時計を見たら、ちょうど16時を回るところだった。
券売機で二人分の新幹線乗車券を買って、ホームで少し待っていると東京行16:25やまびこ62号がゆっくりと流れてきた。
新幹線の中で、梨奈と話をしていたら、
「お兄ちゃん、そういえば私4月から私、仙台の学校に行くのよ。」「えっ?聞いてないよ~。」
「言ってなかったっていうか、昨日学校から連絡が来たから、お母さんと話しただけで私もびっくりしていたのよ。」
「何か、仙台に縁があるな」
「そうね~、夏海さんもいるしね、ふふっ」
「何が、ふふっだよ。」
「お兄ちゃんの、タイプかな~って思った。」
「うるさい、それで何の学校なんだ?そこは。」
「高校なんだけど、音楽の専門科があって、ピアノと声楽に進もうかなって…最終はどっちか決めなきゃないけど、まだ、決められなくて。」
「偉いな、頑張れよ。」
「うん」
「でも、仙台ってまたなんで?」「ネットで探してたら、制服がセーラー服ですっごく可愛かったの!」
「それだけ?」
「うん、お母さんには、内緒ね。」
「内緒か、まぁ俺も遊びに来れるってことだし、一件落着かな。あー、クリームはどうするんだ?」「ん~、多分お母さんが、見てるって言うと思うよ。だって、私が居なくなったら、寂しいじゃない?」
「そうだな、どっちにしても、クリームは、家の家族だから。梨奈もすぐ帰ってくるんだし。」
「そう、休みの時は、東京で過ごすし、お母さんも、クリームも仙台に遊びにこれるもん。」
梨奈は、新しい家族に大満足だった。
ずっと、妹か弟がほしいといってたから、丁度いい妹が出来て良かった。
10日がたち、とうとう、クリームが来る日になった。
朝から、梨奈は車の音がする度窓から外を覗いては、行ったり来たり。

ピアノの練習も全然気が向かないらしい、途中で、辞めてまた、最初からを何度も繰り返していた。「来たら、箱から出さずにまずは動物病院に連れて行ってからだぞ。」

父が言った。俺もそう思っていた。

「そうだよ、直ぐに角の動物病院につれていこう。」

「えー、嫌だけどそうする。1番に抱っこするのは梨奈が良かったのに…」

「ちゃんと、健康診断して、ずっと一緒に要られる方がいいだろ」

「うん、そうだね、そうする。」

と言ってる間に、到着したようだった。


玄関のベルが鳴り、外に出るとなんとかがやきの店主がわざわざ届けに来てくれたのだ。
梨奈は、
「わ~、ありがとうございます。」
「わざわざ、ありがとうございます。」
「運送会社の方で急に、断られてちゃって、多分この前送ったのが、お客さんに届く前に死(す)んでしまって、またそういう事故が起きると困るからなんだろう。んだがら、クリームを連れてきたんだ。」
と言って、ダンボールの箱を開けたら、少し疲れたか、すやすや眠るクリームが、ぺったりとペットシートに新聞紙をちぎった物とタオルが入ってる。
タオルに顔をくっつけていた。
親犬の匂いが付いているタオルが入っていると安心するのだそうだ。

細心の注意をして運んでも、パルボや特にチワワは、水頭症などでなくなってしまうケースがあるそうだ。

もしかして、ユリの子犬たちは、運送会社の雑な扱いだったのか、それとも先天性の病気だったのかなんて考えながら、クリームを受け取り梨奈と動物病院にクリームを連れて行った。
本当の事など、誰がわかるだろうか、生まれた時から、弱いところがあったり、病気だったり、最大限大切に育てても、生きていけない事もある。
それを、人間の身勝手でそうさせてしまわないように、見守っていくのが、ペットを飼う、共に生きるということだと思う。
「良かったね、何もない健康だってクリーム!」
動物病院を出た、梨奈はクリームに話しかけた。