破産寸前のホテルを舞台にした連続ドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)で、存在感ゼロ×神出鬼没のウエイター“服部要蔵”を演じている佐伯大地。主演の岩田剛典、戸田恵梨香をはじめ、鈴木浩介、渡辺いっけい、中村倫也といった個性的で実力に定評がある俳優陣とともに、痛快コメディーに挑んでいる。
 

インタビューを行った場所は、佐伯の所属事務所。目を引く184cmの長身に、人なつこい笑顔で現れた佐伯は、共演者との和気あいあいとしたエピソードや「ヒヤッとしたどころではなかった」という撮影で起こった“崖っぷち”裏話をたっぷりと語ってくれた。
 

 

■存在感ゼロだからこそ、存在感の出し方が勝負!

 

――突然現れて周囲の人を驚かせたりと、空気感も周りとは違う、とてもユニークな人物を演じていますね。まずは、出演にあたっての率直な感想お聞かせください。

 

佐伯:共演者の方が、みなさん達者な方々ばかりだったので、存在感ゼロのウエイターという役ではあるんですが、自分の存在感をどう作品の中で出していくのか、それがすごく大切だな・・・というのが最初の印象でした。それこそ、1話目が勝負!と、顔合わせのときから思っていました。それは監督もおっしゃっていて。最初に自分のキャラクターや位置というものを掴むとそのあとの撮影がすごく楽しくなって、どんどん服部というキャラクターの良いところも悪いところも出せて、それが個性になって、登場人物の一人として作品にいい影響を与えられるようになると思うので、すごく考えましたし緊張しましたね。

 

――役作りや準備はどのようにしたのですか?

佐伯:僕は人間観察をするタイプじゃないんですが、人とのコミュニケーションが大切だと思っていて、周りにいる変だったり変わっているなと感じる人のことはなんとなく覚えていることはあり、そういう人の行動や言動を思い出したりしてやりましたね。空気が読めない種類っていっぱいある中で、どういう空気の読めなさなのかなと考えて。
あと、今回の役は、役作りというよりも、どういうふうに居たら面白いのかということをけっこう考えました。過ぎ去ってしまうようなシーンで、ガッと印象を残して、変だということを提示しなくてはいけない。一瞬を死ぬ気でやる覚悟というか。自分が登場するシーンをどのようにするか想像する時間が、いつもより長かったですね。

 

 

 

――毎回、服部の登場シーンが面白いです。周りのキャストが一斉に驚く様子も含めて、シーンが締まっているように感じます。

 

佐伯:服部が現れた瞬間というのはものすごく不自然で奇妙な画でないといけないんです。動きのある状態できている中、急に静体の男がシュッと立っていて、しかも全然違うところを向いてしゃべっているのがいいのか。もしくは、ものすごい近くにいるのが面白いのか、画的に端のほうに忍んでいるほうがいいのか…とか。演じる役柄のバックボーンも必要ですが、こういうシチュエーションコメディって、シーンの派手さというか、まずはインパクトの強さで、役の面白味を出していかないとって思い、いろいろと考えています。
 

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――服部のバックボーンはどのようなものなのですか?

 

佐伯:服部は、何かと間の悪い瞬間に居合わせてしまって、バツの悪い雰囲気にしてしまうということが続いてきた人生で。それが神出鬼没で現れるという個性になっている。忍者的な(笑)。お前いたのかよ!という。ドラマだから面白くしているところもあるけれど、そういう人っているじゃないですか。いわゆる口下手にもいろいろ種類があるけど、空気の読めなさとコミュニケーションの下手さというか。人との距離感が読めなくて、悪気がなく、ただ純粋にコミュニケーションを取ろうとして来たんだけど、何か変なかんじになっちゃったな…ということが続いているんですね(笑)。
 

――その服部に共感できたり、似ているなと思う部分はありますか?

