はい、もちろん見ておりますよ、「ゲット・アウト」。全米で思いがけない大ヒットになったときいたので、初日ぐらいに勇んで行きましたわよ。

 

が!

 

これは日本人にはハードルが高いというか、アメリカの文化……というより白人黒人両社会のことが分かってないと、何がそんなにすごいのかまるで分からない映画なんだと思いましたね。

 

ネタバレになりますので、以下、下げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

映画をご覧になった方には、こちら、町山さんの解説が理解に役立つと思われます。

 

はい、一応の作品、ホラーってことになってるんですけど、実はどこが恐いのかさっぱり分からなかったんですね、私には。キャサリン・キーナーを始めとする思わせぶりな登場人物達が不気味というのはよく伝わって来ましたが、恐らくこの作品のキモであろう白人と黒人の文化の違いというのが全然分かってないもので……。

 

ちなみにね、この映画の仕掛けというか謎というか秘密というか、それはもうすぐに大体の所で見当がついちゃってたんですよ。

時代遅れの格好をした黒人キャラの振る舞いが黒人っぽくないというのは何となく分かりましたのでね。ああ、これは(方法はどうあえ)肉体をハイジャックされるパターンかとアタリをつけてみてたら、大体その通りという。ええ、私、上の動画で町山さんが語ってる映画「ボディ・スナッチャー」とか「ステップフォードワイブス」とか、映画だけじゃなく原作まで読んでますから。

 

だからその謎解きには微塵もサスペンス性を感じないわけです。

謎がとけてから、主人公が自分の身体をのっとられるかも……という恐怖はまあ分かりましたけれども……古今のホラー映画の中で目立つほどすごい描写かと言われると、全然そうでもないのですよ。

 

それなのに、なんで全米では大ヒットになったのか?

 

それは恐らく、黒人の身体を白人が乗っ取るという、その一点に尽きるのではないでしょうか?

 

え~、だって、動画で町山さんもおっしゃってたとおり、映画「デトロイト」の時代から50年たってもアメリカ社会実はちっとも変わってないわけですよ。相変わらず黒人男性は街を歩いてるだけで警官に取り囲まれて逮捕されちゃう。そういう意味では黒人の方が社会的弱者なのですよ、アメリカでは。

 

そういう社会的弱者の姿に、強者であるはずの白人が、その外見を捨ててまで成り代わりたいか? 年老いて余命幾ばくもないと知ったとて、今まで自分が差別して来た対象の姿を好んで選ぶのか?

 

そこの葛藤が、恐らくアメリカではサスペンスにつながるのではないでしょうか? だとしたら私には全然分からない世界なんですが。

 

まあね、白人のマッドサイエンティストが実験台に使うのに同胞(白人)の肉体を使わないというのは分かりますよ。だけど手法が確立し、失敗も少なくなったというのなら、白人の身体を乗っ取り用に選んでもいいはずなんです。ナチスならそうするでしょうよ。

 

でも、敢えて、わざわざ、黒人の身体を選ぶのは、白人よりも身体能力が優れていると、白人である彼らが思っているから。

 

推論はできても、その辺りにアメリカ人が感じるであろう行き場のない感情の爆発的なものを日本人の私は全く感じることができないので、ただ

「はあああ~、へえええ~」

と見るしかない、というのが非常に残念な所なのでした。

 

まあ、そこここからあぶり出される、教育を受けているとされる人々の普段表に出さない差別意識というのはよく分かったんですけどね。肌の色は差別しつつ、しかしその肉体のパワーは欲しい、みたいな複雑で屈折した思いというのは、全然実感が伴わないので……ピンと来ないわけです。それにそういう表に出さない差別意識が頑として存在しているってことは、例えば「プロジェクトランウェイ」見てれば自然と伝わってくるんですよ。だから別に目新しくもないので、よくぞあぶり出してくれましたって程のものにもならない。

 

しかしなんとこの「ゲット・アウト」、「ダンケルク」と並んで今年のアカデミー作品賞にノミネートされてますからね、何か私には分からないけれどアメリカに住む人々の琴線に触れる部分が大いにあったってことですよね。「デトロイト」みたいに直接訴えてるわけではないのが逆によかったのかな? 難しいです。

 

ま、アカデミー会員は差別意識にきちんと向き合ってるよ、と対外的に示したいだけのノミネートかもしれないですけどね。そういうお高くとまってる、いわゆる「意識高い系」の人達をめっちゃおちょくってるのが「ゲット・アウト」なので、それが一番滑稽なのかも。