タイトル: アフターコロナ・未来へつなぐ保育

 岳南朝日新聞(2021年519日掲載分に1部補足)


1. 変わる大人の生活と子どもの生活



コロナ終焉(えん)後は、ネット会議やテレワーク、AI(人工知能)化へと大人の生活は激変します。


4次産業による新経済の台頭と、ICT(情報通信技術)化によるSNS上のやり取りや、メールでのコミニケーション等の急激なデジタル社会が予測されます。


大人の生活は超高速化と合理的巨大企業の進出により、この流れに乗れたものと、乗り遅れたものとの二極化による格差の到来です。



そのような大人生活の変化の中で、家庭や、幼稚園・保育所・こども園で、子どもの生活の主体性をいかに守るか模索の時代が始まります。

 




2. 変えてはいけない保育

 

《その》アタッチメントとスキンシップが基本


大人社会の構造が変わったとしても、乳幼児の発達過程が変わるわけではありません。

コロナ時代に不十分であったアタッチメント(愛着)と、スキンシップ(皮膚接触)を取り戻す保育がこれまで以上に必要となります。


一対一の愛着関係を長期間継続する生活は、乳幼児にとってなくてはならない生活なのです。


なぜならば「オキシトシン」という幸せホルモン(脳内物質)が出て、情緒の安全地帯が育つからです。


この「抗ストレス効果」のあるアタッチメントは、今日では母親に特定した関係ではなく、養育者との適切な関係性にあることが証明されました。


従来、アタッチメントは乳房を持ち、おっぱいをあげられる母親だけの行為と考えられてきましたが、脳科学の発達により父親でもその他の保護者であっても、


「無償の愛に基づく」適切かつ特定の人とのアタッチメントで良いことが証明されました。


この脳科学の研究成果は、子育ては女性のものとする「役割分業型女性観」から、


「無償の愛に基づく」適切かつ特定の人との

アタッチメントが大切であることの一大発見で、改めてここに特記しておきます。


なお、ご注意願いたい事は、

「誰でも良いのではありません。」

 一対一の愛着関係を長期間継続して生活を共にできる人で、適切かつ愛情に基づく双方向の〝甘えの関係性の持続です。」

 

 

《その 五感・六感を育てる保育が基本


幼稚園教育要領では「環境による教育」の大切さが説かれています。  

大地保育の創始者塩川豊子(19151999)は、

『汲みつくすことのできない宝庫である大自然に挑む中で、子どもたちが育てられていく保育』を提唱しました。


大地保育には五感、六感を育てる自然環境にとけ込んで生活する感動体験が豊富に用意されているからです。

 

 

《その》愛とユーモア(寛容)のある保育が基本


 アニミズム(注)の心理が生み出す乳幼児独特の

『保育文化』を大切にしましょう。


例えば、幼児画では「太陽に目や口」が描かれたり、どろんこ遊びをすれば「コーヒー牛乳」とか「チョコレート工場」となり、また時には「うんこ」と大喜びです。


また、次々と創造的な「名のない遊び」を発明するので、大人は愛とユーモアの寛容的受容態度で、ありのままの乳幼児の人権思想と発達過程の尊重を心がけましょう。

 

***【(注)アニミズム(animism)とは:

一般的には生物、無機物を問わず全ての物に霊魂が宿っているという考え方。乳幼児の成長過程では、玩具や人形などにも生命があると考えたり、お化けを信じたり、自己中心的に空想の世界を作り、お姫さまになったり、怪獣になりきって遊びます。】 

 


《その》第一次産業の原体験を大切に!


これからの大人の経済活動はコンピューター浸りになるでしょう。

4次産業革命の到来です。

IoTInternet of Things)日本語で「モノのインターネット」となり、あらゆるモノがインターネットと繋がり情報交換が始まり、同時にAI(人工知能)を用いることで起こる製造業の革新と言われる第4次産業革命の到来です。



しかしながら0~5歳児の「生活と遊び」は、モノを生み出す第一次産業をモデルとした原体験が基本です。


乳幼児にとって原体験の大切さは、いつの時代でも変わるものではありません。

大人社会と逆行する面がありますから、意識して園児と共にキュウリやナスを育てましょう。

バケツによるお米作りにも挑戦しましょう。

ウサギや鶏の飼育体験をしましょう。

各家庭でもプランターでお花や二十日大根やガーデンレタスなど野菜づくりに挑戦してみましょう。


タブレットを使ってのバーチャル(仮想現実)による学習は、原体験の後のことです。

まず初めに学ぶべき事は、第一次産業をモデルとした本物に触れる体験学習が有効なのです。

 





3.まとめ


コロナ終息後の子育てや教育は、現在とはいろいろ異なったものになるかもしれません。

しかし「変わる部分」と「変えてはいけない部分」があります。


現況ではコロナ防御優先保育になって、のびのびと育てる子ども主体の保育はできません。


大人指示型の保育で、先生も保護者も行政もピリピリとした緊張状態が続いています。

コロナが終息するまで「我慢の保育」です。

 

しかしこのままで良いはずはありません。

大きな心的喪失・社会性のロスが心配です。

ワクチンの接種が始まりました。

国を挙げてコロナを撲滅し、日常を取り戻そうではありませんか。

乳幼児の子育てにおいて「変えてはいけない部分」は、アタッチメントとスキンシップです。



子どもに幸せホルモンが蓄積されて情緒の安全地帯が作られます。

また、自然を取り入れた遊びと生活で五感と六感を育てること。

愛とユーモアに包まれた寛容の生活を取り戻す事。


第一次産業をモデルとしたモノを作り出す原体験は、

「変えてはいけない部分」です。