__2020年4月23日 書き下ろし__
ドキュメンタリー風フィクションによる
教育小説「大地保育ものがたり」
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第2話「新型コロナウィルス感染症」
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(かつて教授が初代園長を務めた、付き合いのあるこども園を2020年4月23日の
12時から13時の間、子どもさんがお昼寝の合間に訪問する)
教授:
新型コロナウィルスのことが心配で、久しぶりに尋ねてみました。
全国あちら こちらの保育園で感染者が出ましたね。こちらはどうですか。
園長:
教授には退職後も、いつもボランティアで遊具の修理などお世話になってます。
コロナ コロナで対応に追われて毎日 毎日大変ですよ。
園児さんの在籍67名中、今日登園したお子さんは9名です。
昨日は15名で、一昨日は16名です。
減ってますね。保護者の皆さん協力的ですよ。
教授:
新型コロナウィルスで仕方ないけど、園児さんが超少ないのは寂しいねぇ。
園長:
4月17日付で、富士宮市から幼稚園相当児の1号さんは臨時休園の要請があったのよ。
1号のお子さんは4月20日から5月6日までの間は休園なの。
そして、保育が必要なお子さんは、有償でね、1日1,000円での預かり保育をするの。
教授:
(お迎えの保護者が来るのを見る。教授は顔見知りらしく)
こんにちわ。今日のお仕事は終わりましたか。お迎えご苦労様です。
保護者1:
(2人の若いお母さんが早めのお迎え)
感染拡大防止のために出来る限りはお家で見ることにしています。
仕方ないですよ。こうテレビや新聞で毎日コロナのニュースを聞かされると。
大人も 十分恐怖ですよ。
子どももコワイ コワイと言って、
『外に出ないで』と言うと、いつもより言うことを聞いてくれますね。
教授:
フゥーン。お家では、 お子さんに どんな風に話されますか。
保護者2:
こども園からお手紙ももらったしさ。
それ見ながら手洗いが一番大切だと話してるよ。
私と一緒にゴシ ゴシやってるよ。
ひとりでやらせると水をちょっとつけておしまいさ。
私と一緒じゃなきゃだめだね。
後はしっかり食べさせて栄養をつけて、体力をつけるようにしているよ。
保護者1:
それから睡眠を十分だっけネ。
寝かせなきゃ体力落ちるしさ、コロナにとりつかれて負けちゃ困るしさ。
3密は大人の仕事だね。
親や家族が守らなきゃ。
親の後ろ姿を見て育つだよ。
いくら言っても子どもは自己中だからさ。子ども一人じゃ守れんラァ。
大人の仕事だよ。親が注意してるよ。
密閉でしょう。密集でしょ。あと1つなんだっけ。
教授:
(主幹保育教諭に)
こども園から新型コロナウィルス予防について、どんなお手紙を出されましたか。
主幹保育教諭:
保護者のみなさんに登園するときのチェックを箇条書きでお願いしています。
1、子どもの検温、体調チェックをしてください。
2、発熱等の風邪症状がみられる場合は、登園を見合わせてください。
3、登園後、職員が必要に応じ検温し、発熱を認めた場合も至急お迎えをお願いすることになります。
保護者のみなさんの職場にもあらかじめご理解とご協力のお願いをしておいてください。
4、発熱があった場合、解熱後24時間以上が経過し、咳、息苦しさなどの呼吸器症状が改善するまで、登園はお断りすることになりますので、ご理解いただけますようお願いします。
5、今後、園児や職員が罹患した場合、また市内で感染が拡大した場合には、臨時休園となることもあります。
6、日々状況が変化しているため、状況に応じて対応が変更される可能性があることをあらかじめご了承ください。
教授:
心配して来てみました。時間をとらせてすみませんでしたね。
新型コロナウィルス感染予防対策を聞けて安心しました。
保護者の方からもしっかりとした心構えを聞けて嬉しかったです。
では、皆さんくれぐれもコロナに気をつけて保育してくださいね。
いろいろお話をありがとう。
では、失礼いたします。
サヨウナラ。
(教授は、こども園を去る)
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(教授は、自宅へ戻る)
・・・・・お天気も良かったので、教授は訪問したこども園から自宅までの2キロの距離を、健康のためにゆっくりと40分かけて歩きました。
道すがらキョロ キョロと手入れの届いた大木の西洋シャクナゲや、カジュアルな変わりツツジの花々を見ながら帰宅しました。
自宅の玄関横の縁側に、教授を訪ねてくれる近所に住む教え子が3人、待っていてくれました。
定年退職したこの教え子たちとは定期的に読書会をしています。
いつもコーヒーとビスケットを食べながら、ときには缶ビールも飲みながら、
教育小説を書くにあたって
・「 二十四の瞳(坪井栄)」
・「兎の眼(灰谷健二郎)」
・「窓ぎわのトットちゃん(黒柳徹子)」の3冊をテキストに、
教育と自由について読書会をしています。
いつも脱線ばかりで、たわいもない話で盛り上がります。
あちら こちらと 話は飛んで、
今日も話が突然、、女優さんの新型コロナ感染死に飛んでしまいました。・・・・・
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教授:
エェー 女優のオカエ・クミコさんが亡くなったって本当ですか。
教え子1:
教授は好きだったのですか。「お美津」や「はなまるマーケット 」を
よく見てましたからねぇ。
教え子2:
けさ、23日午前5時20分、新型コロナウィルスの肺炎で亡くなりました。
教え子3:
63歳ですよ。
教授:
ウゥーン、 63歳カァー、 若いね。君たちと同い年の63歳なんだね。
君たちはナント!
