3月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:7413
ナイス数:87
ショートショートドロップスの感想
活字は大きくページは厚く文章は明快で内容は面白い。こんなに早く読了できる本も他にないだろう。作家が全員女性というのも入り込みやすさの一因かも。久しぶりにSF的な感性に触れられて新鮮な気分になった。矢崎存美作品に出てくるぶたさんは完全に「ねぽりんぱぽりん」の人形のイメージで読んだ。松崎有理作品はオチにすぐ気づくのだがその後の展開がキレ味抜群で最高。新津きよみ作品も読みながらオチに気づくが、勢いで最後まで読み切ってしまう。が、再読するとちょっとオカシイような。痛快だったのが掘真潮作品。これ、実現できるのでは。
読了日:03月05日 著者:新井素子 編
おばちゃんたちのいるところ Where The Wild Ladies Are (中公文庫)の感想
見かけは現代日本社会で普通に生活しているように女性達も一皮剥けば……というお話。女性のみならず男性の生きづらさにもさらりと触れている。短編といよりもショートショート集だが、読む内に漠然と全体のつながりが見えてきておもしろかった。こういう作品、マンガではよくあるような気がするが、上手な文章で小説化されるとこうなるんだな。現代日本で女性が抱える諸問題を肩肘ぬけたチカラの入らない形で提起してくれてるようでもある。「のうのうと死んでるヤツが許せん」とか「転生してたら今すぐ死ね」とか、笑ってしまいました。
読了日:03月20日 著者:松田青子
ぶたぶたの休日 (徳間文庫)の感想
「ショートショートドロップス」で読んだぶたぶた作品が楽しかったので手に取ってみた。ちょっとした怪異がありふれた日常に刺激をもたらすという体は「おばちゃん~」と同じ。幽霊と生きたぬいぐるみでは後者の方がより非現実感が高い、らしい。そもそもが無生物だからか。ぶたぶたが主人公として活躍するのかと思っていたらさにあらず、彼を狂言回しに様々な人物を描くのが作者は楽しいらしい。喋るぶたのぬいぐるみというあり得ない存在を目にした時、人はゲシュタルト崩壊を起こして己が心の深淵を覗く。すると何故か問題が勝手に解決されるのだ
読了日:03月23日 著者:矢崎 存美
刑事ぶたぶた (徳間文庫)の感想
先に読んだ「休日」は3作目で、こちらがシリーズ2作目だそう。短編数本で一つの物語を構成するという作りは同じだが、「刑事」というしっかりしたくくりがある分本作の方がまとまりがよく、面白かった。ぬいぐるみが動いて話して働いて、それをまた周囲の人間が比較的容易に受け入れるというほんわかファンタジーなので、犯罪捜査が主眼ではなく人情物である。911以前に書かれた作品なので世界もまだなごやかだ。ぶたぶたを見た登場人物が、あれが現実なら他のどんな不可能事だって実現してもおかしくないと思うのだが、その気持ちはよく分かる
読了日:03月25日 著者:矢崎 存美
読書メーター :87