こんにちはー。じゅっぺちゃんです。
https://ameblo.jp/juhei79/entry-12398009990.html
⇧前回の続きです。
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2)どろんこ遊びと「こども理解」のための四つの理論
【理論】①気持ちがいい
気持ちがいいのである。
水が多く加えられれば、土はぬるぬるになり、さらにどろどろのどろんこになってしまう。
そこに手を入れ、足を入れ、体さえもつけてこどもたちは土の感触を楽しんでいる。
どろんこ遊びは、感覚的な快感がある。
実践報告の例をあげると
「まるで、そこだけ時間が止まったかのように、シーンとして、大人は入っていけない世
界を作り上げています」や「どろんこは、こどもにとってなによりも安心できるもの」等と述べられています。
改めてどろんこの気持ちの良さを再認識できるものです。
それは、人間の生理学上の快感や、深層心理学上の快感から来るもので、それをつかさどる脳細胞の位置は脳科学として未確認であるが、人類になる以前の猿の時代から育てられてきた「どろんこ大好き遺伝子DNA」が存在すると予測されます。
【理論】②汚れてみたい汚れてみたいのである。
思いきり汚してみたいという欲求である。
べったりと全身どろんこでまっ黒になるなど、日頃、家庭で出来るわけもなく、当然禁止されてしまう。
それが保育園では許されるのだから面白くてたまらない。
実践報告の例をあげると「どろの中に体を全部隠して」「お布団の中にいるみたい」とどろんこによる汚れを楽しんでいる。
汚れてみたい理由には変身願望があり、変化することを求める心の表れである。
これは、非日常性の追求であり、新世界への旅立ちだと言える。
言い換えるならば、冒険心の発露である。
まっ黒いどろ(静岡県富士宮市地方のどろは黒色)の中に、第一歩を踏み入れるとはかなり勇気がいることであり、まさに冒険である。
そして、黒々と体にどろのついてしまったどろ人間になることは、別人に生まれかわることである。
だから、変な奴とか、おかしな奴と言われるのが怖くて、人はなかなか変身したくてもできないのであるが、どろんこは実にゆるやかに適度の変身をかなえてくれる。
あとで体を洗えば元に戻れるのであり、
それゆえに誰でも気軽くドキドキ胸をときめかしながら、楽しくどろんこに入れるわけである。
【理論】③気楽である
どろんこ遊びには異なる二つの気楽さがある。
第一には、なによりもどろんこ遊びは特別の技術を必要としない。
難しくないことがすばらしいのである。
誰にでもできて、どのように遊んでもよい自由さがある。
第二の気楽さは、作品や行為が残らないということである。
誰からも評価される心配がない。
『上手である』とか『下手だ』とか、『なってない』とか『みっともない』と客観的に評価することは不可能なのである。
なんと気楽なことであろうか。
こどもたちを見ているとまったく自由に動物を作ったり、人形を作っていく。
多くの作品の出来栄えは大人にはわからない作品である。
そして、作品は時間と共にずんずん作り変えられたり、壊されていく。
こどもは本当に自分にとって必要なことをする。作品を教師や親に提出しなくてもよいからである。
特別の技術がいらないのであるから、訓練は練習の苦痛を味わうことがない。
また、評価がないということであるから、したがって成績がつかない気楽さがある。
いずれにしても、競争原理に支配されない特質を持っている。
すなわち絶対評価の世界がある。
そこには自分自身を向き合う一人称時代の自己中心人格にふさわしい充実した世界がある。
偏差値的な相対評価の競争原理の世界では味わうことのできない充実感がある。
それは乳幼児期の発達過程にあって自己に対して真摯に生きるということであり、精神の内面からみたされるものである。
それは気楽であるというよりは、むしろ真に楽しい生活である。
【理論】④カタルシス効果(浄化作用)があるどろんこ遊びをやれば必ず「うんちだ」とだれかが叫ぶ。
それは年齢を問わない。小さい子も大きい子もそれぞれ思いを込めて「うんちをつくる」のである。
自分の体から生み出された親しみのある自分のうんちへの未練を精神分析学で解釈すれば、「大便にさわりたい」という代償行為であろう。また、父母や他人を憎むことや権威を破壊することは、一般には許されがたい。
道徳的な社会規範があるからである。
ところがこどもたちを見ていると、どろんこでお母さんを描き、次にお母さんのバカバカとやっつけて、さっさと消しているのである。赤ちゃんの弟や妹ばかりを抱いている憎いお母さんがいる。
兄となり姉となったいま、仕方のないことだと知的水準では十分理解できる。
しかし感情的水準では処理されない。
そんな時どろんこ遊びは誰をも傷つけることなく悲しみや憎しみを解消してくれる。
どろんこはカタルシス効果(浄化作用)がとても大きいのである。
したがって欲求不満児や障害児の無意識のレベルの不満の発散など治療保育に大変役立つのである。
こどもたちが抱えている深層心理的問題をはき出させ、どろんこに吸い取らせるということであり、どろんこ遊びは『体を汚して心を洗う』と言われるゆえんである。
以上、どろんこ遊びの四つの倫理は「保育環境から見たこども理解」の上で重要な視点である。
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引用・参考文献
塩川寿平『保育原理副読本―保育内容の基礎理論』大地教育研究所
2004 年2 月9 日
塩川寿平『どろんこ保育』フレーベル館 2006 年12 月15 日
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塩川 寿平(1938年生まれ)
大地教育研究所所長
大中里こども園名誉園長
元静岡県立大学教授
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活動:こども環境学会アドバイザー
愛育心理研究所インストラクター
著書:「名のない遊び」「コーナーのないコーナーの保育」
「どろんこ保育」「大地保育環境論」等
(出版社 フレーベル館=電子書籍化も有ります)
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ジュッペちゃんの保育のこころ
子どもを大切にするということは人としてであって、
私たちの"大地保育"は大人も童心人となって、
子どもと共に独立国(子どもの園)を創造するということ
ではないかと思います。
いつでも・どこでも・いつまでも子ども心を忘れずに
『名のない遊び』等を大切にしたいと思います。
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勤務先:大中里こども園
静岡県富士宮市大中里837
※姉妹園野中こども園(旧野中保育園 創立1953年)
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社会福祉法人柿ノ木会「大中里保育園」は、
平成30年度から
幼保連携型認定こども園に移行し、
施設名称を「大中里こども園」と改めました。
今後ともよろしくお願いいたします。
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