英国、といえば「紅茶(Tea)」がつきもの。午後になると何をおいてもティータイム優先、みたいなイメージ、日本にありません? アニメの「ガールズ&パンツァー」でも英国製戦車の中では何かにつけて高価なティーセットと覚しきカップで美少女達が紅茶を飲むシーンが出てきます。
これ、実際に英国の映画を見ても同様で、先頃公開されてオスカーの呼び声高い「ダンケルク」でも何かにつけ、ほっとしたいひとときには必ず紅茶のカップやマグが手渡されるシーンが出てきたものです。手に取った紅茶をゆっくり飲めるか飲めないか……そこからすでにドラマが始まっているのですが、もうね、それ以前に海に出ている船の上でもごく当たり前のように悠然とお茶わかしているところにイギリスの国民性をひしひしと感じましたね。
そんな紅茶一辺倒だった英国ですが、最近はコーヒーの消費も増えているそうなんです。
街を歩いていてもカフェが目につくようになり、紅茶の代わりにコーヒーを飲む人々も多くなっているそうなんですよ。やはりスタバなどの有名コーヒーチェーン店が軒並み進出してきた影響が大きいのでしょうか。
しかしそこはさすが英国、紅茶を産地ごとに名付けて味や香りの微妙な違いを味わってきた人々です、カフェで供給されるだけの決まった味のコーヒーで満足できるわけがなかった!
砂糖やクリームやフレーバーではなく、コーヒーの味自体を楽しみたい。
そのためにも自宅で、自分好みのコーヒーを、一からいれたい……そう思う人々の熱意が結集したのでしょうか、こんな装置が作り上げられちゃったんです。
シンプルすぎてよくわかりませんが、私これ最初に見た時はコンビニにあるような豆を挽くところからいれてくれるコーヒーメーカーなのかな、と思ったんですよ。
でも違った。上の写真、元はこうなってます。
上に書かれているキャッチはこうです。
世界中の生豆(きまめ)を、焙煎士の技で楽しむ
白状すると、これ読んでもまだピンと来なかったですね。
何故なら、コーヒー豆の焙煎って、プロに任せるもので自宅で自分でできるものではないという思い込みがあったから。
そうなんですよ、この機械、装置はコーヒーをいれるの物ではなく、ましてや豆を挽く物でもなく、コーヒーの生豆を焙煎する、すなわち焙る物だったのです!
その説明を受けた瞬間、ほんと、ガーンと来ましたね。
自分の先入観を覆された驚きと、え、本当にそんなことが自宅で、あのシンプルに見える機械でできちゃうの? という疑問にも似たショックで。
私、レクチャー受けたことがあるんで知ってたんですが、コーヒー豆の焙煎って、超難しいんですよ。コーヒーの味わいって、焙煎ひとつで全然変わっちゃうので、これで失敗したらその豆、飲めなくなって全滅ですからね。
そしてさらに自宅での焙煎を困難にしているのが、生豆についてる薄皮、チャフ。これが扱いに苦慮するものなんですよ。軽くて、上昇気流にのって飛んでいって、どこにでもへばりついて、とれない。またこのチャフが煎った豆に残っていると風味を台無しにするという困ったヤツ。
このチャフ、大きな焙煎装置だと、煙からふるいにかけて落とす仕組みがあるんですが、実は装置が大きいのはこれのせいだったりするんですよね。
まあ、だから、普通の人がコーヒー豆を買おうとすると生豆ではなく、お店で焙煎したのを買うことになるわけです。一番面倒な部分はプロに任せてしまえってことですね。
それを、その焙煎を、こんなシンプルな装置で、本当にできるの~~???
できるんです。
だから英国ベンチャー企業であるIWAKA社が開発した"The Roast"を、日本のPanasonicが本気で売り出してるわけなんです。
私イベントで実際に焙煎している所を見てきたんですが……
向かって右側にコーヒー豆が入っているのお分かりですか?
ガラスのフタを閉じた状態で焙煎が始まるんですが、しばらくたつとチャフがふわっと豆の中から浮き上がってくるのが見えます。それが見えたと思った瞬間、かき消すようにどこかに飛んでいきます。魔法かと思いましたよ。
遠心分離でも上のカップなの中でやってるんでしょうかね?
そしてその消えたはずのチャフは、下側の受け皿というか受けカップにたまっていくんです。
目に見えないところで何がどうおこなわれているのでしょう?
とても不思議です。
それでですね、コーヒー豆の焙煎にはかなりの高温が必用なんですが、この"The Roast" 、側面はまるで熱くなったりしないんです。むしろ冷たいまま。使い続けたスマホの方がよっぽど熱くなるわってぐらい、"The Roast" の側面、温度変化なし。
めっちゃすごくないですか?
このサイズで、コーヒーの焙煎本気でやってて、側面(たぶん底面も)、ひとっつも熱くならないんですよ? キッチンのどこにだっておけるわ。それどころかリビングのテーブルだって大丈夫だわ。子どもやペットがいたって平気だわ。なにこれ、どうなってるの? ステンレス製の真空マグとかと同じ感じ? 超安全性高い!
一応、ガラスのはまっている上面だけは多少あたたかくなりますが、それでも触れるぐらいだったんじゃないかな???
"The Roast"のあまりの高性能、最先端技術に舌を巻いてしまいましたよ、私。
さらにすごいのは、素人である私達が何もしなくても……いや、スイッチを押したりとかの操作は幾つか必用ですが、それでもほぼおまかせで"The Roast"がプロの焙煎士の技を持って生豆を美味しく焙煎してくれるって点なのです。
なんといっても「スマートコーヒー」焙煎サービスですから。
この「スマート」は「スマートフォン」のそれ。
そう、スマホと連動させることで、プロの技が"The Roast"ににりうつり、様々な焙煎で同じコーヒー豆でも違った味わいで飲めるようにしてくれるのですよ。
これね、飲ませて頂きましたけどね、普段飲んでるコーヒーとはまるで違った飲み物みたいな感覚でしたね。
カフェで出るような深入りの、「中で蹄鉄が立つ」と言われるような濃いコーヒーとはまるで違った、珈琲という植物のエッセンスを頂くような飲み物。それが"The Roast"で焙煎したコーヒーなんです。浅煎りだと色も薄く、実際コーヒーというよりお茶に近い感じ。
あ、なるほど、と思いましたよ。
コーヒーも、まるで紅茶のようにして楽しむ。
これが新しい発想なんだな、と。
まさに英国流。
コーヒー豆は生豆の方が長持ちするそうなので、毎朝焙煎して新鮮なコーヒーを楽しむ。
そんな新習慣、英国だけに任せてないで日本からも広めたらステキなんじゃないかと思ったイベントでした。
「英国アンバサダープログラム」で『英国と創る未来~コーヒーの新しい香りとの出会い~ 』イベントにお招き頂きました。