置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


濡れたバラは、溜息がでるほどに輝いて見える。

それなのに、雨降りの日は、犬も猫もかくれんぼ。

「お~い」と呼んでみても、自分の声だけ虚しく響く。









置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


やっと見つけた!

こんな所で雨宿りのトムキャット。








置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


この場所で、疥癬のような猫を2度見掛けた。

それなら、と桜ママが缶詰に疥癬の薬を混ぜてくれる。

きめ細やかに、犬や猫や牛を心配してる人。

今日はわたしの助手席にいてくれる。

おかげで、60箇所以上の定点を回ることが出来た。






置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


給餌の途中。

オーナーさんに相談したいことがあり、立ち寄る。

雨の中、姿が見えず帰ろうとしたした時、

タイミングよく車でやって来たオーナーさん。







置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


ビニールハウスで雨をよけてくつろぐ牛たち。

全部で27頭。

殺処分には同意しないと、

落ち着いた口調で話すオーナーさん。

繁殖用の牛を育てていたのだという。

このそばに、井戸のポンプがあってなんと、

一日300リットルの水を飲みほすのだという。

そんなにも水が必要だったなんて、

餓死していった牛たちは、

どれほど辛かっただろう。



「だって、科学的根拠がないでしょ?」

「家族と同じだよ。」

殺処分に同意しない理由を、そんなふうに語った。




置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


一昨日生まれた子牛。

ここには守ってくれる人がいて

君は幸せだよ。







置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

ファームサンクチュアリの入り口のそば。

この先は警戒区域。この牧場は元々警戒区域に位置していたが

浪江町と南相馬市に渡って位置していた為、入り口付近は解除となったが

まだ警戒区域に属する敷地もある。


どうしても、聞いてもらいたいことがあって

急遽アポなしで、ファームサンクチュアリに向かう。

一旦、南相馬から圏外に出なければ、

この牧場の入り口にたどり着けない。

急がなければ!



置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

牛舎へのアプローチを進んでいくと、

車で事務所を出ようとする吉沢さんにバッタリ出会う。

急ぎの用事の途中だったようだが、初対面の私たちの話を

快く聞いてくれ、ひとつの答えをもらう。

そして再び、警戒区域へとクルマを走らせる。

 






置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

君の事、もちろん見えるよ。

雨の中、出てきてくれたんだね。


でも、ごめんね。

今日は笑顔になれないんだ。






置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

「ねえ、お母さん。早く起きて。おなかが空いたよ。」


殺処分柵の中、病死したらしいお母さん牛のそばに

ずっと佇む子牛。


苦しい陣痛の後、やっと生まれた赤ちゃんに

おっぱいをあげることも出来ず死んでいくなんて、

どんなにか心残りだったろう。


寂しさと不安だけの感情しか知らないまま、

明日にはもう天国にいってしまう子牛。


こんなあどけない目をしたこの子を、

簡単に毒殺すると決めた国。


目を背けてはいけない事実です。


※殺処分柵は、命の楽園などの生かす柵とは造りが違い見れば分かります。