置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

何事もなかったかのように、静まり返った牛舎。

石灰をかけられた乳牛はここから運ばれて、

どこかに埋められてしまった。

蓄主さんが片付けたのだろうか、一体どんな思いで・・・。


人間は生きていく以上、

ココロが折れてしまうような悲劇さえも、

どうにか受け入れて、そして夜明けを待つしかない。

少しずつ忘れて、思い出にして。


でも、

何も出来なかったわたしを含めて、大人や政治家たちが

圏内にいた動物たちにしてきたこと

言葉では言い尽くせない、ひどすぎる仕打ちを、

仕方なかったんだからと、

諦めて、忘れていくなんて許せない。



いっそ、あの時牛たちと一緒に

断末魔の声を聞きながら餓死していれば、

こんな思いにさいなまれることもなく、

せめて今は、楽になれたのかもしれない。









置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


原発事故からもうすぐ一年。

公的な寄付金の分配のあった動物愛護団体も

徐々に20km圏内から遠ざかり、

今では給餌やレスキューを続けている人は

限られてきた。


自力で資金集めをしながら、

まだまだ、諦めずに20km圏内に

クルマを走らせるアニマルエイドのSさん達。

どうしてなの?

もう忘れてしまえば・・・。











置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


バイバイ、

なんて言えないよ。

クルマが来る週末を、震えながら待ってる。


ただひとつの命の細い綱を

しっかりと握ってるのは

スーパーマンでもなく、政治家でもない。












置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


たくさんの犠牲を

嫌というほど見てきたから。















置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


そして、今も・・・

まだ懺悔の気持ちさえなく、

この零下の屋根も無い、風の吹き荒ぶ中、

囲い込んで、また置き去りにして餓死させるのか、

毒殺するのか。

どうせ死ぬ運命なら、どんな扱いをしてもいいというのか。


役人や政治家の中に、

これを止められる人のいない日本。

貧しいココロの国。












置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


コウタロウみたいに、

助けられる命があるのなら・・・。

諦める訳には、いかないんだ。












置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


それが、どんな場所でも。