濡れたバラは、溜息がでるほどに輝いて見える。
それなのに、雨降りの日は、犬も猫もかくれんぼ。
「お~い」と呼んでみても、自分の声だけ虚しく響く。
やっと見つけた!
こんな所で雨宿りのトムキャット。
この場所で、疥癬のような猫を2度見掛けた。
それなら、と桜ママが缶詰に疥癬の薬を混ぜてくれる。
きめ細やかに、犬や猫や牛を心配してる人。
今日はわたしの助手席にいてくれる。
おかげで、60箇所以上の定点を回ることが出来た。
給餌の途中。
オーナーさんに相談したいことがあり、立ち寄る。
雨の中、姿が見えず帰ろうとしたした時、
タイミングよく車でやって来たオーナーさん。
ビニールハウスで雨をよけてくつろぐ牛たち。
全部で27頭。
殺処分には同意しないと、
落ち着いた口調で話すオーナーさん。
繁殖用の牛を育てていたのだという。
このそばに、井戸のポンプがあってなんと、
一日300リットルの水を飲みほすのだという。
そんなにも水が必要だったなんて、
餓死していった牛たちは、
どれほど辛かっただろう。
「だって、科学的根拠がないでしょ?」
「家族と同じだよ。」
殺処分に同意しない理由を、そんなふうに語った。
一昨日生まれた子牛。
ここには守ってくれる人がいて
君は幸せだよ。
ファームサンクチュアリの入り口のそば。
この先は警戒区域。この牧場は元々警戒区域に位置していたが
浪江町と南相馬市に渡って位置していた為、入り口付近は解除となったが
まだ警戒区域に属する敷地もある。
どうしても、聞いてもらいたいことがあって
急遽アポなしで、ファームサンクチュアリに向かう。
一旦、南相馬から圏外に出なければ、
この牧場の入り口にたどり着けない。
急がなければ!
車で事務所を出ようとする吉沢さんにバッタリ出会う。
急ぎの用事の途中だったようだが、初対面の私たちの話を
快く聞いてくれ、ひとつの答えをもらう。
そして再び、警戒区域へとクルマを走らせる。
雨の中、出てきてくれたんだね。
でも、ごめんね。
今日は笑顔になれないんだ。
「ねえ、お母さん。早く起きて。おなかが空いたよ。」
殺処分柵の中、病死したらしいお母さん牛のそばに
ずっと佇む子牛。
苦しい陣痛の後、やっと生まれた赤ちゃんに
おっぱいをあげることも出来ず死んでいくなんて、
どんなにか心残りだったろう。
寂しさと不安だけの感情しか知らないまま、
明日にはもう天国にいってしまう子牛。
こんなあどけない目をしたこの子を、
簡単に毒殺すると決めた国。
目を背けてはいけない事実です。
※殺処分柵は、命の楽園などの生かす柵とは造りが違い見れば分かります。