6月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2345
ナイス数:32

吃音: 伝えられないもどかしさ吃音: 伝えられないもどかしさ感想
社会的動物と言われる人間の、社会を築くための最古のツールは声に出して話す言葉だろう。そのツールを備えていないのを唖者とすれば、吃音はツールがあっても上手く使えない人の障害と言える。使って当たり前のツールを使えない人は奇異に映る。しかしそのツールが実は壊れているとしたら…例えば形はハサミなのに刃が鈍磨してるとか…その人は自分も他人と同じツールを持っているのに何故使えないのかと深刻に悩むだろう。そのツールが、人を人たらしめる「発話」だとしたら、その悩みの深さはどれ程か…。本書はその深刻さを、真剣に伝えてくれる
読了日:06月01日 著者:近藤 雄生


不思議の国の少女たち (創元推理文庫)不思議の国の少女たち (創元推理文庫)感想
数ページ読んだだけで手放せなくなり、そのまま読み切ってしまった。ファンタジーファンの琴線に触れる秀逸な文章が素晴らしい。ただ少女が主人公のためか、少年が主人公の作品に比べるとアクションが少なく、危機も苦難もフィジカルなものではないのでそこがちょっと物足りない。特殊な生徒が集まる学園物ならやはり「ハリー・ポッター」の方が面白い。 ただこの作品は、小説やゲームの世界に自分の居場所を見いだす人間にとってのある意味理想なのだ。かつて乱歩の書いた「現世は夢、夜の夢こそまこと」は、現代的に表現されるとこうなるのだろう
読了日:06月02日 著者:ショーニン・マグワイア


巨神降臨 上 (創元SF文庫)巨神降臨 上 (創元SF文庫)感想
毎度先の展開が全く読めないシリーズの第三弾。相変わらず予想のつかない物語の進み方には欣喜雀躍すれど、文体とか登場人物の反応の仕方は少々鼻につき始めたかも……。とはいえここで書かれていることは現代世界の縮図そのもの。まだまだ目が離せません!
読了日:06月08日 著者:シルヴァン・ヌーヴェル


巨神降臨 下 (創元SF文庫)巨神降臨 下 (創元SF文庫)感想
う~ん、面白かった! これぞSFだわ~~~♪ ところでこの話のSF的設定を抜きにして考えると、これによく似た作品日本でも作られてますね。それは映画の「クレヨンしんちゃん」。人(親)の話をきかずに好きなように突っ走る子どもと、その子を守るためにどこまでもやる保護者達。そして何故か手を貸してくれる周囲や上位の人(?)達。すったもんだで破壊の限りを尽くした挙げ句、最後に訪れるカタルシス。 というわけで、この作品は日本人が大好きなパターンだと思います。
読了日:06月09日 著者:シルヴァン・ヌーヴェル


ノース・ガンソン・ストリートの虐殺 (ハヤカワ文庫NV)ノース・ガンソン・ストリートの虐殺 (ハヤカワ文庫NV)感想
著者は映画の脚本や監督も手がけていると訳者後書きで読んで大変納得。この筋立ては確かに映画的なのだ。だけど文章の表現力がとても豊かでユーモラスなので、知らずに読んでいると何かだまされてしまう……小説としてのその後の展開を。文体によるミスディレクションなのかもしれない(或いは単に著者のクセ)。とにかく文章が上手で面白いのでどんどん読み進めたくなるのだが、生憎卑語まで豊富なので数章ごとに本を置いて目と心を休めたくなる。その度に心の代わりにあちこちを磨いていたら家中ピカピカになった。読書にこんな効能があったとは!
読了日:06月13日 著者:S・クレイグ・ザラー


オーケンの、私はヘンな映画を観た!!オーケンの、私はヘンな映画を観た!!感想
オーケンの高校生時代の映画鑑賞が豊富なのは、東京に住んでいたからというのが絶対にある。当時の地方都市にはなかったし、現代の東京でももはや望めない映画ファンやマニアの天国的状況が、当時はまだあったのだ。本書に出てくるオーケンがかつて通った映画館のほとんどは今はもうない。 本書に出てくる洋画は結構分かるのだが、邦画がほとんど分からないのは居住地のせいというのもあると思う。とはいえオーケン主演の「ドス竜」は深夜にやってたのを見ましたわ。演技はともかく、彼のふんどし一つの裸体に描かれた彫り物は大変美しかったです。
読了日:06月22日 著者:大槻 ケンヂ


オーケンの、私は変な映画を観た!! 2オーケンの、私は変な映画を観た!! 2感想
本書の面白さは内容もさることながらオーケンの語り口の上手さにある。文章は平易だが語彙は豊富だし、論は筋道たっているし、指摘は的確だ。さらに素晴らしいのは本人称してボンクラ少年だった頃の感性を未だ忘れていない事。当時の感想をヴィヴィッドに伝えつつ、客観的な視点からの突っ込みに毎度笑わされる。 あとがきになって初めてオーランド・ブルーム出演作が語られたのだが、それが「エリザベスタウン」で「面白くない」とばっさり。でも「深夜にTVで途中から見たら得した気分になる」とフォローを入れるあたりにオーケンの映画愛を見た
読了日:06月23日 著者:大槻ケンヂ


もぎりよ今夜も有難うもぎりよ今夜も有難う感想
映画と映画館とそこに働く人や物に対する優しい愛情が感じられる。後半は地方の映画館を巡る紀行文になって、それもまた楽しい。 ところで私が初めて片桐はいりを見た瞬間から感じていた微妙な違和感、それがなんであるかが漸く理解できたのが本書だった。彼女はその個性的な顔と、醸し出す雰囲気との間に激しいギャップがある。何故あの顔立ちであんな超然とした気品あふれる笑顔を浮かべられるのか不思議だったのだが、子どもの頃「ローマの休日」のパンフを毎日見つめ続ける内、オードリー・ヘップバーンの微笑み方が身についたのだそうだ。納得
読了日:06月27日 著者:片桐はいり

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