というわけで、「中国行って、オ―ランドが出ている映画を見るのだあっ!」
といきなり決心してしまった私。
問題は中国のどこでその作品、「Unlocked」が見られるかである。
ちなみに中国の映画事情は数年前に上海に観光で行った時にシネコン化した劇場を見ていたので、現在ならハリウッド作品の3DでもIMAXでも鑑賞できることは分かっていた。
とはいえ、劇場の前を通りかかるのと、実際にそこに入って映画を見るのでは、必用な作業量がまるで違う。
そもそも、ロクに言葉の通じない国で、土地勘のない都市で、慣れない通貨で、映画や演劇を見るというのは、これで結構ハードルが高いことだったりするのだ、私のような小心者の貧乏人には特に。
そこでリスク回避と経済性を天秤にかけつつ、渡航の計画をたてることになる。
旅の安全性をはかるのは当たり前として、次に最も避けたいリスク、それは財布をはたいて中国に行ったはいいが、オーランドの映画が結局見られなかったという事態である。
日本から行きやすい中国の都市は北京と上海だが、両都市とも過去に観光ずみなので、映画が見られなかったら行ったところでやることが何にもないのだ。近頃では中国も、特に都市部は物価も高くて日本と同じというし、北京なんぞ大気汚染がひどくてマスクなしには歩けないとニュースにもなっているではないか。
というわけで、できれば上海さもなきゃ北京で、とにかく本当に9月22日からオーランドの出ている「Unlocked(アンロックト)」が上映されるのかを確認するのが第一である。IMDbにそう書かれていたからって、簡単に信じちゃいけないのが中国という国なのよ。
今なら日本に居ながらにして他国の映画上映情報を得ることができる。いい時代になったものだ
――と思っていたのだが、これが意外と難しかった!
そもそも相手は中国語である。漢字は簡体字、でアルファベットはピンイン表記に使われてたりする。一筋縄ではいかないのだ。
ここで助っ人要請。身内に中国語のできるヤツがいるので、どうせ通訳に連れて行くつもりだし、ついでなので調べるのも手伝ってくれと頼む。
いろいろ検索している内、「Unlocked」が中国語では「惊天解密」になることを発見する。よし、一歩前進。この「惊天解密」をコピペして上海とか北京とか電影とかと一緒に検索にかけるのだが、何故か埒があかない。それでも上海で上映があるらしいことはなんとか分かった。
そうこうする内、通訳の方がいぶかしげな声をあげた。
「オーランドさんらしい人の映画の中国語のポスターあがってるけど、これ、その映画?」
どれどれと通訳のPCをのぞきにいく。
そこにどーんと映っているのは紛れもなくオーランド・ブルームであった。が、髪が白い。白髪ではなく金髪かプラチナブロンドなのだろうが、見た目は単に白いのよ。それは「「Unlocked」で見た姿ではないし、そもそもこの映画はノオミ・ラパスが主演なので、オーランドがこうして主役然と真ん中に構えているはずがないのだ。それにそこにタイトルとして書かれている中国語は「极致追击」であって、「惊天解密」ではない。完全に別の映画だ。
息を呑む私。
「『S.M.A.R.T. Chase(スマート・チェイス)』だ、これ……」
続く