33話:保育環境論(49

静岡市・登呂遺跡ドロん子パーク活用に関する一考察—

【第74回 日本保育学会 web大会 2021.5.16発表済み】

 

 

 

 

じゅっぺ教授は516日に初体験オンライン発表を終了しました。

 

パソコンの故障が起こったらどうしようとドキドキで当日を迎えました。

 

おかげさまでポスター発表を無事に済ませることができました。

チャットを使って質疑応答もできました。めでたし めでたしです。

 

 

じゅっぺ教授の保育・幼児教育学の専門は保育環境論です。

 

じゅっぺ教授の父初代園長塩川寿介と母塩川豊子が1953年(昭和28年)に開園した大地保育の野中保育園(現野中こども園)は今年で69年目。来年の2022年には70周年を迎えます。

 

2代目園長の塩川豊子(19151999)は、大地を土台に展開される自由保育方式の子ども主体の保育を「大地保育」と命名しました。

 

大地保育の哲学は『汲みつくすことのできない宝庫である大自然に挑む中で、子どもたちが育てられていく保育』と定義しました。

 

じゅっぺ教授の「大地保育ものがたり」は、大地保育の哲学から創造された優れた保育文化・保育実践を世に伝え、子れらの幸せを願うものです。

 

さて、今回の発表は「保育環境論(49)」と言うことで、 49年連続発表と言う事です。じゅっぺ教授が第1回の発表した時に生まれた子が49歳になっているのですからちょっとした大作です。

 

では今回の内容は、どろんこ遊びの環境をいかに確保するか。『泥遊び場がないからできない』で、終わることのないように、園外保育の考え方を広げての社会資源活用の提案です。

 

主催者である静岡市・登呂遺跡ドロん子パークのコンセプトは有名な登呂遺跡で弥生時代の生活を体験的に学習する企画ですが、弥生時代の遺跡である田んぼを提供して、「どろんこ保育」ができる状態で一般に開放されているところから、利用者(幼稚園等)と静岡市側の両者の活用意識がコラボレーションした形で実現しました。

 

実際、保育実践として「どろんこ保育」という保育活動が実現したわけです。これからの保育環境論として、貴重な保育内容を手に入れるための方法論となりうる、安全・安心も確保されている公共施設とのコラボレーションの提案です。

 

 

「どろんこ保育」をしたくても、設備もなく、経済的にも予算を十分に持たない保育・幼児教育施設にとって、「どろんこ保育」のできる社会資源としての保育環境の提案です。

 

前置きが大変長くなりましたが。

 

では、じゅっぺ教授が昨日発表したばかりのまだゆげの出ているようなホヤホヤの出来立て論文のはじまり はじまり。ご期待ください。

 

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    論(49

 静岡市・登呂遺跡ドロん子パーク活用に関するー考察 

  寿 平(        

 

.研究の目的

 

 

 静岡市立登呂博物館(静岡市駿河区)主催。『登呂遺跡ドロん子パーク』の企画が同博物館ホームページに掲載。

 

・開催期間は2020829日(土)~927日(土)の内、毎週土曜・日曜と祝日。

・利用時間は午前9:00~午後15:30

・会場は登呂遺跡復元水田(博物館敷地内)。

・面積は約70平方㍍のドロん子パークを整備「泥遊び環境」の提供・手足を洗う水道あり。

・費用は無料。 

・対象はどなたでも。

・持ち物は、

1)汚れても良い服装 

2)着替え 3)タオル 

4)帽子 5)水筒 

6)長ぐつ 

7)ウォーターシューズなど。

・参加希望者は申込不要~当日、直接会場へ。

・・・・・・以上の企画発表があった。

 

 

研究の目的は、公である静岡市が誰でも自由に利用可の「保育環境となりうる公の資源提供」と、「利用者の活用」のあり方について考察する。

 

公と「一般家庭の親子」や「幼稚園・保育所・こども園等」の利用者とのどろんこ保育のCollaboration(共演・合作・共同作業)の成果及び評価を明らかにすることを研究の目的とする。

 

1900年前の弥生時代のイメージと復元家屋群の特別感溢れる風景

 

.研究の方法 

 

静岡新聞(2020.8.26)による同パーク開園に先立ってのオープニング報道に接して、保育環境論の一つである「泥遊び環境」の公の提供は、貴重な特色ある企画提案であると認識し、強い関心を持って本研究を開始する。

 

