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大麻の生産農家は27人まで減少、最大産地は栃木県…「畑に2mの柵や監視カメラ」要件緩和も
神社のしめ縄などに使われる国産の麻(産業用大麻)が生産者の減少で消滅の危機にある中、各地で再興に向けた取り組みが進みつつある。新たな麻製品を開発する農家や、地域ぐるみで栽培に乗り出す自治体も出てきた。関係者は「今こそ伝統産業の復活を」と意気込んでいる。
需要減
産業用大麻の全国最大の産地・栃木県では、薬物の大麻とは異なり、麻薬成分のほとんどない無毒性品種「とちぎしろ」が栽培されている。この品種は1982年に県が独自に開発した。
かつて大麻は衣類や漁具など幅広く利用されてきたが、外国産や化学繊維の普及で需要が減少。以前は6000人近かった県内の生産者は12人に減った。その大半は60~70歳代で後継者不足が深刻だ。江戸時代から続く鹿沼市の麻農家で、元横綱・白鵬関の化粧まわしの麻を生産した大森芳紀さん(44)は「このままでは日本から麻農家が消えてしまう」と嘆く。
国内では薬物の大麻と同様に大麻取締法で規制されている産業用大麻。厚生労働省によると、50年代に全国で3万人以上が栽培していたが、生産者は2021年末時点で27人にまで激減した。年間約2000キロがしめ縄用などに出荷されるが、希少なためビニール製で代用する神社もあるという。
全国の栽培面積の半分以上に当たる約4ヘクタールで栽培する大森さんは、麻の丈夫さを生かして活用の幅を広げようと、麻製の紙や建築資材の開発に挑戦している。今年2月には大阪市の繊維商社とともに麻製の紙器を商品化。企業からの問い合わせも増えており、「用途を広げて経営を安定させ、若者にとって魅力のある産業にしたい」と話す。