 

佐伯:ズバズバ物事を言ってしまうっていうところは似ているなと思います。僕と服部では、自分の意見をまっすぐに言う理由が根本的にまったく異なっているけど。僕は人とのコミュニケーションが大切だと思っていて、普段から会話は多いほう。服部みたいな人がいたら、ほっとけなくて「お前変だよ、距離が近い近い!」とか「今ぜったい俺の言うこと聞いてなかったよな」とかツッコんで、ズバズバ言ってあげたくなる(笑)。


 

■役へのアプローチを変えた

 

――根本的に真逆なのですね。演じる上で気を付けているところ、こだわっているところは?

 

佐伯:以前受けたオーディションで、とある演出家の方の話で今の自分に刺さったことがあって。「面白い役者さんは、どんなキャラクターでもバカな部分を見つけて、そのバカなところを取り込んで堂々と演じているよ。だから共感できるんじゃない?」って。「どんなかっこいい役でも。かっこいいところだけやってるやつなんて面白くないでしょ」って。オーディションでは、かっこいい男、女々しい男、無口な男などを、くるっとまわって、それぞれのバカな部分をみつけて演じてください、と言われて。僕はわかってなかったな、と思ったんです。無口ならまず無口、というところで止まっていた。そのオーディションがあった後、運よくこのドラマをやらせていただいて。共演の皆さんを見ると、どの役もその部分を現場に持ってきて演っているから面白いし、まさにそういうところなんだなと思いました。
 

――服部は、口数が少なく表情もほぼ変わらないのに、妙に気になる存在感があります。その理由が、ちょっとわかった気がしました。

 

佐伯:服部の役も、このセリフだときっと彼は理解していないなとか、バカな部分を見つけて、可愛らしさや人間味が出せるように演じています。でも僕のセリフって説明セリフだけなんですよ。感情のセリフが一切なくて。業務連絡や返事だけとか。感情を入れたくなるんですけどねやっぱり。でも、そこは、徹するようにしています。

 

 

 

■憧れの先輩から言われて納得

 

――共演者とはよく話をするのですか?
 

佐伯:前室(ぜんしつ、撮影場所の手前にある待合スペース)で、みんなでワイワイと。大人の方が多いのですが皆さん分け隔てなく、楽しく話してくださいます。なかでもよく話すのは、シーンがわりと多いということもありますし、僕がしゃべりたいという気持ちもあって(鈴木)浩介さんと、(渡辺)いっけいさん。中村倫也さんも、今までテレビで見ていた憧れの役者さんで。その方々と共演できるというので、話を聞きたくて積極的に会話をさせていただいています。

――どういった話をしているのですか?


佐伯:僕が、あの役すごく好きでしたとか、あのセリフはアドリブですよね?とか、どうやってやったんですか?とかミーハーな質問をしたりして。昔はそういう質問や話したりするのはダメだと思っていたけど、わりと楽しんでもらえたりするんですね。

 

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――ベテランの方との会話では、参考になることもありそうですね。

佐伯:演技そのものを話すことはあまりなくて、そこは観て盗めじゃないですけど、たぶんそういうことだと思っていて。倫也さんが「役へのアプローチ、向き合い方が一緒にいるとわかるからいいよね」と言っていたんですが、現場で、達者な役者さんと共演すると、その方たちが役を作り上げていく過程を見ることができるんですね。ドラマで完成されているものを見るのとはわけが違うんです。倫也さんが、リハーサルをやって本番までのなかで、「どういう風に演じて調節して、面白味を見つけているのかっていうことを見られるのが、一番勉強になるんじゃない」って言っていて。本当そうだなと思いました。
 

――そのほかに、なるほどなと思ったことはありましたか?

 

佐伯:僕は名前を売らなきゃいけないし自分に合う役というのを探している途中で、まだまだ未熟。ハマリ役というものに出会ってヒットしたい、どんな役でも挑戦したいと思っている。けれども、どんな役をやりたいかと聞かれたときに、これまではしっくりはこないけどどうにか捻り出して答えてきたんです。浩介さんが、「よくインタビューで今後どんな役を演じてみたいかと聞かれることがあるけれど、やりたいのとかないんだよね。全部やりたいから、悪役やりたいとかない」って言っているのを聞いて、僕も、この役がやりたいというのではない、と、ストンときました。


 

■岩田剛典は、長セリフなのに完璧!

