10月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3137
ナイス数:30
パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫)の感想
美しい日本語に心洗われ、古風なイギリス紳士の忍耐と責任感にすっかり感動。ナチスのヨーロッパ各地への侵攻、追い詰められた英軍のダンケルクからの撤退、案に相違して持ちこたえられない仏軍、なめてたのに実は強かったドイツ空軍等、ここ数年の映画でよく見た時代の出来事が事細かに日記の如く描出されているのに感激。しかもそれが語られるのがロンドン空襲下のクラブという、胸アツ設定。戦下を逃れるために子どもを託す大人達にも覚悟はあるだろうが、血縁でもないのに連れて歩く羽目になった男性の苦労はいかばかりか。今読んでも大変面白い
読了日:10月03日 著者:ネビル・シュート
ボタン穴から見た戦争 白ロシアの子供たちの証言 (岩波現代文庫)の感想
何十年たとうが見た時のまま鮮烈に思い出される戦争の記憶。その時は子どもだったために表現できなかった思いを大人になって得た言葉で語ったとしても、心の傷は少しも和らぐことがない。子ども達がどれ程「お母さん」を愛し慕っていたことか。母親達が子どものためにどれだけの苦労を厭わなかったか。だが書かれているのはそれだけではない。避難し、疎開した先での周囲の人々の暖かさ、優しさもじわりと伝わってくる。少ない食べ物なのに自分より飢えてるからと分け与えるのは大人であり、それを見て育った子ども達だ。その人間性が本書の救いだ。
読了日:10月04日 著者:スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ
障害者の安楽死計画とホロコースト ナチスの忘れ去られた犯罪の感想
強制収容所というとユダヤ人をガス室で大量死させたイメージが大きいが、実はそれ以前にナチスの行った障害者や精神病者の虐殺や断種が母体となっていた。「生産性がない」という理由で収容所に集められ、政府の指導の下、親の許可もないままに殺されていった障害児達。薬を使うのがもったいないと計画的に餓死に追いやられた者も多い。「生産性がない者を効率的かつ安上がりに殺す」ための技術は第二次大戦の前から研究され、培われたものだった。ダイナマイトは死体が飛び散って掃除が大変だからガスを選び、シャワーと言えば自分から赴くからと。
読了日:10月04日 著者:スザンヌ E・エヴァンス