10月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3980
ナイス数:44
訣別(上) (講談社文庫)の感想
リンカーン弁護士のシリーズかと思っていたらハリー・ボッシュの方だった。こちらは三人称なので最初はちょっと勝手が違う感じだが、読む内にすぐひきこまれてしまった。主な話は二つあって、ハリーが私立探偵として関わるものと警官として捜査するもの。LAという巨大な都市からサンフェルナンドというこぢんまりした市の警察に身を置くようになったハリーが、給与が支払われない代わりに自由を手に入れてのびのびしている様子が伝わってくる。私立探偵としての仕事は人捜しなのだが、退屈な調査のはずが滅法面白く感じられるのは作者の力量ですな
読了日:10月03日 著者:マイクル・コナリー
訣別(下) (講談社文庫)の感想
過去に遡っての人捜しにからめてその時代のアメリカの空気を描写しているのが面白い。地理的にも文化的にも広い面をカバーした作品である。途中でミッキー・ハラーも出てくるが、彼の登場は何故か危険の幕開けって感じがする。相も変わらず証人や証拠を消すために荒っぽい方法がとられているが、これは映画で見るより本で読む方が心がざわざわしてよっぽど恐ろしい。人捜しも捜査も最後になってからの急展開が素晴らしい。だが一番いいのは作者のアートを愛する心と、アメリカに入ってくる他民族の人々への思いやりが如実に表れている部分なのだ。
読了日:10月04日 著者:マイクル・コナリー
ブラックボックス(上) (講談社文庫)の感想
1992年のLA暴動から物語は始まる。そんな中でも殺人が起こるたびにかり出されるのだから刑事も大変である。おざなりになりがちな捜査の中で、ボッシュの気を引きいつまでも記憶にとどまり続けた事件が20年の歳月を経て再びたち現れた…。 当時でさえろくに物証のなかったものをどうやって調べていくんだ…と思うのだが、ボッシュというか作者が上手くて、ほんの一筋の手がかりから様々な事実をあぶり出し、それをつなげて全体図を構成していくのが実に巧みなのである。一人称で饒舌なミッキーと違い、三人称で寡黙なハリーだが、面白いわ!
読了日:10月08日 著者:マイクル・コナリー
ブラックボックス(下) (講談社文庫)の感想
コナリー作品では様々な布石や伏線がピタリと合う瞬間が最も楽しく、ドキドキする。作者の見事な手腕だが、もう一つ、ボッシュという主人公の”男らしさ”を時代に即して変化させているのもスマートだと思う。本書では高校生の娘の扱いに精一杯気を使いながらも妥当ではない行動をとっては反省するボッシュの姿が描かれている。日本と違うのは彼が娘を一個人として尊重している点と、娘が毎日の料理や父親の世話など家事一般に携わらない事。それでも愛は伝わっている。上巻に「ライ麦畑でつかまえて」について親子で語るシーンがあって、美しい。
読了日:10月09日 著者:マイクル・コナリー