「幼な子われらに生まれ」を見たんですよ。
ほとんど予備知識のないまま見たので次にどうなるのか予測不能なままドキドキしながら見てたんですが、途中、この世の地獄みたいな展開になって、これ知ってたら絶対見に来なかった~! と思いましたね。いえ、映画はおもしろかったです。日本人的には「ELLE」よりもよっぽど共感できる部分、多いんじゃないかと。
あ、そういえば「幼な子~」には寺島しのぶが出演してたんですが、見ながら「ELLE」日本でリメイクするならこの人でいけそうだな……みたいなシーンもありましたわ。赤裸々すぎてドン引きだったけど(「ELLE」ってそういう映画なんですよ)。
以下、ネタバレになるので下げますね。
この予告、登場人物の人間関係、全部語ってますね。主人公の家庭が抱える問題点もハッキリ言っちゃってるし。何回も見たくなる予告じゃないのに、でも、一度見たこれにつられたんだよなあ、私。
主人公、浅野忠信ですからね。もう顔も身体もそこらのパパの誰よりかっこいいわけです。それなのに、そんな対外的に無敵に見えて(実際、「マイティ・ソー」の一員だったよな、浅野さん)、実はコドモ大好きで家族思いの優しいパパ。それ故に仕事で評価されないという側面をもち、人知れず抱えた苦悩をこうやって一人カラオケで発散させたりしているのです。
はい、この穏和で子煩悩なパパが感情爆発するシーンね、女の私でもこの奥さんにはいらつきますね。このひと、赤ちゃん関係の雑誌、山ほど広げてるんですよ。だったらその中のどれかには妊娠高血圧とか妊娠中毒についての注意とか予防法とか載ってるはずでしょ? しかも上に二人も子どもがいるんですよ? おかしくない? 今なら一言、「ググれ、カス!」ですよ、そんな女。「どうしよう?」って夫にきいて、「明日一緒に病院行こう」とか言って欲しかったのかね? 甘えるな、アホ。高血圧なら減塩食だろ、自分でなんとかせい!
まあしかし、こんなのこの映画の中では何でもないことでね、この世の地獄だと思ったのは、自分の収入も愛情もつぎ込んできたはずの妻の長女に「赤の他人の男だから身の危険を感じる」扱いさらた時ですね。血のつながらないとはそういうことかと、ガックリきますよね、ええ、私が男だったら自分の努力が砂塵に帰した気がするでしょうよ。今までの、毎日の、血を吐くような努力はなんだったの、と。でもね、そこにやっぱり実子のようには愛せていないという負い目もあるわけでね。じゃあもうどうしたらよかったの、と答えの出ない迷宮にさまよいこんでしまう。
妻の連れ子を育てる父親の塗炭の苦しみがもろに伝わってくる作品、日本でここまで作れるのかと感心する反面、ステップファミリーという言葉は導入されても、言葉のように明るくドライな生活にはなかなかなれるもんじゃないんだなあとしみじみ思いました。そして世の中にはそういう生活を自ら進んで受けて入れているご家族もたくさんいるわけでね、本当に大変なんだなあとその勇気に感動もしましたよ。
予告では「不器用」な大人達とか書かれてたと思うんですが、じゃあ「器用」な人達はどうそういう家族を運営しているんでしょうね? お金がたくさんあれば、部屋数の多い家に暮らして互いに顔を合わさないようにしてすれ違い生活していれば問題解決なんでしょうかね? ふと気になったのは、私が見ていて登場人物を「不器用」だとは思わなかったからです。みんなそれぞれ、できることを工夫してやってましたよ。人間関係のぶつかり合いを「器用に」避けることができない、というのはあるかもしれませんが、全部必用なぶつかり合い、話し合いでしたからね。どうもこういう、映画や小説における「不器用」の使い方、好きじゃないんだよな、私。
あ、「ELLE」のエル! あの人、「器用」だったかもしれない! なるほど、学ぶ点はいっぱいあるのね。ちっとも真似したくはないけどね。