『そして父になる』以来、約4年ぶりに福山雅治と是枝裕和監督がタッグを組んだ映画『三度目の殺人』は、法廷を舞台にした心理サスペンス。勝利にこだわる主人公の弁護士・重盛(福山雅治)は、元勤務先の社長を殺害した三隅(役所広司)を弁護することになるが、三隅の二転三転する供述に惑わされていく…。

 

本作で、重盛と共に事件の真実を知ろうと奔走する若手弁護士・川島役を演じるのが満島真之介。演じた川島と同様に、強い信念を持って人生を謳歌する彼に、大先輩・福山雅治との共演について、作品を通じて伝えたいこと、そして彼が何よりも大切にしている"人との出会い"について語ってもらった。

 

 

■福山との会話は、「言えないようなことばかり(笑)」

 

ーー本作は、殺人事件をもとにしたシリアスな作品でしたが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?シリアスな雰囲気だったり…?

 

満島:全然!むしろすごく穏やかでしたよ。福山さんも、役所さんも、吉田さん(吉田鋼太郎)も…みなさん大ベテランの方ですし、大人ですし。僕はそこに乗っかっていって、若者の代表として「みなさんが見たことのない景色を若者を代表して、僕がお見せします!」という気持ちでした。

 

 

ーーそれは頼もしいですね。

 

満島:みなさんにはなんでも話すし、なんでも聞くし。監督も含めて、すごく良い関係性を築けていたと思います。本当に素晴らしい現場でした。

 

 

ーー満島さんから見た、福山さんはどんな方でしたか?

 

満島:とても大きな心を持つ面白い方です。ラジオとか一緒にやったら、一日中話せます(笑)。

 

(c)2017『三度目の殺人』製作委員会

 

ーー現場では、どんなことをお話されたのですか?

 

満島:いっぱいありますけど…ここでは言えないようなことばかり。男同士の会話です(笑)。

 

 

ーー非常に気になります…(笑)。

 

満島:とはいえ、真面目なお話もさせていただきました。福山さんは、「自分は音楽で生きてきた人間だから、役者の現場には、常に新人のような気持ちで入っているんだ」とおっしゃっていて。僕も全然違う職業を経てこの世界に入ってきたので、そういう気持ちを語り合いました。1つのことだけをしている人には、見えない世界があったりもするんです。

 

 

ーーどういうことでしょう?

 

満島:作品の中でも、弁護士たちが暗黙のルールに従うところや、決められたシステムに乗っかってしまう様子が描かれているんですよ。それって1つの目線しか持っていないからであって、他のことをやっていると、全体のバランスがちゃんと見えるというか…外からの目線というものが分かるんです。そういった部分でも、福山さんとの会話はとても刺激的でした。

 

 

ーー共感できる部分がたくさんあったのですね。

 

満島:はい。でも実は、僕と福山さんはちょうど20歳違うんです。親でもおかしくない年齢(笑)。

 

 

ーーそんなに年が離れているのですね!満島さんは、福山さんのような大先輩とご一緒するときに、緊張したり、怖気付いてしまうことはないのでしょうか?

 

満島:もちろん、みなさんのことは尊敬しています。ただ、人生は日々繋がっているものであって、その中の出会いの1つという意味では、福山さんとの出会いも同じ。ヘコヘコせず、僕は自分の素直な状態を常に出していきたい。

 

 

ーーなるほど。

 

満島:分からないことがあれば、僕は福山さんに聞くし、逆に福山さんに聞かれることもあったり。本当にありのままの状態。そういう2人の関係性って、映画に映っている姿から見えてくると思うんです。言葉がなくても通じ合えていれば、それは絶対にカメラに映る。フィクションを撮っているはずなのに、そこには真実が映っている…。それが真実なんじゃないかなって。

 

 

ーー真実とは何なのか…一筋縄では分からないというのは、なんだか今回の『三度目の殺人』の内容と近いものがありますね。

 

満島:そうだと思います。本当にいま、この瞬間が真実なのかは僕には分からないし、逆に映画の中が全て真実なのかっていったらそうじゃないかもしれないし…。そういうところも含めて、是枝さんは作品を通じていろんな可能性を提示しているんだなと。作品の中では、事件の真実を明らかにしようとしていますけど、僕は本当のテーマはそこじゃないと思っているんです。

 

 

ーー満島さんが思う、この作品のテーマとは?

