【65歳以上の5人に1人が認知症の時代】
認知症の高齢者が続々と増えている。2025年には、65歳以上の高齢者のうち約700万人が認知症になると言われている。65歳以上の5人に1人の割合というから驚きだ。例えば夫婦の両親が高齢者で健在なら、そのうちの誰か1人は認知症の可能性が高い計算になる。
家族の高齢者の預金から預金を引き出す必要が出たときに、その通帳のキャッシュカードがあって暗証番号も分かっていれば、ATMで特段困ることもなさそうだ。金融機関側では、本人以外のキャッシュカード使用はNGなことだが。では暗証番号が分からなかったら、さて。
通帳の銀行登録印がどれか知っていれば、通帳・印鑑持参で銀行窓口で引き出せばよさそうだが、それが窓口で難しいとなると、突然厄介な事態が発生する。
【犯罪収益移転防止法】
平成20年3月から全面施行された「犯罪収益移転防止法」。法の目的は、マネーロンダリングの防止やテロ資金防止、振り込め詐欺防止などで、世界で対策されているもの。別称本人確認法とも呼ばれる。
その後も改正され年々本人確認が厳しくなっている。銀行などでは本人確認が厳しく運用され、犯罪とは関係のない、例えば親のために通帳から高額のお金を引き出すものでも、預金者本人の確認が取れないとなるとなかなか難しくなっている。
認知症の高齢者を騙して勝手に他人が預金を引き出すのを防止するのであれば、どんどん厳しくして欲しいところだ。しかし血縁の家族でも簡単には引き出せないとなると事情は違ってくる。本人が認知症であることが銀行側で分かると口座凍結もありうるようだ。
【法的対策も今後必要に?】
本人以外の高額な預金の払い出しや送金となると、銀行など金融機関もより慎重にならざるを得ない。成年後見制度で家庭裁判所に後見人の選定を申し立てるとなると、いささか厄介になる。
「任意代理」で、高齢者本人が元気なうちに、代理人になる人に委任する事項を明示して委任状を交付するなどで代理権を付与しておく方法が考えられる。ただ、事情によっては金融機関が代理を認めないことも起こりうる。
「任意後見」制度を使い、あらかじめ本人が元気な時に任意後見契約を公正証書で行い、法務局に任意後見の登記を行う方法もある。即効型では任意後見監督人専任の請求も必要になる。
団塊の世代が75歳を越え、単身高齢者の生活や高齢者夫婦のみの生活など、これから年々増すばかりだろう。法的な高齢対策も本当に必要になってくる時代が到来した。