両作品とも個人の人生を救うためではない。それどころか主人公達は自分自身の人生を犠牲にさえし、それでも世界を救うことをのぞむのだ。「今」を救うことが「未来」を守ることにつながるから。それがハリウッド的な物語の作り方だと言われればそれまでなのだが、でも私はそっちの方が好きなのだ。
日本にも「時」を扱った映画作品はたくさんあるらしいが、大体予告を見ただけで私はゲンナリしてしまう。主人公の不幸な「今」を変えるために「過去」を変えるという……なんつーか未練と後悔ばかりが目立つ作品にしか思えないことが多いからである。
もちろん現在の状況を変えるために過去を改変するというタイムトラベル作品だってハリウッドにはたくさんある。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がいい例だし、「Xメン フューチャーパスト」だってそうである。でもそこに「後悔」こそあるかもしれないが、「未練」はこれっぽっちもないのだ。
「未練」は非常に日本的な心情だそうだ。過去に自分が犯した過失に囚われている主人公を描いた「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でも、「未練」という感情は伺えなかった。主人公は犯してしまった過ちをそのまま受け入れ、その重さにかろうじて耐えているのだが、「あの日ああしなければ……」という感情を表に出すことはない。過去に起こったことは変えられないと知っているからだ。彼が抱えているのは罪の意識であって、未練ではない。
ドクター・ストレンジは世界を救うために、何よりも大切だった「医師としての自分」を捨てた。そこに未練はない。自分で決心したことだからだ。
メッセージのヒロイン、ルイーズは未来に授かる最愛の娘が若くして亡くなるという事実を知りつつ、それでも結婚し子どもを産むことを決めた。
自分で選択し、決断したことは苦しくとも受け入れる。そこに「いや、でも……」という未練を生じさせないのが、ハリウッド映画のいいところなのだ。