 

満島:もっともっと人間の根源にある、例えば目を見つめることだとか、触れることとか。「ガラス越しでも触れば熱が伝わってくるのは、なんでか?」「生きているからでしょ?」ということ。監督は、観ている人にそこを考えて欲しいんじゃないかなって思いましたね。

 

 

 

■「グッモニスタ」どの現場でも挨拶を大切に

 

 

ーー私も映画を拝見させていただいたのですが、接見室での川島の「生まれてこなければよかった人なんていない」といった内容のセリフが非常に満島さんらしいな、と感じました。あれは、アドリブだったのでしょうか?

 

満島:あれはセリフです。だけど、是枝さんがキャスティング、脚本を書いていく中で、僕に言わせようと思ったのかもしれないですね。

 

(c)2017『三度目の殺人』製作委員会

 

ーー川島という人物は、満島さんのようにはっきりと物事を伝えられる人物ですよね。

 

満島:川島は、肝の据わった若者ですよね。何もかも分からないで終わらせるのではなくて、分からないことがあれば「なぜですか?」と間髪入れずに聞ける。それは、自分の人生に責任を持っているからだと思っています。責任を持っていない人だと、自分を守ろうとして黙ってしまうんです。でも、自分の思いを言わなかったら、結局、自分のことすら守れないんですよね。

 

 

ーー先ほどの、「常に素直な状態でいる」という満島さんの考えとも共通する気がします。

 

満島:そう!僕だって大先輩方とご一緒することで、恐縮する部分はあります。でも、大事なのはそこで縮こまってしまうのではなく、素直でいること。リスペクトの気持ちはわざわざ言葉にしなくても、心の中にあれば絶対に相手に伝わると思うんです。あとは、やっぱり大切なのは挨拶ですよね。

 

 

ーー「グッモニスタ」ですか?

 

満島:「グッモニスタ」です(笑)。作品を作るときというのは、奇跡的にみんなが集まっている瞬間なんです。全員がこの瞬間に、人生をかけて映画を撮りにきている。スタッフもキャストも、すべてが同じ作品というのは一切ない。だからこそ、現場での日々の挨拶は本当に大切だなって思うんです。僕は、いまを生きていること、みなさんと一緒に映画の世界に居られる幸せを挨拶を通してちゃんと相手に伝えたいんです。

 

 

 

■運命の出会いで…稚内観光大使に!?

 

ーー満島さんは、俳優になる前に日本1周をされていますよね。本作でロケを行った北海道での思い出はありますか?

 

満島:僕、沖縄出身なのに「稚内ふるさと大使」なんです(笑)。日本一周をしている最中に任命されて。

 

 

ーーそうだったんですね(笑)!どういった経緯で任命されたのでしょう?

 

満島:日本の最北端にある石像を見に行きたくて、隣にいたおじさんに道を聞いたんです。そしたら、その方がたまたま観光協会のお偉い方で。話しているうちに意気投合して、次の日には表彰されていました(笑)。

 

 

ーー人生なにがあるか分からないですね(笑)。

 

満島:人に話しかけたり、分からないことを聞いたりすることは大事なんですよ。今の時代、すぐにネットに頼ってしまうじゃないですか。でも、世の中にはネットよりも面白い人間がたくさんいるんです。

 

 

ーーそういう意味でも、いまのお仕事は、現場ごとにたくさんの出会いがあって満島さんにぴったりなのかもしれません。

 

満島:1回1回、リセットして、また0から人間関係を築き上げていくのは面倒な部分もあると思うんです。人は付き合いが長ければ長くなるほど、別れられないし、次にいけないし、ビビってしまったりする。でも、この仕事では無条件にそれがあるので、面白いなと思います。冒険家気質な僕にとっては、新しい現場で新しい人間に出会えることは喜びですね。自分が誰と出会って、誰と話をして、誰と一緒にいるかというのは、何にも変えることのできない、人生の一番の宝物だと思います。

 

Photography=Mayuko Yamaguchi
Interview=Ameba

 

 

映画『三度目の殺人』は9月9日(土)より全国ロードショー。

 

(c)2017『三度目の殺人』製作委員会