生まれてからずっと63年間・・・オカエさんと同じ時間を同じ日本で生きたんだね。
(・・・・・教授は63歳の死にこだわっていました。何回も63歳を繰り返します。
教授にとって引っかかる63歳のナゾがあるようです・・・・・)
教授:
私はオカエさんと同じ年の君たちを教えていたんだね。
63歳と聞いて急に、君たちとのように接触してたような親しみを感じるね。
なんだか教え子を失ったようで、とてもやりきれない気持ちですよ。
ご縁を感じるね。君たちの笑顔とオカエさんの笑顔と重なっちゃうんだよ。
テレビドラマやバラエティーで彼女の笑顔をたくさん見てきたからね。
教え子1:
やっぱり教授はオカエさんが好きだったんだ。
教授:
昭和32(1957)年生まれの君たちと赴任先の淑徳大学で出会いました。
私は昭和13(1938)年生まれ、その年の差はわずか18歳でしたね。
オカエさんとも18歳の違いなんだなぁ。
教え子2:
好きだったんだねー。特別のフアンだったかもナァー。
63歳と聞いて感情移入して僕たちと一緒にしちゃってるね。
教授のゼミの学生が新型コロナで死んじゃったって感じだぜ。
泣いてるぜー。
いろいろ思い出して複雑なんだよ。
缶ビール2本飲んだだけだぜ。
教え子3:
あの頃、教授はサァー。
富士宮の奥さんと離れて単身赴任でゼミナールの俺たちと毎日、
授業が終わっても大地保育と自由保育の続きのゼミやったぜ。
毎晩、大学の大巌寺街のカド店で、食べたり、飲んだり、歌ったりと、
ずっと俺たちと一緒にいたんだもの。
俺たちはお互いに兄貴と弟のような特別なアタッチメント(愛着)だったよなぁー。
演歌の『兄弟舟』もよく歌ったもんだよ。
教え子1:
卒業からもずっと、 81歳と63歳になるまで、今の今までのお付き合いだもんな。
教授はオカエさんがゼミナールにいたと思って死を悲しんでいるんだ。
年寄り独特の思い込みの感傷だよ。一人芝居ってやつかい。
教え子2:
オカエさんと私たちは、偶然1957(昭和32)年の生まれなんだよなぁ。
改めて考えてみればサァー。
生まれてから63年間、同じ日本で、 同じ歴史を一緒に生活していたんだよ。
何か因縁感じるなぁ。
オカエさんは新型コロナで死んじゃったのか。
俺たちいま死って実感ないけど、教授は63歳の若すぎる死がわかるんだ。
だから、俺たちが今死んだように悲しんでいるんだ。
笑っちゃ悪いよ。教授はいつも真剣だぜ。
教授:
君たちが22歳で、私は35歳で出会ってから41年経つんだ。
オカエさんの歳を聞いて、君たちとダブってね。
君たちと同じ63歳の若者の命を奪った新型コロナウィルスが憎い。
63歳は私から見れば若い 若い命だ。とても憎い。
教え子3:
俺たちも見たよな「はなまるマーケット」は、
1996年9月から2014年3月の放送だったんだね。
改めて同時進行だった年齢を計算してみると、
俺たち39歳から57歳までお茶の間で一緒してたんだよ。
17年半も連続で放送されたんだ。
テレビの映像だったけど、
俺たちとオカエさんは同じ日本史してたんだね。
「はなまるマーケット」が終わった時、
俺たちも57歳で、オカエさんも57歳だったんだ。
同い年だったんだよ。感無量だなぁ。
今日のニュースで亡くなる今の63歳の彼女を見たけど、
オカエさんピチ ピチで、やっぱり綺麗だなぁ。
誠実な感じの中にもサァー、健康なエロスもあわせ持っていたよ。
健康なエロスは教授は大好きだったよなぁ。
やっぱり教授は参っているわけだ。
勝手に思い込んで胸にぽっかり穴が空いたのさ。
教授の精神は俺たちより若いかもしれないね。
教え子1・2・3:
おい おい 見ろよ 見ろよ 。教授は寝ちゃったよ。
昔は酒強かったのに。弱くなったなぁ。 (続く)
【 HPで調べてみる。
「はなまるマーケット」は、 1996年9月30日から、
2014年3月28日終了。通算17年6カ月の放映。
TBSの朝の生活情報番組で、
司会オカエ・クミコ(岡江久美子)さんは、
無遅刻無欠席で務めました。
なお、本名は、オオワダクミコ(大和田久美子) 】
__つづく__
読者のための「大地保育ものがたり」の脚本とねらいについて
・・・・・注:ドキュメンタリー風フィクション教育小説です・・・・・
前回のプロローグでも述べましたが、教授の81年の仲間との教育経験を通して、AIやICTの近未来はもちろんのこと。
100年先の日本や、世界がめざす、
①『体験学習の幼児教育・保育(Jデューイと堀真一郎の理論と実践)、等』や、
②『無意識を含む情緒安定の幼児教育・保育(ASニイルと霜田静志の理論と実践)、等』そして、
③『就学までに育てたい10の姿の幼児教育・保育
(幼稚園教育要領・こども園保育教育要領・保育所保育指針)、等』
の本意にたどり着こうと、現実の壁にハバマレテも挑戦しつづけ。
さらに、もがき苦しみつつも挑戦しつづけ。情熱を絶やさず。
私たちが、100年後にも高く評価されうる理想の大地保育創造に挑戦する物語です。
なにより大事な趣旨は、子どもの幸福を考る国民全体の世論を喚起する教育小説、
「大地保育ものがたり」を創造することです。
教授一人が書く教育小説ではなく、大地保育の志を同じくする仲間も加わりランナーとなり、
バトンを駅伝風につないで書き続けられる、未来思考型教育小説「大地保育ものがたり」です。