知床ヒグマ~誰も教えてくれない知床ヒグマ最新事情~
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■まえがき
この記事は、ヒグマ撮影のアマチュアカメラマンである「ねこマシーン」が、知床ヒグマ問題について取り上げる記事です。
本記事には、ヒグマの写真がありますが、当の本人は写真よりもむしろ、ヒグマの生態や、それを取り巻く人間模様に興味があります。
ですから、単純にヒグマの写真を見たいという方は、他の方のブログや、インスタをお勧めします。総文字数9000字以上の長文であり、予備知識無しでの理解は困難かもしれません。一応過去記事についてジャンル「ヒグマ」にまとめました。興味のある方はぜひお読みください。
これまでも、私はカメラマンとして、知床のヒグマを取り巻く状況について語ってきた。
だが、当事者として、これらの状況について詳細に語るブログは、未だに見つけれていない(カメラマンの日記レベルのものは多数ある)。
この数年間、状況は少しずつではあるが、変わり始めている。
メッセージ性もなく、自慢のようにヒグマの画像をインスタに投稿する人は少なくなり、一応のマナーについて僅かな記載があるなど、知床財団やメディアの情報発信が功を奏し、進捗は遅々としているもの、前進している。
しかし、依然としてヒグマ渋滞は発生し、「ヒグマを見たい」という人はむしろ増加しているのではないか?と思える状況だ。
また、表層的な知識だけを得た一般人が、ネット上でメディアの記事に反応し、「さもヒグマの事を知っているかのようにヒグマ撮影カメラマンを非難する」という事象が横行している。
「三毛別事件を知らないのか!!」など、全く知床ヒグマ問題と関係のない事象を持ち出す輩の低レベルな罵詈雑言には、反応する気も失せる脱力感に襲われるが、本人たちは動物愛護精神に溢れ、大いに真面目なのかもしれない。
僕は、これまでもカメラマンは無害だとは現在まで一度も発言していない。ヒグマの人馴れの一因子になっている事は間違いない。だが実は、害はカメラマンだけではなく、地元住民、観光客、釣り人など、複数の立場の存在がヒグマを死に至らしめているということも、繰り返し伝えてきた通りである。
今回は、前回までの記事で書いてきた「ヒグマ問題」の最新事情と、より個別撮影地の詳細について記載してみたい。
■ヒグマ渋滞はなぜ起こる?知床岩尾別の現状
この航空写真を見てほしい。昨今TVメディアでも何度も放送されて問題となっている岩尾別周辺の状況である。
知床五湖や、カムイワッカの滝にアクセスするためには、この道を通るしか方法は無い。
ここは、赤イ川と言われる川が流れ、河口には「サケマス孵化場」が存在する。9月以降は、カラフトマス・サケが遡上し、それを捕えようとするヒグマがいつく。
写真中央部に橋があるのだが、このエリアでは、ここでヒグマカメラマンは撮影を行う。
※2018年撮影 平日であったため、人は僅かだった。
橋に待機する人もいるが、ここに三脚を立てて待機するのは、マナー違反である。
それなりの人々がたむろするため、通りすがりの観光客は車を停車させ、「何を待っているんですか?何がはじまるんですか?」と聞いてくる。ヒグマの出待ちであることを伝えると、たまに車を駐車させ、降りて待機するそぶりを見せる人もいるが、殆どは待てずに帰っていく。
最盛期でも、ヒグマの出没は1日数回である。一般人は普通「出るまで待てない」。
だが、一たびヒグマが出現すると、様相は一変する。カメラマンたちは、橋の上に集結し、一斉に橋下流に向けてレンズを構える。
数十名のカメラがレンズを向けて、通り過ぎる人はまずいない。
道路を走っていた観光客や観光バスも停車し、一斉に見学に入る。
この点は特に強調しておく必要があるだろう。大型の観光バスが停車すると、一気に渋滞は加速する。観光に携わる企業達自らが、観光客の満足度向上のため、車を停車させて観察を許容する。「見るとヒグマ死にますから通り過ぎまーす」という、理想的な塩対応をするバスは1台もない。
集団心理は、更に渋滞を加速させる。
だが、ネットなどでヒグマ渋滞に対し、「食われて死ねばいい」「バカばっかり」と叫ぶ人の大半は、ほぼ100%、実際にこの光景を目にしていない。
通りすがりに、人が群れを成してレンズを構えている。そして、目を向けるとヒグマがサケを咥えている。それを見ずに、通り過ぎることができる人は、おそらく知床やヒグマが好きじゃないか、興味が無い。
ましてや、ここは知床の中心部。ビジネス客や一般人などほとんどいない。ほぼ全員が「広義の観光客」である。
自然の素晴しさや、野生動物の魅力に触れるために、知床に来ている。
読者ならどうであろうか?一般人にとっては遠い北海道のへき地である。
時間的にも、経済的にも年に何度も頻繁に来ることはできない人が殆どであろう。そこで、目の前に知床の、いや北海道の象徴とも言うべきヒグマがサケを捕っている。
私は見ない!!見たくない!!と自制できる人がどれだけいるかは疑問だ。いや、できないからこそ、人はそこで車を留める。
そもそも見たくない人は、この時期知床に来る必要も無いように思う。
では、危険性はどうなのか?
