4月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:2247
ナイス数:29
ブラック・コーヒー (クリスティー文庫)の感想
戯曲が二篇。ポワロものの「ブラック・コーヒー」のトリックはその後小説にも使われていて馴染みがあるもの。確かに舞台で見る方が分かりやすいし「おお!」となりそう。書かれたのが1930年なので小道具がさすがに古く、今となっては説明が必要だが。謎の方程式は原子爆弾製造に関わるもので当時はスパイ戦最先端だった。 一般受けしなかったという「評決」の方が読む分にはずっと面白い。理想主義で自他ともに高潔と認める男性が、その観念に周囲の女性をを巻き込んで不幸にする事を示唆している。現代に通じる鋭い視点はまさに彼女の真骨頂だ
読了日:04月03日 著者:アガサ・クリスティー,麻田 実
フランクフルトへの乗客 (クリスティー文庫)の感想
'70年、80歳のクリスティー作。何だかとりとめがなかった。当時のスパイ物に付き物の悪の秘密組織を突き止める話と恋愛譚が上手く結びつかないまま唐突な最後を迎える。バーダーマインホフ等学生運動から過激派に変じるのも悪の組織の暗躍のためという設定だが、そこに描写されてる空気感そのものは現代とほとんど変わらない事に逆に驚かされる。ヒトラーの台頭が好例とし、同様に人心を操りごく少数の富豪にのみ金を集中させるためには科学の悪用も厭わない。彼女が描きたかったのはそういう人々の心の動きと集団心理の恐ろしさかもしれない。
読了日:04月12日 著者:アガサ・クリスティー,永井 淳