11月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:4465
ナイス数:63
ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)の感想
ハリー・ボッシュの第一作。その後シリーズ化されるだけあって気合いの入った作品だが、使われているテクノロジーに隔世の感がある。92年上梓なのでまだ30年とたっていないのに、世紀をまたいだとはいえ捜査方法の古さに愕然とする。証拠としてのDNAどころか、化学捜査班には未だCSIという呼称さえないらしい。そしてさらにその20年程前のベトナム戦争時代の回想が挿入されてくるのだが、そこで説明されるベトコンのトンネルがいかに深く複雑かという事を私は小学生の頃から知っていた。何故なら「サイボーグ009」に描かれていたから
読了日:11月10日 著者:マイクル コナリー
ナイトホークス(下) ハリー・ボッシュ・シリーズ(1) (扶桑社BOOKSミステリー)の感想
本の中にまさにハリーのシリーズの展開の仕方を表しているような表現があった。砂時計と一緒で、上の砂は最初の内は遅々として減っていかないように見えるのが、量が減ってくびれの部分に近づいてくると一気にまとめて滑り落ちていくというもの。それはハリーの捜査について本人が抱いている感覚なのだが、読者もそれと同じ事をよく思う。話は一応進んでいるけどいつになったら面白くなるんだ? と思っている内にいつの間にやらスピードがついて手放せなくなり、そのまま一気に読了まで進むのだ。これ、一作目からずーっとそうなんだね。
読了日:11月11日 著者:マイクル・コナリー
ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)の感想
若い(といっても40代)ハリーは、激しい。激情をコントロール術を身につけたと同時に彼は対人関係を築く事が億劫になったのかもしれない。刑事としての立ち回り方は下手なのではなく、上手くやる方法を百も承知でありながら、嫌いだからやらないのである。仕事に没頭する事で孤独を忘れようとして、しかし心に残る母の面影と安らぎを与えてくれる女性への憧憬は常に残る。こういうキャラ、私は大好きだ。何故なら「ウルフガイ」の犬神明にそっくりだから。明が人間に生まれていたら、きっとハリーのようだったに違いない。思いがけない再会だった
読了日:11月11日 著者:マイクル コナリー
転落の街(上) (講談社文庫)の感想
20年たってもハリー・ボッシュの激しさは変わらないのであった。だがハリーは時代の変化を受け入れない男ではない。それができるのは、常に自分のとった行動が周囲に及ぼした結果を観察し、それによって自分の行為を恥じ、相手に謝罪することを辞さない人間だからだ。本書では性犯罪者に対する己の偏見をハリーは反省させられた。それは読者も共有すべき視点だと思う。そこに存在する葛藤も、丸ごと。幼児性愛の変態犯罪者にも人権はもちろんあるはずだ。だが、それを認めるのは難しい。そして彼らをそうと知りつつ野放しにすることも。
読了日:11月13日 著者:マイクル・コナリー
転落の街(下) (講談社文庫)の感想
ボッシュは常に過去とつながっている。デビュー作では20年程前のベトナム戦争時代への言及がメインだったが、それから20年近くたった今ではデビュー作あたりに書かれていた出来事がきっちり登場人物達に共通の過去となって出てくるのだ。「リンカーン弁護士」シリーズからボッシュに触れた私としては、もっと早くにデビュー作から順を追って読むべきだったわと反省しきり。 しかしこの著者はダジャレが好きなんだなあとしみじみ。タイトルのDROPしかり、本文にもダブルミーニングたくさん出てくる。弁護士シリーズはその欲求を満たすためか
読了日:11月13日 著者:マイクル・コナリー