世界中のあらゆる公道を全開走行で駆け抜ける過酷な自動車競技“ラリー”を舞台に、『海猿』のヒットを生み出した羽住英一郎監督が愛と絆、そして迫力ある圧倒的なカーアクションを描いた映画『OVER DRIVE』。主人公のメカニック・檜山篤洋を演じるのは東出昌大。弟で世界最高峰のラリー競技・WRCへのステップアップを目指す若き天才ドライバー・檜山直純のマネジメントを務めるヒロイン・遠藤ひかるは森川葵が務める。

 

羽住組の撮影現場では、「バカ」は最大の褒め言葉だったという。自ら「ラリーバカになった」と語る東出、そして役柄と同じようにラリーの世界にどんどん引き込まれていった森川に、見どころや撮影でのエピソードを聞いた。

 


■撮影前に覚えることが山ほどあった!


――作品の題材“ラリー”は、欧州や南米ではF1に勝るとも劣らない人気の競技ですが、日本だとまだそこまで馴染みがないのではと思います。お二人はご存知でしたか?


東出:まったく知らない世界で、元々は興味もなかったです。


森川:正直に言うと、私は“ラリー”という言葉さえ知らなかったです。

――実は私も今回の映画で初めて競技内容を知りました。実際に撮影前に観に行かれたりしたのでしょうか?

森川:私は観に行きました。かっこよかった!コースのゴールに近いところの、道路のギリギリ、本当に数十センチくらいのところで見ました。絶対危ないでしょ!そんな距離で見ちゃダメだよ!って思うじゃないですか。でも大丈夫なんですよね。

東出:僕はタイミングが合わず観には行けなかったのですが、「ラリーとは?」といった本や雑誌、分厚い参考資料とDVDの束をたくさんいただいて。クランクイン前に覚えることがこんなに多い現場も、なかなか無いような気がします。

 

©2018「OVER DRIVE」製作委員会 


――メカニック特有の専門用語も多かったですものね。クランクイン前にだいぶ勉強されたのですか?

東出:そうですね。1ヶ月くらい前に、メカニックのメンバーが集まって、ラリーで実際に使用した車を整備する特訓期間があったので。撮影現場では、自然に動けるように「ラチェット取って」などパーツの名前や工具の名前も覚えるようにしました。けっこう前から準備していたように思います。


――では、もう自然と専門的なワードが出てくるようにはなっていたと。

東出:メカニック同士で、お互い好きなパーツは何?とか、好きな工具は何?って語り合うぐらいには、気持ち悪い“ラリーバカ”になりました(笑)。

©2018「OVER DRIVE」製作委員会


――ちなみに、東出さんが好きなパーツは?

東出:ターボチャージャーの中にあるアクチュエーターというパーツが好きです。

森川:全然わからない……(笑)。

――好きな理由も一言教えていただけますか?

東出:え、一言語っていいの(笑)? ターボチャージャーっていうのがそもそもターボってシステムでエンジンに強制的に空気を送り込んでより高い燃焼エネルギーを得るための装置なんですけど、そこのアクチュエーターっていうのはスプリングが入っていて吸入の量とかを……(スラスラと語る東出さん)。

――まさに劇中のひかるが篤洋から説明を受けるシーンが思い浮かびました。

森川:ふふ、ひかるがポカーンとするシーンですね。

 

©2018「OVER DRIVE」製作委員会

 

■森川、周りからはバレバレだった!?


――現場はどのような雰囲気だったのでしょう?

東出:みんなずっと仲良くふざけたり、食事に行ったり。かと言って、いつも一緒に居続けることが少しツライという時は、「ちょっと今日は部屋で休むわ」と言い合える良い距離感でした。

森川:みんな本当にずーっと一緒にいたんですけど、なんかみんな自由人だったんじゃないかなって思うんですよ。

東出:うん、この仕事やっているだけあってね。

森川:だから、チームとしてやっているし、一緒に居たいときは居るんだけど、自分がちょっとツライなって時は普通に「今日はちょっとやめとこうかな」と言える。それが本当に良いチームだったなと思いますね。


 

――お二人は今回メインで共演されて、お互いの意外な部分などありましたか?

森川:東出さんは、やっぱり主演だからというのもあると思うんですけど、このチームを俺が引っ張っていくぞ!というリーダー感がありました。

東出:うそだぁ(笑)!