 

――主演の岩田剛典さん、ヒロインの戸田恵梨香さんはいかがですか?

佐伯:岩田さんも戸田さんも、すごいセリフ量をさらりとこなしていて。大変なことでも、みんなにはさらっとやっているように見える。座長として、しっかり僕たちを引っ張ってくださっているという安心感はものすごいですね。今の自分では到底できないなと思いながらも、できなくてはいけないなと。すごく勉強になります。
 

――セリフが長いのにさらっと!


佐伯:岩田さんは特にセリフめちゃくちゃ多いです。だから、撮影がスムーズに進んでいる中、僕がセリフを1回でも噛むと、もう崖っぷちです。ヒヤッとするどころじゃなく、次で決めなくちゃ!とそれはもう・・・。岩田さんが一番セリフ量が多いのに、NGを一番出さない。NGが少ないというより出さないんです。

 

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――それは崖っぷちになりますね!ほかにもエピソードがあれば教えてください。


佐伯:僕とくっきー(野性爆弾)さん、チャド(・マレーン)さんの3人一緒のリアクションシーンで、一瞬のシーンなのに、何度やっても「もう一回」「もうすこしキレよく」と言われたときは、崖っぷちでした。長いシーンでみんながしゃべったあとの、僕のセリフがない、リアクションのようなワンカットで止めてしまって。こんなところで何回やるんだってなって、恥ずっ!てなりました(笑)。

 

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――うわ~!でもその様子を想像すると、ある意味現場が和みそうですね(笑)。それでは、最後にホテルの名前の意味である“大逆転”にちなみ、大逆転したこと、大逆転したいことを何か教えてください。

 

佐伯:僕の人生自体が、負けから始まっているんで、大逆転ばかりでした。大学生の19歳のときに初めて大きいオーディションを受けたときもそうでした。僕は大学で演技がやりたくてそういう学部に入っていたし、周りからも絶対グランプリだろうと言われていたし僕もそうだと思っていたんです。それなのに何の賞も取れなくて。あまり泣いたことがないのにぽきっと何かが折れて、はじめて号泣しました。そしたら、事務所の社長とマネージャーさんが二人で声を掛けてくれて、いまの事務所に入ったんです。
 

僕の人生ってずっとそうなんですよ。ぎりぎりなんだけど、掴んできた。苦渋をなめたところから始まっているから、これまでのオーディションで合格した人たちもいろいろと活躍しているけど、彼らをごぼう抜きして俳優として売れてやりたいな!という風に思っています。俳優・佐伯大地が、みんなが認める役者になること。これが、これからの大逆転かなと思っています。
 

――ものすごい強運の持ち主なのだと感じました。佐伯さんの今後の活躍も楽しみにしています!

 

 

Photography=Hironori Sakunaga

Interview=Ameba

Hair&Make:仲田須加
Stylist:徳永貴士

 

 

日本テレビ系連続ドラマ『崖っぷちホテル!』 毎週(日)後10:30~11:25

☞崖っぷちホテル!|日本テレビ

 

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【STORY】

本作の舞台は、郊外にたたずむ一軒の小さなホテル。かつては知る人ぞ知る、栄華を誇ったクラシカルな老舗ホテルだったが……。時は経ち、今は負債総額3億に迫る破産寸前のド底辺ホテルに!
岩田剛典演じる宇海直哉(うかいなおや)は、超絶ラフで全くホテルに似つかわしくない風貌の謎の男。この男、実は超有名ホテルで副支配人を務める“ホテル界の風雲児”と呼ばれている男だった!!
戸田恵梨香演じる桜井佐那(さくらいさな)がそんな宇海に「ここで私たちと一緒に働いて下さい!」と申し出て、宇海はそれを快諾。破産寸前のド底辺「崖っぷちホテル」で痛快な大逆転劇を次々と繰り広げる!!
 

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