誤解が無いように言うと、リスクが無いわけではない。道路横断中に、ブラフチャージ(威嚇突進行動)という事は十分に起こりうる。
なので熊スプレーは装備する。
ただ、高低差が7~8メートルあり、更に距離は数十メートル~100m以上離れる。
ヒグマは人間を認識していないのではなく、現れたヒグマは人を視認しつつ、イソイソと人を避けて川に降りていく。
間違っていけないのは、ヒグマを目にした人々は、我を忘れる。道路を走りつつも、ヒグマに目を奪われる。ここに危険性がある。
以前記載したMKの子供を春に撮影していた観光客の中には、アメをなめながら数メートルまで接近した子供の存在もあった。
間違いなく臭いも漂っていると思われ、非常に危険な状況である。上記動画に出ていた道路を横切る子供も含め、それは、カメラマンのせいでも何でもなく、親の管理の問題である。
■危険なヒグマ渋滞とは何か?
これは、昨今誤解が非常に多いものであり、明記しておきたい。
特に問題となっている場所は、写真左部分。橋に至る前のキツいRが繰り返される部分である。
ここは片側1車線の細い道。しかも非常にタイトなブラインド・コーナーの連続となっている。
制限速度を守れば、危険度はそれほどでもないと思うのだが、如何せん一般人は「制限速度を守らない」
その中で、渋滞が起きていると「追突」のリスクは高まるし、実際事故も起きている。
この場所は、正直に言って撮影に適した場所ではない(危険度を別にしても)。
理由は、高低差がある中で、数百メートル下の川、もしくは河口にいつくヒグマを撮影するためだ。
ここでの撮影は、600mmの望遠レンズでも、豆のようにしか写らないし、見下ろし画像が殆どで、あまり写真として魅力的なものにならない。
一方で対ヒグマの危険性は殆どない(稀にヒグマが横断することはあるし、春先はこうした道路にいつくヒグマもいる)。
※同ポイントから、400mm最大望遠で撮影した画像。証拠写真にもならない。コンデジやスマホでの撮影は、殆ど不可能。
ただ、橋で待機しても全くヒグマが出てこない場合、この峠部分から見下ろし、下流にいるヒグマを狙う人は数名いる。
それを見かけた観光客が停車を繰り返し、危険なヒグマ渋滞が生まれる。
このポイントの危険とは、ヒグマと人間との距離ではなく、「車同士の事故の危険」である。
渋滞のトリガーは、ヒグマカメラマンの事が多いため、これはカメラマンが無関係とは言えない。ただ、全体数のうち、ヒグマカメラマンが占める割合は僅かなものであるというのが私の感想だ。
ヒグマカメラマンは、大した写真にならないのでぜひここでの待機は止めてほしい。
■なぜヒグマは思うように出てこない?
