住民から依頼を受けた場所へ、給餌に向かう途中。
限られた時間が、容赦なく迫る。
ここを通り抜けるしか、道は無い。
ひび割れに挟まって帰れなくなったら、
圏内に残されて、餓死した動物たちの気持ちが
少しは分かるだろうか。
週の途中に降った雪が、道路を白くする。
以前にはなかった、冬期通行止めのバリケードが
そこここにあり、迷路から出られなくなりそうな恐怖に背筋が凍る。
給餌依頼のあったお家から近距離。
原発より13km~14km地点。
ファーム・サンクチュアリ。
300頭あまりの牛たちをどうしても生かしたいと、
牧場主さんとその活動を応援する人たちが始めたプロジェクト。
そこには凍てつく中でも、のんびりと牧場に佇む牛たちの姿。
大規模な牧場主さんが、必死に戦い守り抜いた結果。
小規模な酪農家さんは、諦めるという選択肢しか与えられなかった。
もし、選択肢があったとすれば、牛舎につないだまま諦めるのか、
縄を解いて祈るのか、のどちらかだった。
圏内には本当に沢山の離れ牛がいる。
その中に、警戒区域になってから産まれただろう、子牛がいて、
群れでその子を守るように動いている。
今では、クルマや人間が近づくと大急ぎで逃げ去る牛たち。
人間が敵でしかないことを、知ってしまったのですね。