1、無償化を市民の手で育てよう

 

お子を育てていらっしゃる方だけの問題にしないでください。

 

すべての市民の皆さんで富士宮市の幼児教育無償化を見守り成熟させて参りましょう。

 

消費税増税を機会にしての「幼児教育無償化」ではありますが、日本の教育史が始まって以来、考えられないほど大規模に、大胆に子どものために税金が使われることになりました。

 

実際に、国全体では1兆円規模の無償化であり、概算ですが幼児1人に約60万円の『子ども・子育て支援法による給付』という大規模な政策です。

 

夢のようなことですが、大学で保育学の教鞭を40年余にわたってとってきた私がずっと願ってきたことなので大賛成です。幼児教育に公金を使う正しさは、今や疑うこともなく世界的な政治課題の潮流だからです。

 

このお金が生かされる時、幼児教育・保育の質は必ず良くなります。

子どもの最善の利益のためにこのお金を正しく使いましょう。

今より以上に子どもが子どもらしく生きられる日本の社会になります。

 

いや、必ずそのように評価される幼児教育・保育の現場にならなければならないのです。

一方、家庭においても本来の家庭教育の責任を果たしつつです。保護者の方の子育ての姿勢も変わります。

 

日本は老人重視で、子どもへの投資を軽視してきました。

幼児は義務教育でもないし、各家庭の経済力にお任せしてきたわけです。

 

今回の幼児教育無償化は、今までの国の姿勢とは全く違う方向転換を示すもので、これからの国のあり方は、幼児のために税金を使うという大決心であり「幼児教育を国民全体で支える」政策の第一弾であると私は考えます。

 

 

 

2、公平性を高く評価する

格差社会、階級社会、児童の貧困は当たり前と言う今日の政情において、保護者の給料が高いとか、安いとか、家庭の収入条件をあれこれ問わずに幼児教育無償化は始まるのですから、このような公平な給付のあり方について、私は感動し、驚き、賛成し、この法律を評価し、成熟させなければならないと決意しているところです。

 

実は各園や施設には歴史的な必然性があるのですが、富士宮市における園や施設の種類のなんとバラバラなことか。

 

実は国全体も『縦割り行政』で、文科省管轄・厚労省管轄・内閣府管轄・地方自治体にお任せ等々と、多種多様バラバラの格差社会そのものなのです。

 

その中でも最も有利な立場に立っているのは幼稚園・保育所・こども園は御三家と言われて認可もされており、現時点でも高い保育の質の提供は誰もが知るところですが、それ以外の企業保育や無認可保育やベビーホテルなど、またそれ以外にも様々な認可外施設があり、保育の内容も保育の質もバラバラです。

 

ところがです10月から始まる幼児教育無償化は国の認可基準に不足していても5年間は公平に無償化の対象なのです。

 

もちろん、保育の質の向上に関する責任問題として5年間の間に努力して、国の指導監査基準をクリアすることが求められておりますが。

 

なぜ5年間猶予することが許されたのかと申しますと、認可施設に入園できないから、無認可施設に入園するのです。

『だから、無認可施設も幼児教育無償化の恩恵に預かるべき』というのは、至極もっともと決まったのです。

 

私が『公平性を高く評価する』というのは、多くの支給制度が家庭の経済力によって『恩恵を受ける』または『恩恵を受けられない』と仕分けされるわけですが、今回の無償化問題は、そのような条件はつけずに公平に給付されるところに『哲学的に崇高な給付』を感じるからです。

 

小学校や中学校の義務教育制度に近い公平性であると私は評価します。

 

3、第二弾は、0歳児から保育無償化を!

 

第一弾の改革が幼児教育無償化ならば、第二弾の改革は保育無償化でなければなりません。

 

子ども・子育て支援は、歴史的には「ムラ社会で背負ってきました」が、地域共同体が崩壊してしまった現代日本では「国家全体で背負っていくことになる」のです。

 

日本に生まれたすべての0歳児から18歳の児童まで、保育費用も教育費用も無償化による日本国(=民主主義・先進資本主義・AI&IT国家)を建国していくべき時代がきたのです。

 

早くも保育料も完全無償化した自治体があります。

上毛新聞(令和元年6月19日)の記事を紹介しましょう。

 

