そう、実は #AIRエア はドスティな話。マット・デイモンが演じるソニーが社長や同僚とのドスティで成功をなし遂げていくのです。

 

不振をかこっていたバスケットシューズ部門の長、ソニー。主役なので早々のご登場。彼は高校生達のゲームを見ては次のスター選手が誰かを見極め、早めに売り込むためナイキのシューズを提供するなど現地を回っては細やかな仕事をしている。でも帰りにはカジノに寄って大勝負をしてスッテンテンに。 

 

彼の眼力は鋭く各チームの強さも見抜けるから、スポーツクジでは連戦連勝。なんというか、浮き沈みの激しい人です。でも仕事ぶりは丁寧だし、見る目もある。そして人情に篤い。それは社に戻ってからのお喋りや会議のシーンで伝わってきます。この間ほぼ台詞だけなのに退屈しないってすごいと思った。 

 

私が普段見てる映画ならとっくに一騒動あって銃撃とか爆発とかせめて殴り合いとかは起こってるはずなのに、何にもないんですよ #AIR は。そういう意味ではほんっとに地味な映画なのに見る者を飽きさせないって、どこにそんな魅力があるんだろうって不思議にさえ思っちゃう。監督の演出力ですね。
 
監督のベンは自分も俳優だから役者仲間の演技力を信じてるんですね。会話が延々と続くシーンでも、その内容の面白さを彼らが十二分に伝えてくる。台詞のテンポもよいし、一瞬の間で笑いに落とすツボも心得てる。二人のやりとりの中で緊迫感の盛り上がりとその解消によるカタルシスを感じられるんです 
 
あ、登場人物は多いんですが、重要なのは大体「二人の会話」部分に絞られます。マットを聞き役にもう一人が心の内を明かパターン。ジェイソン・ベイトマンが素晴らしくてオスカー級だと思いましたが、続くクリス・ロックも負けてませんでした。こんな話ができるのは信頼の証ということ。 
 
会話の端々でさりげなくソニー(マット)の面倒見の良さというのも伝わって来るんですね。コイツは友達甲斐のあるヤツだと周囲のみんなが思ってる。だからクライマックスに向けてみんなが自然と味方についてくれる展開に無理がない。これはビジネスの話じゃない、最終的には人間性が勝利する物語です 
 
彼らの前に立ちはだかるのがヴィオラ・デイヴィス。いや、ウォラーじゃなくてジョーダンの母役ですけど、迫力は同じだけあったわ。これね、面白くってね。日本ではプロ野球選手の新人獲得は父親を落とせって言われてたそうなんですが、アメリカバスケ界では母親がキーパーソンの場合が多いのね。
 
「将を射んとせばまず馬を射よ」は洋の東西を問わないけれど、落とす性別は違うんですな。それはさておきデロリス(母)は最初から大変思慮深い人物として登場します。息子の力量を正しく理解し、それを伸ばすためにできる限りの事をしてきた母。ノーベル賞に「母賞」があったら彼女に授けたい。 
 
ソニーは彼女を手懐けようとはしません。きちんと話す。黒人の女性を相手に白人の男性と同様に。いろいろ資料もありましたが、彼は経験的に知っていたのでしょう、交渉する相手を一瞬でも見下したらそこで決裂だと。これ、1984年の話なので、当時の白人男性にはなかなかできる事ではなかったのでは 
 
だからやっぱりソニーの人間性なんですよね、デロリスの心を掴んだのは。ビジネス上の手管も用いてますが、それ以前にソニーがどれだけ自分の息子の人生を大事に思っているかを彼女が信じたのが大きいと思うんですよ。彼の言葉に嘘がない事をデロリスは見抜いていたんだと思う。 
 
それだからこそ、最後の提案をした。 これは大金がからむ話なんですが、それを話している時のデロリスには全く金銭への執着がないんですよ。お金を儲けたいのではなく、息子の人生を確かなものにしたい。確信を持ってそれをソニーに伝えている。まあヴィオラもオスカー級演技ですね。 
 
それを、もうどうしようもないって顔で社長に伝えるソニー。ここからがベンとマットのドスティ本領発揮で、彼らを知ってる観客が終始にまにましちゃうシーンでした。いや、どうして誰も殴り合いしないのにこんなに緊迫して面白いの #Air 主役マットのオスカー演技は御自分の目でお確かめください♪