9月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1159
ナイス数:43
オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで (岩波科学ライブラリー)の感想
オノマトペに関する世界的かつ多岐にわたる研究の最新結果。日本語のオノマトペは細かく分けると擬音語、擬声語、擬態語、擬容語、擬情語の五つになるそうだ。世界各国のオノマトペで「音」に由来するものは多く共通のイメージをもつそうだ。言語音と印象の結びつきのデータベースが私達の脳内にはあるらしい。「音」は人間の感情を呼び起こすため、始原的な単語として発せられたのかもしれない。それ故、赤ちゃん言葉としての側面をオノマトペは今に持つとしたら、子どもに幼児語で話しかけるのはとても真っ当な事なのだ。もっと早く知りたかった。
読了日:09月30日 著者:
「装飾」の美術文明史―ヨーロッパ・ケルト、イスラームから日本への感想
図版は多いが口絵以外はモノクロなので少々分かりづらい。著者の他の本にカラーで紹介されている写真も多いので参考にするとよい。特にケルトの組紐文様は「ケルトの歴史」の拡大図がベスト。本書が網羅しているのは欧州のみならずイスラームからシノワズリ、ジャポニスムに至るので、世界の「装飾」の文化的な流れを理解するのには最適だと思う。20世紀初頭のウィーンでクリムトがサダヤッコを見るとのくだり、貞奴の人気が自分の想像以上だったと知った。当時の欧州の芸術家達の日本趣味の一翼を担っていたとは。キモノが人気になった理由かも。
読了日:09月26日 著者:鶴岡 真弓
図説 ケルトの歴史: 文化・美術・神話をよむ (ふくろうの本/世界の歴史)の感想
大判なので写真も大きく、また拡大写真も豊富で大変目にやさしかった。ケルトの模様を詳細に知るには今まで読んできた中で一番だと思う。世界の各地に散らばる古い彫刻や石細工の写真も豊富。また、アーサー王伝説関連ではバーン・ジョーンズの絵が多く使われている。「ケルト」と「ドルイド」の違いがよく分かった。しかしケルト文化、ヨーロッパのあちこちに散ってる上、失われたものが多い。タイムトラベルが現実にならない限り、全容は分からないのだろうか。
読了日:09月25日 著者:鶴岡真弓,松村一男
阿修羅のジュエリー (よりみちパン!セ シリーズ44)の感想
阿修羅像に端を発しビザンティンの皇妃テオドラのモザイク、さらにボッティチェリにクラナッハ、フェルメールからモロー、クリムト、ミュシャらの絵がたくさん紹介されている。彼らの絵に自分が心惹かれる理由が本書で分かりやすく解説されていた。そこに描かれているジュエリーのルーツはなんと東方にあったのだ。シルクロードを通って伝わった「飾り」や「装飾」はすなわち文化。神仏でも人間でもその本質は「身につけている物」こそに浮き彫りにされる。「デザイン」や「文様」にはその時代の人々の世界観や自然観や祈りが映し出されているのだ。
読了日:09月25日 著者:鶴岡 真弓
国別 すぐわかる世界の染め・織りの見かたの感想
良書。読者が知りたいと思ってる事が「すぐわかる」ように考え抜かれた構成。馴染みのない単語にはルビを繰り返しふってあるので読み間違える心配もない。何より文章が素晴らしい。説明文の見本のようだ。必要事項が簡潔に要領よく並ぶのを正確な「てにをは」に従って読めば内容が自ずと理解できる。歴史や地理や社会制度について3行ぐらいで要点が書かれているのだ。その背景が分かってこそ、各国の布の良さや持ち味が伝わってくるというもの。写真も多いが、同じ一枚を全体とやや拡大した部分という具合に使い回しているのはちょっと残念だった。
読了日:09月16日 著者:
装飾デザインを読みとく30のストーリーの感想
自分の好きで実際に鑑賞してきた作品が幾つも取り上げられているのにニヤリとした。これまで自分が見てきたものが無駄にならず、読書でこのように生きてくるとは♪ 装飾というものには子どもの頃はまるで興味がなく、虚飾であり無駄であり浪費なのだと思い込んでいた。そんなものはなくても人間は生きていけると。確かに生きてはいける、生存という意味では。だが暮らしはどうだろうか? 季節ごとに咲く花々に心が躍るように、生活の中に美があれば人間は嬉しいのだ。それが装飾が生まれ長く受け継がれた理由なのだろう。装飾は民族の文化なのだ。
読了日:09月08日 著者:鶴岡真弓
読書メーター