紫陽花の季節は、
ここ警戒区域にもやって来る。
放射能で汚染された土が咲かせた花が
こんなにも可憐なのは、どうして?
二週間に一度やってくるごはん。
首が伸びきっちゃうくらい、
待っていたんだね、きっと。
新しいフードをクルマから運んでいると、
待ちきれずにとことこ出てきた子。
残念だけど、すぐにバイバイして次にクルマを走らせる。
他の給餌ポイントから少し離れた場所へ・・・。
周りは水田跡が広がるその中に
そこだけ場違いに小さな祠(ほこら)がある。
いつもは気にせず通り過ぎるのに
今日、立ち止まったのは偶然だったのだろうか?
傘地蔵じゃないけれど、
誰かがお地蔵さんに着せていった洋服。
この写真と同じく、お地蔵さんの顔が
どんなだったか、全く意識がなく、
覚えていない。
ただ、見えたのはじっとこちらを窺うブルーの瞳の子。
そして・・・。
雨宿りする場所はここしか無い、田んぼの真ん中。
餌もない場所で、小さな命を育てて来たんだね。
自分だけ生きるのだって精一杯だったはずなのに。
中を覗くと、お目々ぱっちりの4匹の子猫。
今日も、100%ついていない。
捕獲機は別の場所に仕掛けて来た。
どうしても何とか連れて帰りたくて
キャリーバックを持って近づく。
一瞬の出来事だった。
一旦、二匹がバックに入るが、
四方八方素早く逃げていく。
バラバラになってしまった家族。
その後、暫くこの場所を離れ、
様子を窺うも、祠の中は空っぽ。
罪悪感、涙、失望感、涙。
消えていく、お母さん猫。
何と引き換えなら、この子たちを助けられる?
わたしの命でいいのなら、いくらでも削るよ。