このポイントは、この季節「サケマス」という誘因物に誘われ川に来る。だが、昨今のサケマス不漁を原因として、遡上数が非常に減少している。
これは、帰ってきているサケマスが少ないとも言えるが、河口に存在するサケマス孵化場が、親魚を確保する数量に到達しないため、ウライ(サケマスが遡上できないようせき止める柵)を上げないという理由がある。
このため、場合によっては(特に昨年)、サケマスが橋までも遡上しない。
※橋より上流部にて、魚がいないじゃないとガッカリするヒグマ
かつては、更に上流の「ホテル地の果て」まで続く道での撮影が問題となっており、駐車禁止のロープや知床財団による監視小屋が存在したが、今年は無い。
これは、そこまでサケマスが遡上していないという理由からだ。
注)余談だが、北海道のサケマスは、殆ど自然産卵ではない。ふ化事業(稚魚放流)が始まって以来、大幅に回帰数が増加した。そうした意味では、ヒグマは人間に追いやられているということではなく、一方では人間の経済活動(ふ化事業)の恩恵を受けて個体数を延ばしてきたという背景がある。
もっとも、魚の数自体が少ないという理由もあるが、それだけではない。「孵化場」がカメラマンを嫌がり、ウライを上げるのに否定的であるという事実もある。
これは、エゾシカ・ヒグマWG(ワーキンググループ)の議事録にしっかりと記載されている。また、ウライを上げて遡上数が増えることで、上流での混乱が生じる可能性を避けたいとの意向があるらしく、こうした対応は一定の理解ができる。
更に、今年も発生したロープを超えて私道を通り、孵化場への侵入を行うといったカメラマンの存在が、そうした状況を生み出している。
知床財団が指導を行うも、「河川や川岸は誰のものでもないだろ」と河口へと下って行ったという。現地カメラマン情報によると、1人は50歳くらいの愛知県のカメラマン。もう一人は、三重県から来た20代のカメラマンだったようだ。もうひとつ別の事例として、レンタカーで私道を走っていたとの情報もある。
全くもって恥ずかしい限りである。「人とは違う写真が撮りたい」というカメラマンの欲望が、そうした行動へ結びついている。
現在、ヒグマの出現は、遡上数減少に伴い非常に厳しい状況になっているようだ。
なので、この記事を見てヒグマを見たいという人は、止めはしないが丸一日かけて豆粒程度のヒグマを見れる程度である。
私なら、時間が惜しいので、迷わず観光船を選択する。ルシャ地区へ行く観光船であれば、この時期見れないことはめったにない。
今現在も、2頭の良く遊ぶ若い個体や、子熊3頭連れのメス個体をはじめ、その他多数の個体が出没している。
遠いことは遠いが、小型漁船を使用した撮影では、それなりに近づくこともできる。費用は大体1万円程度だ。
■ヒグマの追い払いは?知床財団活動の現在。
今年に入り、知床財団のヒグマ追い払いの対応は変化してきているように思える。
かつては、ヒグマが現れるとすぐに現場に到着し、追い払いもしくは強硬なゴム弾や轟音玉での追い払いを行っていた知床財団だが、今年はそうした様子が全く見えない。
もちろん、危険と判断すれば対応するのだが、これは、各種公表されている資料からも「強硬なヒグマの追い払い」が思うような効果を上げれない」。という結果に基づくものだと推察される。
ヒグマは、ただヒトに馴れて出てくるのではなく、「誘因物」を目的に出現する。
春はアリや植物。秋はサケマスといった具合だ。それがある以上、何度でも繰り返し現れる。諦めたりしない。
知床財団は、長年ヒグマカメラマンの敵対的対応に向き合い、消耗しながらも頻繁なヒグマ対応を行っていたが、結局は射殺される個体が出てしまう。方針を転換したと思われる。
方針の転換が目指すところとは、「岩尾別地区のアクセスコントロール」である。
つまり、岩尾別地区のマイカー乗り入れ規制だ。
核心部に至る前に、観光バスに乗り換えさせ、安全と観光を両立させる。
その取り組みの実現へと舵を切りつつある。
この施策を実現するためには、知床財団のみでは到底実現できない。
環境省、北海道、斜里町、そして地元観光業者など、複数の組織の合意を得る必要があるし、観光バス単体での収支も整合させなければならない。
現在もハイシーズン時期のカムイワッカまでのシャトルバス運行とマイカー規制を実施しているが、その収支は微妙と言わざるを得ない。
補助金なくしては成立しない収支となっており、一般企業で言うところの営業利益は、実質赤字であるものと思われる。
岩尾別のシャトルバスもしくは観察用バス運行を実施したとしても、現在実際にヒグマに遭遇できる確率は、先に述べた「1日に数回」である。
かなりの低確率だ。