2020919()、午前1011時。 塩川は企画担当梶山主査(静岡市役所 観光交流文化局文化財課 静岡市立登呂博物館)を訪問。インタビューを依頼し、同時に資料を依頼し入手。

 

提供資料:静岡市立登呂博物館2020年度事業計画の提供を得る。

 

2020919()、午前11:0015:30

 塩川は現地にて、第1回目の臨床観察を行う。

 

2020924()、午前10:0012:00

第2回目(F園の予約活用)の臨床観察を行う。

 

以上、①②③④⑤を用いて本研究を進める。

 

 

.研究の過程

 

塩川がこの企画を知ったのは2020826日付けの【静岡・登呂遺跡に遊び場「ドロん子パーク」29日オープン(静岡新聞アットエス)】の報道による。

 

その内容は『静岡市駿河区の登呂遺跡に29日、弥生時代の水田を復元した泥遊び場「ドロん子パーク」がオープン。25日は同区の南八幡幼稚園の5歳児約50人が招待され、泥遊びを楽しんだ。同遺跡には約1900年前の約2ヘクタールに及ぶ広大な水田遺跡が残されている。子どもたちに遊びを通じて、日本の歴史や遺跡に関心を持ってもらおうと登呂博物館が約70平方メートルを泥遊び場として整備した。

 

園児はぬかるみに足をとられながら、泥をかけあったり、カエルを追いかけ回したりしてはしゃいだ。男児(5才)は『泥をかぶって楽しかった』と声を弾ませた。以上の報道に接し、公の静岡市が「泥遊び環境」を提供し、希望者に利用を呼びかける企画に関心を持ち、両者のCollaborationの実際を考察する。

 

 

2020919日(土)、午前1011時。登呂博物館において塩川は「ドロん子パーク」の企画担当梶山主査にインタビューと同時に、

 

資料提供をお願いしたところ静岡市立登呂博物館2020年度事業計画書の説明を受けた。

 

*同計画書14ページ:登呂博物館は「参加体験型ミュージアム」をコンセプトとしており、 火起しや炊飯の体験。田植えや稲刈りなどの体験を提供している。学習的な模擬体験を通して弥生時代の生活を肌で感じてもらいたい。

 

*同計画書15ページ:登呂エリアの特別感を生かした新たな体験。登呂遺跡は全国に3カ所しかない弥生時代の特別史跡であり、住宅地の中に忽然として現れる異空間である。このような特別感を生かし、これまでにない体験、例えば、野外宿泊体験・自然観察・天体観測・水田復元エリアでの泥遊び体験《泥遊び環境の提供》などを企画し、弥生時代を思い描いて欲しい。

 

2020919日(土)、午前11:0015:30。第1回目の「どろんこ保育」の臨床観察を行う。

 

【写真1】利用可の土曜日。三々五々やってきた複数の親子の楽しいどろんこ遊び。保護者同伴のこと。お父さん お母さんも一緒にどろんこ。

 

 

 

 

【写真2】楽しいひととき。無心に泥団子を作りつづける子。また、温泉のように「どろんこ」にとっぷりと浸かって会話している2人の子。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020924日(木=予約)、午前10:0012:00。第2回目の「どろんこ保育」の臨床観察。F幼保連携型認定こども園の45才児。 約25名の各クラスが交代で活用する。

 

【写真3】広い登呂遺跡復元水田の泥遊び環境で、のびのびとどろんこ保育を楽しむ園児たち。

 

 

 

 

 

【写真4】園児のどろんこ保育を「微笑ましく」あるいは「心配そうに」見守る保護者の姿。 

そして「管理・安全・見守り」をする指導員の姿。

 

 

【写真5】広く希望者に呼びかける『ドロん子パーク』のユーモアたっぷりの看板。企画・立案に取り組んだ静岡市立登呂博物館の担当職員の意欲と努力が感じられる作品。

 

 

 

 

 

 

.研究の考察と結論

 

『登呂遺跡ドロん子パーク』のコンセプトは弥生時代の学習法としての「参加体験型ミュージアム」に沿ったもの。泥遊び環境を求める利用者側の「どろんこ保育」理念と同一とは言えないが、両者の願いを満たす効果は大である。

 

今日、泥遊び環境を手に入れることが困難である利用者側にとっては、願ってもない公の提供であり、このCollaborationは両者がそれぞれに期待する成果を十分に満たしており、「ドロん子パーク」の社会貢献は高く評価される。

 

【写真6左】体を洗う水道とシャワー設備あり。

 

 

【写真右】保育参観:わが子を微笑みで見守る保護者。