拙著「僕が帰りたかった本当の理由」

[改訂版]

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魔法のランプ

 

 

突然、

大きなアラブの魔人

目の前に現れて言った。

 

 

 

『 あなたの夢を1つだけ叶えてあげましょう。 』

 

 

 

答えを、

しばらく考えてみる事にした。

 

 

 

「 豪邸か? 」

 

 

「 高級車かな? 」

 

 

「 やっぱりお金かな? 」

 

 

 

叶えられるのはたった1つ。

慎重に答えなくてはならない。

 

 

そして、

あれこれと考えた末に気がついたのは、

 

 

 

「 物をもらっても病気じゃ意味が無いな。」

 

 

「やっぱり、必要なものは健康だろう。」

 

 

 

病気だと、

せっかく手にした夢や物を楽しむ事は出来ないし、

逆に健康なら、

がんばり次第でなんだって自力でも叶えることが出来る。

 

 

それに気がついたので、

自信を持って大魔人へ答えることにした。

 

 

 

 『 健康を御願いします。 』

 

 

 

すると...

 

 

 

大魔神 『 本当にそれで良いですか? 』

 

 

 

自信を持って答えたつもりなのに、

大魔神からは思いがけず念を押されてしまう。

 

 

 

 

大魔神 『 あなたにとって一番欲しいものって健康ですか? 』

 

 

 

 

確かに、

言われてみると、

健康にもかかわらず不幸な人は

世の中に沢山居る。

 

 

その逆に、

不健康な人の全てが

不幸な気持ちで

生きている訳でもない

 

 

これらの事実を考えると、

どうやら、

人生で1番大切なものは

『健康』

とは限らなさそうだ。

 

 

では

1番大切なもの、

叶えたい事とは一体何だろう?

 

 

 

私は考え込んでしまった。

 

 

 

健康以上に大切なものとは...?

 

 

 

私を暫く眺めていた大魔人は、

 

 

 

 大魔神 『そこまで分かったら、もう大丈夫だよね。』

 

 

 

 

 

と言い残して姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

 

人間、

生涯現役で健康で活躍し続けられれば、

それに越したことはない。

 

 

生涯現役を目指して

身心ともに健康な生活に努めることは

大切な事である。

 

 

でも、

年を重ね身体が不自由になっても

幸福感に満ちあふれている人もいる。

 

 

たとえば、

外見からは非常に弱っているように見える高齢者に、

『今、健康だと思いますか』

と問いかけると、

『健康だよ』

と答える人がいると言うのだ。

 

 

『こんなに健康なの、私くらいだよね』

『悪いところはどこもない。 とても恵まれている』

 

 

と寝たきりで病床に伏している老人が言葉を続けるのである。

 

 

実際の身体の健康状態と

心の健康状態が合致していない

 

 

この様に

病気だろうが、不健康だろうが、

幸福を感じられる高齢者の心理状態のことを

『老年的超越』

と言う。

 

 

スウェーデンの社会学者が30年ほど前に

大々的に行った調査の結果で明らかになったものだ。

 

 

でも、

この境地に達する事が出来る人は

ごく少数とされているし、

どうしたらその様な境地に辿り着けるのかも

体系的な説明はついていない

 

 

にも拘らず、

「身体機能は落ちてきている」

「孤独な生活をしている」

としながらも、

「気持ちは安定していて穏やかだし、むしろ幸福感を抱いている」

という心理状態の高齢者が

確かに存在しているというのだ。

 

 

何が起ころうと、

どんな状況下であろうとも、

幸せを感じて生きられる。

 

 

そんな人生最強の最終形態

それが

『老年的超越』

と言うことだろう。

 

 

この話を知ってからは、

『健康よりも、何よりも大切な物』

とは、

『老年的超越に到達する事』

だということを確信した。

 

 

そして、

 

 

もし次に大魔神が現れたら、

『老年的超越』

御願いしようと心に決めたのだ。

 

 

ところが、

待てど暮らせど、

その後も大魔神が姿を現す事は無かった

 

 

 

 

2024年2月3日(土)

 

 

 

 

この日、

我が家の三男坊、

高校1年生の颯太郎(そうたろう)が通う学校では、

TOEFL(英語の能力テスト)の試験が実施された。

 

 

 

クラスメート  『 颯太郎! 絶対 1位になれよ~ 』

 

 

 

颯太郎には、

クラス中の全員から期待が寄せられていた。

 

 

颯太郎が通う高校には、

過去に行われたTOEFLの試験において、

難関大学への進学を目指す優秀な

『SPクラス』の生徒だけが、

必ず1番の成績を納めるという歴史が有る。

 

 

颯太郎が所属している『一般クラス』の生徒が、

過去の歴史において

一度も、

1位を納めた記録は無いのである。

 

 

当然、

『打倒! SPクラス』 

というクラスメート達の悲願は、

帰国子女の颯太郎

集中することになったのだ。

 

 

本人にとっては

相当なプレッシャーになると思いきや、

まんざらでもなさそうな様子である。

 

 

クラスメートから期待が集まること自体が

彼の承認欲求を満たしている様子だった。

 

 

でも、

いくらアメリカ育ちで英語が流暢だとしても、

いつまでも一等賞で居られ続けるとは限らない

 

 

颯太郎よりも英語が優秀な生徒は、

全国中にゴロゴロしているし、

仮に今回の試験で

1等賞が取れたとしても、

人生のどこかでは

敗北する時が必ず来る筈だ。

 

 

颯太郎は、

2年半前に、

中学2年生で日本へ帰国して来たが、

思春期真っ盛りの日本人生徒たちの中で、

アメリカ育ちの颯太郎が

心を折らずに溶け込めたのは、

英語の成績を発揮できるからに他ならなかった。

 

 

中学生の内に英検1級を取得出来た事も、

彼の立ち位置をより強固なものとした。

 

 

今も、

英語の成績が彼の心を支えている事に

変わりはないだろう。

 

 

つまり、

思春期のまっ最中に、

異文化から飛び込んで来た

颯太郎にとっては、

英語の成績こそが心の支えなのである。

 

 

そんな颯太郎が、

今回のTOEFLで首位の成績が取れなかったとしたら...

 

 

もしも、

クラスメートからの期待に応えることが出来なかったら...

 

 

心の支えを奪われてしまう

その瞬間が、

彼にとっては

日本への帰国後で最大の正念場

になるにちがいない。

 

 

私は颯太郎の親として

何もしてあげることは出来ないが、

せめてもの思いから、

『1つだけ叶えられるという大魔神への御願い』

を変更する事にした。

 

 

 

 

「どんな結果でも幸せを感じられる心を与えてやって下さい」

 

 

 

 

この超越した願いが叶えられれば、

きっと大丈夫。

 

 

正念場も超えられる筈だ。

 

 

でも...

 

 

この願いを伝えようにも、

未だに

大魔神が現れる様子はない

 

 

どうしたものか...

 

 

成績発表の日は

今週の火曜日、

2024年2月13日に迫っている。

 

 

 

 

★★★★★★★★

 

 

 

 

正念場を超える経験を積み重ねた先に、

老年的超越の境地が待っているのかもね。

 

 

 


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