森川:ありました!あったんですけど、でもやっぱり普段の天然感が抜けていないっていうところが、私の安心ポイントでした。

東出:元々プライベートで交流があったんですが、葵ちゃんは、意外とみんなには見透かされているところが多い人(笑)。本人は気付いていないと思っているけど、周りにはバレバレだぞ、というところが多々ありますね。まぁでもそういったウィークポイントがあるから魅力的な女優さんなんだと思います。

森川:私は上手くできていると思っているんですけどね(笑)。

■東出は、新田真剣佑と「眉毛」が兄弟



――篤洋の弟で、世界最高峰のラリー競技・WRCへのステップアップを目指す若き天才ドライバー・檜山直純を新田真剣佑さんが演じられました。兄弟役ですが、森川さんから見て似ている部分はありましたか?

 

森川:眉毛の濃さ!

――見た目!?

東出:撮影中は、見た目がよく似てるって言われたんですよ。

森川:見ているうちに本当に兄弟に見えてくるんですよね。あ、この兄弟いるわって。スタイルや身長とか、どこかがすごい似ているというわけじゃないんですけど、でもいるだろうな、と感じるんです。でも東出さんは天然ですけど、まっけん(真剣佑)は自由人ですね。


©2018「OVER DRIVE」製作委員会


――現場でのエピソードを教えてください!

東出:みんなでゲームセンターに行ったことがあったんです。そこにあったレーシングゲームで、まっけんと、(北村)匠海(=実際に劇中でライバル役)が本気でやりあってました。あとゲームセンター内で対戦できるんですけど、小学生が「対戦しようよ」ってまっけんを誘って。こっちはコ・ドライバー役の佐藤貢三さん(=劇中で、助手席に座り真剣佑演じる直純にコースやドライビングを指示)が隣について、「次左、次右」とかまっけんに指示しながら、小学生に勝つっていう。大人気なさを炸裂させていました(笑)。小学生が小銭を握って、今まで自分が一生懸命積み重ねてきたセーブデータを持って「一緒にやろう」って言ってくれたのに、大人が勝って本気でハイタッチしていて。

――逆に、大人が本気で相手をしてくれて嬉しかったかもしれないですね。

東出:そうだと思います。とても楽しかったです。撮影中の面白いエピソードはいっぱいあるね、きりがない。

 

©2018「OVER DRIVE」製作委員会

©2018「OVER DRIVE」製作委員会

 

――他にも面白かった出来事は?

森川:驚いた表情の人間がプリントされた紙が、部屋の扉の隙間から入ってきたり、引き出し開けてみたら入っていたり、ということがあって…。

東出:ああ、「笑っちゃいけないゲーム」というのをしていたんです。佐藤貢三さんが、誰よりも年長者なんですけど感覚が若くて。映画のチラシを持ってきて、人物の写真の部分だけを切り抜いたやつを、ホテルでわざわざいっぱいカラーコピーしてきて(笑)。みんなの持ち物の中とかに入れて、それを見つけた瞬間に笑っちゃうっていう(笑)。

――手が込んでいますね!

東出:それで笑ったのを見た瞬間に「笑った~!」って、いい歳したおっさんが言ってくるので、ひどい!って思いました(笑)。

森川:なんだか変に見ているなと思ったら、みんなに配られた帽子の内側に入っていたりとか(笑)。


■男性は気付かない注目ポイントも?

――今回、レース、メンテナンスのシーンを含め、スピード感あふれる演出がとても多いですね。見逃せないポイントはどこでしょう?

森川:車が戻って来た時に、キュッと曲がって入ってくるところがかっこいい。あの場面は、私は繰り返して何度でも見れます(笑)。あと、直純が取材を受けている時、メカニックたちが仕事をせずに外でその様子を見ているシーンがあるんです。そこは、珍しくみんなが何も作業をしていないんですよ。大体、メカニックはどのシーンを見ても何か作業をしていたり真剣にモニターを見ていたりしているんですけど、そのシーンだけは、みんなぼーっとお喋りをしている時間で。いつもと違う表情が出ていると思います。

©2018「OVER DRIVE」製作委員会


――たしかに、少しみんなの気が抜けた表情が見られる気がします。

東出:そのシーンは、現場でもいじられ役のメカニックの長谷川ティティが、カメラ位置が変わるたびにアドリブで喋ってくれていたんですけど、全部カットになっていました。ティティの見せ場だったのに(笑)。

森川:そうだったかも!ずっと喋ってたのにね(笑)。

――東出さんの思う、見どころは?

