置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


君のこと、心配してくれてる人が

何人もいるんだよ。

そんなこと、知るはずもないマイセンちゃん。

カラスに追いかけられて、放浪の旅にでも

出掛けたの?


10月27日、アクシデントがあって保護出来なくて、

それでもフードだけは置いてきた。

11月4日、心配したもっちーさんが、

地元の犬とり名人にフードを頼んでくれた。

そしてその週、圏内入りしたN会のNさんが、

時間の無い中、捕獲機を掛けて下さったが、

まったく気配がないという報告をもらってた。

こちらも、もっちーさんが動いてくれた。


確かに、今日も猫の気配はない。

でも、生きていれば必ず戻ってくるはずなんだ。

だって、10月27日マイセンちゃんが居た

同じ場所で保護したみろくクンも、

ずっとここで暮らしてたんだから。



置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


7月に撮影したみろくクン。


かなり怖い感じで写ってるが、

ソックスをはいてることと、白いスタイ、

そして同じ敷地内であることから、間違いない。








置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


10月27日、アニマルエイドシェルターにて

レスキュー仲間の執念で救い出すことが出来たみろくクン。


民家のそばに居る子は、フードさえ置いていれば

大体が、その近くで暮らしている。

それは、猫は本来人間と暮らす愛玩動物なのだから。

どうしても、君たちのこと守りたかったよ。


でももう、わたしには残された時間が無い。

それなのに、マイセンちゃんもキジトラちゃんも

ただの一匹も保護できなかった土曜日。

もうすぐ警戒区域から締め出される日も近いのだから、

これが最後の給餌になるかもしれないから、

涙を流さないように、これまでのことを噛み締めながら

ひとつひとつのポイントを回る。

給餌をはじめた昨年、まさかこんな形で

終わりの日が来るなんて、思ってもみなかった。

必ず、わたし達の思いは政府に届くと信じていた。


1年8ヶ月、何も変わらないまま、絶望のまま、

最後の給餌を終えるのだろう。




置き去りにされた小さな命~福島第一原発20km圏内 警戒区域から~


マイセンちゃんが居た場所・・・。


キラキラ光る宝物は、指の間からパラパラとこぼれ落ちて、

今、わたしの掌に残ったのは、ただひとつの小さなダイヤモンド。

それは小さな命を閉じる、マイセンちゃんの最後の涙。