11月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:4465
ナイス数:63
燃える部屋(上) (講談社文庫)の感想
ボッシュが長年心に秘めていた気持ちをようやく言葉にして語った時、それは黄金の輝きを帯びていた。だがその同じ言葉が誰かに引用され、利用され、コマーシャリズムにのった途端、その輝きはまがいもののそれとなる。それを誰より苦々しく思っているのはボッシュ自身。そうやって彼はますます寡黙になるのだろうか。幸い彼には愛娘がいて、その会話にウィットを出し惜しみする事はない。本作で最高なのは 「鼻の本来穴のないところにに穴を開けるつもりと言っているのか?」という、ボッシュの心の底からの問い。可愛いったらありゃしない♪
読了日:11月15日 著者:マイクル・コナリー
燃える部屋(下) (講談社文庫)の感想
本書で立ち返ってきた過去は「ブラック・アイス」のもの。つい先日読んだばかりだったので、記憶が新たでよかった。 それも含めて大変面白かったのだが、最後に驚いた。こんな幕切れとは……。ボッシュの人生はつらいことばかり。せめてもの慰めに娘がいてくれて良かったと思う。それにしても日本と違うのは、勉強が本業である学生の娘に食事を始めとした家事一般を担当させない事だ。ボッシュは常に娘の食事を気にかけているが、晩ご飯は大体はテイクアウト。レストランだったりファーストフードだったり様々だが、それで普通なんだなあ!
読了日:11月18日 著者:マイクル・コナリー
贖罪の街(上) (講談社文庫)の感想
リンカーン弁護士ことミッキー・ハラーが最初から関わってくる。警察をやめて暇をもてあましているボッシュに仕事を頼むのだが、その理由が実は冒頭のパラグラフと密接に関係している事に気づいたところで作者の術中にまんまとはまる。毎回毎回、よくもこう、新しい見せ方をしてくれるものですよ。 本書ではボッシュとミッキーのよって立つものの違いが明確に言語化されている。彼らが法の執行官と弁護士という対立する職業についているせいもあるだろうが、性格の違いもそこにはあるようだ。苛烈でストイックなボッシュと、清濁併せのむミッキー。
読了日:11月19日 著者:マイクル・コナリー
贖罪の街(下) (講談社文庫)の感想
ボッシュはかつての敵の軍門に下ったと、自分でも思い娘にも蔑まれかつての同僚の非難を受ける。そんな中でも彼はうちひしがれたりせず、ただ黙々とやるべき事を果たしていく。その中で「警察」という組織から離れたことでかつてない自由を味わう瞬間があるのが本書の救い。ボッシュには己の偏見に気づき、それをきちんと正す心があるから、変化にも順応できるのだ。アプリを入れてウーバーだって呼べてしまう。そのウーバードライバーとの会話が数少ない心温まるシーンだった。マディの気持ちも分かるけど、もっとパパに優しくして欲しいわ。
読了日:11月19日 著者:マイクル・コナリー
指紋を発見した男―ヘンリー・フォールズと犯罪科学捜査の夜明けの感想
地道に努力を重ねた者が周辺の政治的事情故にその功績を認められないという図式はボッシュでも読んだばかり。指紋に関しては、たぶんヘンリー・フォールズという名前は古いミステリー小説では語られていなかっだろう。ベルティヨンの名前の方がまだ記憶にあったぐらいだ。それは彼が自分が編み出した個人識別法に拘泥するあまり、指揮下の仏警察は英国発ですでに一般的になっている指紋識別を取り入れなかったという文脈だったりするが、そこで語られるのは指紋識別をスコットランドヤードに持ち込んだ人物であり、フォールズではない。気の毒である
読了日:11月19日 著者:コリン ビーヴァン
男しか行けない場所に女が行ってきましたの感想
ところどころ鋭い指摘があるのだが、全体的には散漫で惜しい感じ。男がやる事を個別に取り上げて、それに対する個人の感想は切り口も鮮やかで面白いのだが、基本的に自分の不満をぶつけているだけで「考え」に至ってないというか……。私も女だから女性である著者に共感できる部分も多いのだが、「女」以外に共通点がないので「何故そう感じるのか」理解できない箇所もまた多いのだ。もっと自分の内面に深く切り込んだ部分を最初の方で出してくれていれば、著者の思いに深く触れる手助けになったかもしれないが……。 マンガエッセイの限界か。
読了日:11月19日 著者:田房永子