心配 ご無用


それが口癖の 親戚の叔父さん


昼過ぎ ひょっこり 遊びに来た


手土産に ごぼう味のかりんとうを持って



叔父さんの好きな うす茶を点てて


かりんとうを いっしょにいただいた



開け放った窓から カッコウの鳴く声が聞こえる



悲しみの多い 数奇な運命


叔父さんに会うたびに すっと心に浮かんでしまう言葉


60才を過ぎた今では そんな過去のかけらもまとわず 


淡々と 穏かな日々を過ごしている



陽に焼け ぷっくりとしている 叔父さんの手


近所に住む人の たわいない笑い話をしながら


その手で かりんとうを食べ お茶をすする



陽だまりの中にいるような 温かい気持ちなのに


急に泣きたく  なった


でも 笑った  笑って かりんとうを食べた



叔父さんが帰った後 ひとり うす茶を飲みながら 


嬉しいのか 悲しいのか わからない心模様になった



たぶん・・・


こうして 日々 幸福を深くしているのかもしれない