置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

眠ることを知らない週末の新宿。


その日、警戒区域を出て、自宅に辿り着いたのは、

もう、一日が終わろうとしている時間だった。


数え切れない人が吸い込まれ、

吐き出されていく巨大な駅。

知らない人ばかり行き交う、

この街のネオンサインに、

やっと安堵の気持ちが湧いてくる。


せっかく保護した猫達のこと、

リリースするよう詰め寄られたのは

ほんの数時間前。


バイバイ・・・なんて言えないよ。

溢れ出る思いとは別に、現実はせまる。

そして保護した猫達をクルマから、

無理やり降ろされそうになる

まさに直前のことだった。



置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


あり得ない奇跡が起きる。


それは、わたしの力などでは無く、

この子達をどうしても助けたいと動いてくれた

レスキュー仲間の一念だった。

もはや感情論では通らなくなってた事態を

覆せるだけの事実が必要だった。

考えてる時間など無い。

とにかく実行あるのみ!


そして、死守した猫達。



置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

シェルターで暖かいフリースに包まれるソックスちゃん。

スタイも付けてたんだね。

この子は甘えん坊らしいから、飼い猫だったのだろう。

もしもまたこの場所に行けたら、保護したお家に

メッセージを残そうと思う。

猫、預かってます・・って。





置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

薄汚れて、痩せた君たちのこと、

保護できて良かったよ。

別の場所で保護した二匹なのに兄弟みたい。








置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

再会出来たロン毛のサビちゃん。

この冬はぬくぬく暮らせるよ。




綱渡りの一日が終わり緊張の糸が解ける。

それなのに、わたしのココロにぽっかり空いた穴。

ナイフのように突き刺さる、わたしを罵倒する言葉のせい?

いいえ、そんなことじゃ無い。

どれだけ罵られても、それは他愛もないこと。





置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~

置き去りにしてきたマイセンの置物ちゃん。

ぽっかり空いた穴の正体。

バイバイ・・・なんて言える訳ないから!