前回に引き続き、工蟲のニセ書籍より抜粋した文章。
魁!!男塾の民明書房みたいなの大好き。
あんまり考えすぎると作品が固定化しちゃいそうなので、多分工蟲の謎は当分の間解き明かされる事はなさそう。
まぁ実際の生物に関しても判ってることは一部で、今までの常識が覆ることなんかよくあることなんだろうけど。
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工蟲とヒトとの関係性には不可思議な部分が多々ある。
そもそも工蟲がヒトの仕事を手伝う、という事自体が不可思議な訳だが、ここではまた違った例を紹介しよう。
ネジマワシ 𝑹𝒐𝒕𝒂𝒕𝒊𝒗𝒊𝒓𝒈𝒂 𝒂𝒓𝒂𝒕𝒂という工蟲がいる。
これは一対の翅を持ち、腹部の作業器でネジを締める事を作業習性に持つ種であるが、翅開長400mmとそれなりの大きさを持つ。
ネジマワシ
このネジマワシに、「全く気づかない」という人が存在するのだ。
ネジマワシは栃木県宇都宮市にある大谷石採石場跡周辺でよく見かけることができ、飛行する姿もよく目撃される種である。
大谷石採石場跡地の岩陰で休むネジマワシ
あるとき、その周辺住民に聞き取り調査を行うこととなり、最初の質問としてネジマワシの写真を提示し、見たことが
あるかを質問したところ、半数以上が「見たことが無い」と答えた。
少し歩けば岩陰で休む姿や飛行する姿を見ることができるというにも関わらずだ。
その後も似たような調査をしてみると、同じような条件の工蟲に対しても「見たことが無い」と答える人間が多くいることがわかった。
それを不審に思ったある研究者がいくつか実験を行った。
何も置かれていない白い部屋に、許可を得て捕獲したネジマワシの生体を放ち、そこに被験者を入れるというものだった。
当然、すべての被験者はネジマワシを認識し、半数程は「こんな生き物がいた事を初めて知った」と回答した。
一週間後、その部屋に家具等を配置した上で同じ被験者たちを部屋に入れた所、当然前回の実験に比べてネジマワシを認識するのに時間が掛かったが、前回「初めて知った」と回答した被験者は他の被験者に比べると、より時間が掛かるという結果になった。
驚くべきことにその被験者たちは、一週間前に見たはずのネジマワシに対して、またしても「初めて知った」と答え、一週間前に見たはずだ、と伝えても記憶にない様子だった。
更に同条件で、ネジマワシの生体ではなく標本に変えた実験を行った所、全ての被験者が難なくネジマワシの標本を認識したが、これまでの実験でネジマワシを「初めて知った」と回答した被験者たちは、この実験においても同様の回答をしたのだ。
この実験の結果から考察するに、人によって工蟲を認識できる者と認識しにくい者が存在し、工蟲を認識しにくい者は一度認識しても記憶への定着がしにくいと考えられる。
他の生物においても、その生物への興味、関心によってはこういった事も起こることは多々あるが、仮に全く工蟲に興味が無かったとしても、通常の生き物とは見た目からして異質な構造を持った工蟲を全く記憶していないとは考えがたい。
そこでたてられた仮説が、工蟲がヒトの認識機能に対して何らかの干渉をしている、というものだ。
工蟲が短距離無線通信によってコミュニケーションを取り、ウロツキ 𝑷𝒓𝒐𝒘𝒍𝒆𝒓 𝒑𝒓𝒐𝒘𝒍𝒂𝒏𝒔 などがその無線通信を中継することは良く知られているが、その他にも一部の種においては発振器という器官を用い、空気の振動を利用したエコーロケーションを行うことも判明している。
フチテラシの発振器(頭胸部前面左側の円筒形の器官)
それらのように、ある種の電磁波を放つ事によってヒトの脳が持つ物体を認識、記憶する機能に干渉しており、工蟲の生態を映像に捉えようとすると強いノイズがかかる、という事象もこれに関係していると考えられる。
前述の標本を用いた実験の後日談として、被験者たちにネジマワシの写真を見せた所、すべての被験者がネジマワシの姿を記憶していた。
おそらく工蟲の、ヒトの認識機能への干渉は生体のみができる芸当なのかもしれない。
私自身工蟲の研究をしている中で、あらゆる分野の方に出会い、自分の研究対象について話すことも多いが、体感としては半数以上が上記の実験のようにぼんやりとしか認識してもらえない、もしくは記憶に定着していない、と感じている。
その中でも、画家や彫刻家、イラストレーター、小説家などのモノを作ることを生業とする者や、それに近い精神性を持つ者は工蟲を認識する能力、もしくは工蟲の干渉に対する耐性が高いように感じられる。
これは完全に私や他の研究者の体感でしかなく、全く信憑性はないがどことなくそういう傾向があるようだ、ということを付け加えておく。
五十井田是和 著
「工蟲とヒト」より抜粋
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長いこと放置されていたブログに意外な使い道があったことが嬉しい。
この手の工蟲の設定と展示、イベントの告知に使っていきましょうかね。