東出:サービスパークといって、実際にクルマを整備しているエリアでのメカニックたちの芝居は熱い想いがこもっていたので、観ているお客さんの目頭を熱くさせるものになっているんじゃないかなと思います。そのほかにも、実はラリーシーンの撮影には全然立ち会っていなかったんですが、完成したラリーシーンを観た時に、こんなにすごいものを撮っていたんだ、と思って。他の邦画ではなかなか観られない迫力なので、そこも楽しんでいただきたいなと思います。僕は、よく“車離れ”と言われる世代なんですが、元々は車に興味がなかったんです。その僕がこのラリーシーンを観て、血湧き肉躍る感じを受けました。今までF1もラリーも観てこなかったし、深夜にTVで流れていても気にも留めなかったのが、車が走っているさまに感動したので。この感動をぜひ劇場で体験してほしいです。

――もしかすると気付かないかもしれないような注目ポイントがあれば、教えてください。

森川:ひかるは、最初は髪型がハーフアップなんですけど、途中から気合いが入ってくるとポニーテールになるんです。

東出:あはは、確かにそうだね!

森川:現場でメイクさんと髪型を変えようとなって。メカニックの誰かに見せて「どう思います?」って聞いたんですけど、「え、何が変わったの?」って言われた気がする(笑)。だから男性はそういうポイント気付かないんだなって。

東出:気付かないよ~。

――知っていると、ひかるのスイッチが切り替わるというか、気合入ったことがわかる注目ポイントですね。東出さんは?

東出:メカニックは、サービスパークでの衣装は意外とキレイなんです。というのも、要するに整備するところが少ない車が自分たちの誉(ほま)れだし、無事帰ってきたというのはメカニックの腕が良いからなんです。仕事が出来る人ほどメカニックスーツはキレイなので、みんななるべくキレイに保とうとするんです。汚したほうが仕事している感が出るような気がするんですけど、本当のトッププロはキレイなままというのが、興味深い価値観だと思いました。

©2018「OVER DRIVE」製作委員会


――元々お二人ともあまり車に興味を持っていなかったとおっしゃいましたが、今回、この作品を通して変わりましたか?

森川:私は車に興味を持ちました。車が欲しい(笑)。運転免許は持っているんですけど、ずっと怖くて結局車を持っていなかったんです。車が欲しいなとは思っていたけど、前は「まぁ乗れればいいや」くらいだったんですよ。でも、今は車を買うとなったら、いろいろ中とかも自分仕様にしたいなって。ちょっとだけですけど欲が湧きました。

東出:僕は車を乗ってるし持ってもいたんですが、以前よりも好きになりました。なにより、ラリーという新しい世界を知って、その世界が好きになったし興味が湧きました。(メカニック役だったけれど)車をいじりたいというよりは、今後ラリーも追いかけたいです。

――この作品をどういった方に観ていただきたいですか?

東出:この作品を通して、僕は新しい扉を開く経験ができました。まったく興味のない方も、この作品は知らない世界の扉を開ける映画だと思うので、観ていただければと思います。

森川:私は女性に観ていただきたいです。ラリーの映画と聞くと、女性は少しためらってしまうかもしれないんですけど、観に行ったら絶対に熱くなれると思います。ラリーのメカニックだったり、ドライバーやエージェントの話ですけど、普段の自分たちがやっているいろいろな仕事とも共通していて、明日から自分のできること、目の前にあることを頑張ろうって思える映画だと思います。男性はもちろんこういった熱くなれるものが好きだと思うし、女性も必ず楽しんでいただける部分があります。あとは、やっぱりイケメンもいるので、そこも観て「明日から頑張ろう!」っていう気持ちになってもらいたいなと思います。

 

Photography=Mime Soga

Interview=Ameba

Hair&Make:石川奈緒記(東出昌大)
Stylist:檜垣健太郎(東出昌大)
 

映画『OVER DRIVE』6月1日(金)全国東宝系ロードショー

映画『OVER DRIVE』公式サイト

 

©2018「OVER DRIVE」製作委員会

 

【STORY】

世界最高峰のラリー競技・WRC(世界ラリー選手権)の登竜門として、若き才能たちがしのぎを削る国内トップカテゴリーのSCRS(SEIKOカップラリーシリーズ)。
スピカレーシングファクトリーとライバルチームの熾烈な優勝争いは激しさを増していた。
スペシャルステージで競われるのは、コンマ1秒の世界。
「攻めなきゃ、勝てねーから!」
WRCへのステップアップを目指すスピカ所属の天才ドライバー、檜山直純。
真面目で確かな腕を持ち、チームに貢献するメカニックの兄・檜山篤洋の助言を無視し、リスクを顧みない、勝気なレースを展開する。
ラウンド毎に衝突を繰り返す二人。
いつしか、チームにも険悪なムードが漂い始め……。
そんなある日、素行の悪い直純の新しいマネジメント担当として遠藤ひかるがやってくる。
なんの知識もなく、完全に場違いな、ひかる。
彼女を待ち受けていたのは、檜山兄弟の確執に秘められた過去、そして、チーム全員を巻き込む試練だった。