こんにちは。

じゅっぺちゃんです。

カエル

2019年12月27日発行
こども環境学会研究 第15巻・第3号(通巻第44号)

カエル
環境学会15周年記念特集号に掲載されました。

 

カエル

論文・著作賞「大地保育環境論」の紹介です。

カエル

「大地保育環境論」

塩川のライフワークである保育環境論の集大成であ る。

広い遊び場のある農村地帯の大地から生まれた保育。 

1953年開園〜著作2007年の54年間の野中保育園(現 在野中こども園:静岡県富士宮市野中)の実践を「人的環 境」と「物的環境」の総合的見地から、一つ一つの具体 的な『遊び』と『生活』を考察した特色ある大地保育環境論である。

 

 

1はじめに

私がこども環境学会の第 3 回論文・著作賞を受賞した のは 2007 年 7 月初版の『大地保育環境論』(フレーベル 館)です。それから 12 年の歳月が流れました。

 

私はその 後の 12 年間も継続して、考え方は変わらず保育環境の研 究一筋に過ごしてまいりました。

 

 実は私の実家が農家であり、私が田植えをした田んぼ や畑が、1953 年に篤志家の父塩川寿介と母豊子の手に よって野中保育園となりました。戦後まもなくのことで深 刻な保母不足で家族総出で保育にあたりました。

 

私も高校 生の時から保父をしました。紙芝居を読んだり、チャンバ ラをして園児と遊んだり(= 私は高校生で剣道 2 段でし た)、クリスマスには園児の家を村中 1 軒 1 軒サンタクロー スになり回りました。

 

 その頃から園舎のペンキ塗りやら、遊具の修理をしな が ら 保 育 環 境 を 考 えて きました 。 

 

お 金 が ありま せ んで した から何でも職員の手作りで保育をした時代です。

 

いま現在、 私は 81 歳ですので、『保育環境』と取り組んでその道一 筋 60 年のキャリアということになります。

 

2『大地保育環境論』の誕生

著書『大地保育環境論』は、野中保育園の『大地保育』 から誕生しました。『

 

大地保育』とは、太陽・水・どろんこ・草・ 木・兎・犬・猫・鶏・山 羊・豚 などの 動 物 や 田 畑・果 樹 園 などの自然環境と関わる保育内容を最重視し、大地を土 台に展開される自由保育(= 子ども主体の保育)の総称 です。

 

『大地保育』の名称を最初に使ったのは塩川豊子(1915 〜 1999 年)で、1953 年農業従事者であり、保育環境と しては地主(旧庄屋)であった塩川本家屋敷・田畑・果樹園の約 10,000m²の大地から、大地保育と は「 汲 み 尽 く す こ と の で き な い 宝 庫 で あ る大自然に挑む中で、子どもたちが育てら れていく保育」と定義しました。

 

 自然という「物的環境」と共鳴して暮ら す農村生活。

 

そしてモラルの高い助け合う 農村の「人的環境」の豊かさ。

 

そのような 戦後の地域共同体の一員となり、その影 響を大きく受けながら、『大地保育』は創 造されていったのです。

 

 時代の経過とともに職員集団は、常に 学習し、主な教育学「受容と精神解放の 理論(AS ニイル)」と「体験学習の理論(J デューイ)」を熱心に取り入れ、のびのびとした保育理 念の『大地保育』を集大成して『大地保育環境論』は誕生 したのです。

 

 

3「人的環境」の啓発と親の意識改革

大自然に向かって自発的に挑戦する保育を通して、自主体的に個性と能力を引き出していく「子育ちの保育」と、 「親育ちの保育」を私たちは求めています。

 

親も育つ存在であることを自覚し、「子育て」に当たるこ とを本書では啓発しています。 特に『大地保育』の象徴「どろんこ保育」や「名のない 遊び」の受容には、親の理解が重要なのです。

 

発達過程 を受け入れることによる子どもたちの『自己肯定感 情』を 育てる保育内容を、親自身が学ばなければなりません。本 書では豊かな遊びを見守る親の意識改革に関する『8 つの 解放』を提案しています。

 

(1)汚い(衛生的に正し方法で、汚くない指導があること を伝えましょう)

 

(2)危ない(過保護にならない危なくない指導があること を本書では伝えています)

 

(3) み っ と も な い ( 乳 幼 児 の 正 し い 発 達 過 程 を 学 び ま しょ う。親の常識ではなく)

 

(4)やかましい(表出・発散は大切です。迷惑のかからな い「環境」を考えましょう)

 

(5)散らかっている(遊びのプロセスを大切に ! 終了時、 親も一緒にお片付け !)

 

(6)早く(親の都合や常識の見直し。その子のペースを知 りましょう)

 

(7)へたねぇ(親の価値観や物差しを改めましょう。子の 個性に目覚めましょう)

 

(8)何の役にも立たない(受験に役に立たない遊びを嫌 う親の習性を改めましょう)

 

時代は激しく移り変わり、都市化や AI 化やバーチャル 状況下で、屋内で多くを過す乳幼児にとって、屋外の広い 遊び場で心身ともに自由にはばたける「人的環境 =8 つの 解放」はますます評価される時代となりました。