【 10月に始まる国の幼児教育・保育無償化に合わせて、渋川市は18日、国の制度では対象とならない住民税課税世帯の0~2歳児も独自に対象に加えると明らかにした。

同日の市議会一般質問で、高木勉市長が安カ川信之氏の質問に答えた。

国の無償化の対象は、3~5歳児が原則全員なのに対し、0~2歳児は低所得世帯に限定された。

現行の渋川市独自の制度と合わせて拡充を決めた。

渋川市福祉部によると、本年度、保育所や幼稚園、認定こども園を利用する0~2歳児は約640人で、年度途中から実施する本年度は約3千万円、来年度以降は約6 千万円の財源が新たに必要となる試算だが、国の無償化で軽減される渋川市の負担分約4千万円などを充てる計画だ。

高木市長は「子どもに対する施策は市の未来への投資。渋川市全体で子育てをするという考えで取り組んでいきたい」と述べた。(記事の一部を著者が紹介)】

 

私はこの高木市長の保育理念に感動し、富士宮市民の皆様にもこの記事をご披露する次第です。

 

保育無償化のできる地方自治体から順次保育無償化を進めることにより、国も動かすことができ、保育無償化も実現すると私は渋川市の英断を高く評価しております。

 

4、幼児教育は世界の潮流

 

最新の世界をリードする保育学を紹介しましょう。

 

まず、費用対効果から見た幼児教育経済学の知見の示すところは、 0歳児から6歳児までに発達に合った質の高い乳幼児教育を受けた子どもたちが、大人になったとき、高学歴・高収入の人が多くなる事。

 

また働こうとしない大人・犯罪者・生活保護受給者になる割合が少ないことが世界中の研究で明らかになってきました。

 

その結果、高等教育にお金をかけるよりも、 0歳から6歳までの乳幼児教育にお金をかける方が、その国の発展に寄与することが明らかになりました。

 

質の高い乳幼児教育・保育とは「非認知能力=生きる力」のことをいいます。

近年の保育学研究では「学力=認知能力」も大切ですが、より一層大切なのは「非認知能力」が人生の成功に重要なことが明らかにされたのです。

 

就学前教育が子どもの人生を決める世界中に良く知られたアメリカの研究があります。

 

ペリー幼稚園プログラムで、たとえ貧しい家庭に生まれても、質の高い「非認知能力=生きる力」を受けることができた子は、高い学歴を手にし、安定的な雇用を確保し、犯罪に走ることが少ない傾向にあることが証明されました。

 

 日本の研究でも中室牧子著『学力の経済学(2015年)』は、子どもの教育にお金や時間をかけるとしたら、小学校に入学する前の乳幼児期の非認知能力の教育が一番重要だ。

内容は、社会性がある・ 意欲がある・忍耐力がある・すぐに立ち直る力がある等々の「生きる力」や「人間力」を育てる教育の大切さが証明されました。

 

5、産んで良し・住んで良しの富士宮市を!

 

私事ですが、私自身は4人の娘に恵まれ、11人の孫のジイジです。

私のモットーは『家庭が大切!』『子どもが好き!』です。とりわけ赤ちゃんが好きです。

 

赤ちゃんの愛くるしい笑顔と、おっぱいの甘酸っぱい匂いが好きです。孫が小さいときにはジイジがお風呂に入れるのですが、私の人生の中で最も幸福感を感じた時です。

 

私の保育学、40余年の大学教員生活で大切にしてきたキーワードは『スキンシップ』と『 アタッチメント』です。

 

富士宮市には、私と同じような『家庭が大切!』『子ども大好き!』という人生を送っていらっしゃる方がいっぱいいると思います。

いよいよ来月から幼児教育無償化の実現です。次は保育無償化です。

 

そうすれば、どんなに『家庭が大切!』『子ども大好き!』な富士宮市民の方々が皆さん助かることでしょう。

 

市民のみなさん、市議会の皆さん、市長さん、このたびの富士宮市の幼児教育無償化を共に立派に成し遂げましょう。

 

みんなで声を掛け合って、みんなで努力して、渋川市を見習って、産んで良し・住んで良しの富士宮市を創造しようではありませんか。

 

注1:スキンシップskin-shipとは、肌と肌の触れ合いによる心の交流。

注2:アタッチメントattachmentとは、愛着。親と子の間に形成される愛情。

 

 

 

シリーズ寄稿 塩川寿平

幼児教育・保育を考える(上)・(下)

『いよいよ来月、幼児教育無償化始まる』

 

岳南朝日新聞の 令和元年 9月15日付 幼児教育・保育を考える(上)掲載

 

岳南朝日新聞の 令和元年 9月17日付 幼児教育・保育を考える(下)掲載