それは、知床観光のガッカリ感を高めることにもなり、長期的に見た知床の魅力減少、観光客減少に至る可能性を否定できないし、収支整合への明るい未来を描けるものでもない。
知床への観光客は、世界自然遺産の登録初年度以降、大幅に減少を続けている。
もし隘路があるとすれば、それは前述した孵化場の協力なくしては成し得ないだろう。遡上数を上げることができれば、あるいは観光として成り立たせる可能性はあると思うのだ。ここは、漁業者との合意形成ができるかどうかがカギとなるため、一筋縄ではいかないだろう。
また、規制期間をどうするのか?といった問題もある。正直岩尾別地区への出没が頻発するのは、春と秋だけだ。
土日や連休だけにするのであれば、包括的な行動のコントロールとは言い難いし、一方で期間を長くすればするほど、収支の問題が発生する。
実現すれば渋滞は解消されるだろう。また、実現できたとして、カメラマンがそれに乗るかどうかは疑問だ。
見下ろし画像一点となる絵に満足できるカメラマンがいるとは思えない。私道を通り、河口までいけるというならば話は別だが、現行の公道のみをエリアとするのであれば、カメラマン達は、他にポイントを求めるに違いない。そして、別の場所で再び同じことが「より密集した人数となって繰り返される。
実際、この「撮影バス」の検討は、今年初めにメディアの先走りによって報道がなされた。
しかし、まるで「決定したかのように」語られたこの案件は、複数の課題を残す中での報道の先行であり、知床財団にとって決してうれしいものではなかっただろう。
メディアはタイミングを配慮することをしない。実現するためには、様々なハードルを越える必要があり、調整や交渉も必要だ。相当の時間を要することと思われる。それを「もう決まったこと」のように書かれても、当事者たちは困惑するだけである。
かつ、実現への道のりは我々素人が思う以上に容易なものではない。
知床データセンター(←リンク)には、エゾシカ・ヒグマワーキンググループの議事録や、会議資料が公表されている。
知床ヒグマ問題に関心がある人や、カメラマンが悪い云々とメディアの記事にコメントしている諸氏は、最低限数年分は目を通すべきだろう。そのうえで、大嫌いなカメラマンと議論すれば良い。
・0歳一頭連れ親子が出没し(MK)、渋滞が発生。マナーの悪いカメラマンが熊スプレーとカメラを構え、ヒグマを追い掛け回す様子が目撃される。
・0歳 1頭連れ親子(MK)が目撃され、カメラマン車輛 10台弱が停車し渋滞が 発生する。
・0歳 1頭連れ親子(MKとジュニア)に 3mほどまで接近し撮影を行うカメラマンが目撃 される。
・夜間、軒先に干してあった魚がヒグマに奪われた
・夜間、番屋の軒先に干してあった魚がヒグマに奪われ、番屋の窓ガラスが破壊される被害が発生。捕獲檻によって、加害個体と推測されるヒグマを有害捕獲した。
・日中、住宅街を海岸沿いに移動するヒグマが目撃された。当該個体は、海岸で干し 魚を食害している最中に有害捕獲された。
・ 昨年に引き続き、4月 21日以降親子連れがたびたび目撃されていた。 6月 16日に目撃された親子連れ(仔2頭)は、P帯にあった供え物(ビール2 缶、コーヒー1缶)を捕食。駆除対象
・親子連れが出没。付近にコーヒーの空き缶が大量に放置され、誘引された 形跡を確認。未だ捕獲できず。
・飼い犬 2頭がヒグマによって食害された。加害個体は捕獲対象と判断されたが、10 月末時点で捕獲には至っていない。なお DNA鑑定により、加害個体は特定されて いる(ID:RT オス)※この個体は、今年に入っても飼い犬を食っている。危険があると分かりつつも、室内飼育をしない地元住民のため、飼い犬達は、もりもりと食べられている。現在もヒグマは捕まっていないようだが、死刑判決で指名手配中だ。
・観光客が降車してヒグマに接近しているという目撃情報。
・ ヒグマがランナーに向かって走り寄ってきたという目撃情報
・ヒグマが釣り人に走って接近し、逃げた釣り人が放置した魚を持ち去る。
・釣り人の釣った魚がヒグマに奪われた。加害個体はその後、漁業者が作業中の海岸 を人目を気にすることなく移動していたため、有害捕獲となった。
むしろ、捕獲に至るまでの経緯を見ると、カメラマンが直接的原因を作った事象は見受けられず、一方で地元住民や釣り人の犯した不注意は、毎年致命的であり、確実にヒグマの命を奪っている。
マイノリティーであり、むしろ視覚的にインパクトの強いカメラマンや観光客にフォーカスしていきがちである点は、昨今の情報宣伝活動からは否めないというのが私の感想だ。それは、在り方としてどうなんだろう?とも思う。
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