映画評論家・町山智浩氏「人類は学ばない」 第一次大戦ドキュメンタリー作品から歴史の反省を論考

 

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第一次世界大戦の戦場をとらえたドキュメンタリー映画「彼らは生きていた」

 

 

 

映画「彼らは生きていた」(公開中)の大ヒット公開記念トークイベントが5日、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで行われ、映画評論家の町山智浩氏が登壇した。

【画像集】第一次世界大戦の戦場をとらえたドキュメンタリー映画「彼らは生きていた」 記録映像を再構築することで誕生した

 本作は、第一次世界大戦の終戦から100年の節目を迎え英国で行われた芸術プログラム「14-18NOW」と、帝国戦争博物館の共同制作で、帝国戦争博物館に保存されている記録映像を再構築することで誕生したドキュメンタリー作品。メガホンを取ったのは、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督だ。

 この日のトークショーで町山氏は、戦争や歴史に関する豊富な知識を駆使して、第一次世界大戦当時の時代背景などを解説。「なんでこんな悲惨な事態になったのかということを話したい」とし、多くの発明によって「世界の戦場を変えていった」と説明した。さらに、「いきなり近代の軍事的なテクノロジーがこの戦争に流れ込んだ形になった。背景に産業革命があって、それが戦争に導入されてしまった。化学の進化がさらにこの戦争をひどくしました。一番ひどいのは毒ガスです」などと語った。

 町山氏は最後に、「この映画に出てくる戦場は、無人地帯、『ノーマンズランド』と言われます。いまどうなっていると思いますか、100年ぐらい経っています」と来場者に呼びかけた。「今も誰も住めないんですよ。まず大量の鉛の弾丸が地面にあって、植物が育たない。全部掘り返すのは不可能。毒ガス弾が今もあるんです。誰も手が出せない。核戦争の前に、その土地自体を完全に破壊するという戦争が起きた。これが西部戦線なんです。第一次世界大戦が終わった時に、『これ以上の戦争があったら人類は滅んでしまう』『これは戦争を終わらせる戦争だ』と言われたのですが、すぐに第二次世界大戦が起こった。それがあったからこそ、EUができたんですよね。そのEUから英国が離脱した。人類は学ばないと思います」と述べた。

 

ENCOUNT編集部