中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

中国情報ジャーナル ディープな香港・中国・台湾

1997年7月1日に英国から中国に返還された香港。1997年から香港に駐在したフリーランスライターが現場取材をもとにディープな香港、中国、台湾の最新情報を書き尽くしていきます。

愛国教育強化で小学生の親世代、嫌気 移民流出 香港
5年後、小学生数36.5%減 香港教育局発表

香港ではスパイ活動などの防止を目的とする国家安全条例が3月施行され、反政府活動を完全に抑え込んで低迷する経済復調を目指す。政府は愛国教育を強力に推進し、幼少期から中国人として帰属意識、愛国忠誠心を徹底啓蒙し、政府への反抗の芽を抹消させ、外国勢力への警戒を強める動きに失望する香港人は海外移住し、人材流出も懸念されている。

 

「国家安全」で統制強化 中国
スパイ摘発あぶり出し奨励

 

▲4月15日、国家安全教育日の記念式典で演説する香港の李家超行政長官

 

 

香港では4月15日、中国の習近平指導部が定めた「国家安全教育日」を迎え、記念式典行事が行われた。政府トップの李家超行政長官は演説で「敵対勢力が香港への攻撃を続け、国家安全の脅威がウイルスのように広がりかねない。外部勢力が香港を虎視眈々と狙っている」と述べ、米欧など西側諸国が反政府活動を扇動して混乱を醸成させることへの警戒感を強めている。

▲4月15日、国家安全教育日の記念式典で演説する香港の李家超行政長官

 


3月23日に施行された国家安全条例をワクチン接種にたとえ、「(ワクチンだけでは)ウイルスは自動消滅しない」と語り、国家安全条例を駆使し、「外国勢力」への警戒を呼びかけ、スパイ活動を全力で取り締まると強調した。

 

▲4月15日、香港のコンベンションセンターでオンライン演説を行う夏宝竜・香港マカオ事務弁公室主任

 

▲4月15日、香港の湾仔でオンライン演説を行う夏宝竜・香港マカオ事務弁公室主任


中国政府で香港政策を担当する夏宝竜・香港マカオ事務弁公室主任は香港の式典にオンライン演説し、「国家安全条例は市民の安全、発展、生活を保護するための条例。(香港の)伝統的な利点は永続的なものではなく、新思考が必要。香港を支援し、繁栄させるための新たな措置が間もなく登場する」と述べ、中央政府からの新たな支援策が打ち出されることを示した。

 

▲4月15日、香港のコンベンションセンターでオンライン演説を行う夏宝竜・香港マカオ事務弁公室主任

 

▲香港島銅鑼湾(コーズウェイベイ)で行われた国家安全教育日のイベント


昨年の演説は反政府デモを念頭に「(動乱の)底流はまだ波打っている」と警戒感を露わにしていたが、今回の演説の半分以上は経済振興に関する内容で、中央政府が新たなてこ入れ策を導入する準備が進んでいる。

 

香港保安局の発表によると、国安法が施行して以降、今年3月8日までに291人(男性218人、女性73人、年齢15~90歳)が国安法容疑で逮捕、拘束され、すでに112人が有罪判決を受けている。2019年の反政府デモでの逮捕者10279人のうち、35人が未だ法廷に出廷していないという。

 


▲香港政府教育局の蔡若蓮局長

香港政府教育局の蔡若蓮局長は3月15日、立法会(議会)財務委員会特別会合で議員からの質疑を受け、「香港の小学生数は2029年時点で現状(23年は約26万6000人)の36.5%減、中高校生数は20.5%減となる。小学校の統廃合、各学年のクラス削減が深刻化するリスクに対応しなければならない」と危機感を募らせる。

 

▲香港の小学生たちは人口減少が続く

 



政府予測でさえも今後5年間で香港の小中高校生の数が2~4割減少するほどに迫っており、精神疾患と診断される小中高校生も過去5年間で急増。政府統計では小学生が2.6倍、中高生が1.5倍増えている。蔡局長は小中高生たちの精神疾患急増の原因を「全世界的なコロナ感染の影響が大きい」と説明し、香港の急速な愛国教育導入による生徒たちの精神的な混乱には触れようとしない。

 

▲2021年夏まで香港の高校生たちの必修授業だった必修授業「通識科(リベラルスタディーズ)」

中国や香港政府は2019年の反政府デモが高校生たちを感化させた必修授業「通識科(リベラルスタディーズ)」だと断定。国安法施行後の2021年9月から廃止され、中国憲法や愛国心、改革開放などについて学ぶ「公民と社会発展科」に置き換えられた。国旗掲揚が2022年から授業日に義務付けられ、新科目では、香港が中国の不可分の領土であることや国家安全の意識を教師は教えなければならない。

▲2021年夏まで香港の高校生たちの必修授業だった必修授業「通識科(リベラルスタディーズ)」


通識教育世代は幼少期から非正規課程で中国国歌を歌い、中国語を学び、小学校からは内地交流にも参加。前世代より中国本土と触れる機会は圧倒的に多い。

 

▲香港の高校生たち

高校で通識教育科を通して祖国中国のマイナス面を知り、幼い頃に抱いた祖国中国に対する情感は次第に否定的な印象へと変わってきていたので中国政府や親中派は帰属意識が薄い教育制度に強烈な危機感を抱いていた。その世代が小学生を持つ親の世代となっている。

 

▲香港の小中高校では記念日の国旗掲揚が義務づけられている

小学校では2021年から愛国教育が必修化し、23年からは中国本土を訪問して肯定的に歴史や文化を学ぶ「修学旅行」を開始。25年から国安法や中国共産党の業績を学んで愛国心を育てる「人文科」をスタートさせる。

 


▲香港の小中高校では記念日の国旗掲揚が義務づけられている

中国政府の香港への中長期の戦略は、国安法で反対勢力の活動を完全に阻止し、香港市民に愛国教育を徹底して中国人としての帰属意識を幼少期から植え付け、中国の支援による経済繁栄を成就させることだ。不気味なほど沈黙を続ける香港市民の声なき慟哭(どうこく)は香港映画「インターナル・アフェア(無間道)」の無間地獄(阿鼻地獄)なのか。

 

▲ジョージ・オーウェルのSF小説「1984」

ジョージ・オーウェルのSF小説「1984」を彷彿とさせるスパイ摘発の密告社会化、社会統制のさらなる強化で、言論・報道の自由の後退や通識科を受講した親世代の反発による人材流出、外国企業の撤退などが懸念されている。

 

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