その日、警戒区域を出て、自宅に辿り着いたのは、
もう、一日が終わろうとしている時間だった。
数え切れない人が吸い込まれ、
吐き出されていく巨大な駅。
知らない人ばかり行き交う、
この街のネオンサインに、
やっと安堵の気持ちが湧いてくる。
せっかく保護した猫達のこと、
リリースするよう詰め寄られたのは
ほんの数時間前。
バイバイ・・・なんて言えないよ。
溢れ出る思いとは別に、現実はせまる。
そして保護した猫達をクルマから、
無理やり降ろされそうになる
まさに直前のことだった。
あり得ない奇跡が起きる。
それは、わたしの力などでは無く、
この子達をどうしても助けたいと動いてくれた
レスキュー仲間の一念だった。
もはや感情論では通らなくなってた事態を
覆せるだけの事実が必要だった。
考えてる時間など無い。
とにかく実行あるのみ!
そして、死守した猫達。
シェルターで暖かいフリースに包まれるソックスちゃん。
スタイも付けてたんだね。
この子は甘えん坊らしいから、飼い猫だったのだろう。
もしもまたこの場所に行けたら、保護したお家に
メッセージを残そうと思う。
猫、預かってます・・って。
薄汚れて、痩せた君たちのこと、
保護できて良かったよ。
別の場所で保護した二匹なのに兄弟みたい。
再会出来たロン毛のサビちゃん。
この冬はぬくぬく暮らせるよ。
綱渡りの一日が終わり緊張の糸が解ける。
それなのに、わたしのココロにぽっかり空いた穴。
ナイフのように突き刺さる、わたしを罵倒する言葉のせい?
いいえ、そんなことじゃ無い。
どれだけ罵られても、それは他愛もないこと。
置き去りにしてきたマイセンの置物ちゃん。
ぽっかり空いた穴の正体。
バイバイ・・・なんて言える訳ないから!