私がブログを始めたのは、イギリスに来て数か月が経過した時の事。
その頃、私は夫の両親と同居させてもらっていた。
ホームステイを経験した事のある私のたっての願いであった。
家族がいれば四六時中英語で話す事になり、それが暮らす事に慣れる早道だと思ったからである。

ホームシックで途方に暮れ、ホームシックに飽き飽きし、ホームシックに吐き気がするほど嫌気がさしていた。
それでも襲って来る悲しさと寂しさ。
何とか暮らしに慣れさせようと心配してくれる義両親から言われる「早く友達を作りなさい」という言葉。
それが出来たらどんなに良いか・・一体どこに友達がいるのか・・どこで出会うというのか・・それを言えずに押し殺し、英語漬けになれば良いと自分に追い込みをかけながら暮らしてた頃、ブログという存在を知った。
以来、唯一私の日本語を書く場として今に至る。

そんな中、2年前の夏にブログが書籍化された。
その時、初めて夫の兄弟は私がブログを書いている事を知る。
しかしながら日本語なので読めないと、誰も興味を示さなかったが、最近になって夫の一番上の兄が義母を通し私にお願いをしてきた。

それは「自分が描いた絵を掲載し、売って欲しい」と言うのである。
絶対いや・・
そもそも、働く事が好きではない義兄。
夢は好きな絵を描き続けて暮らす事である。
それがお金になり暮らせるならやればよい。
しかし、それが実現しないから趣味の範囲でとどめ、仕事は仕事として持ち続けるしか自分の家族を養っていく術はない。

しかし最近になり、仕事が嫌になって来た。
もともと働く事が嫌いな男が、いよいよ仕事をしたくなくなって来たのである。
そこで「ああ、そういえばアノ子が・・」と思い出したのであろう。

私は義母から相談を持ち掛けられたが、即答で断った。
自分で描いた絵を売りたいなら、自分で売れば良い。
路上で売るのか、ブログをするのか、フェイスブックで広めるのか、それは知らんが本人次第である。
彼の本気が見えない、そう思った。
私は義母に「私のブログは私のイギリスにおける唯一の日本なんです。日本人の方々から頂くコメントは私の中の日本人としての繋がりみたいなものを感じる場でもあり、大げさかもしれないが聖域みたいなものだから、身内の絵を買ってくれという文言は入れたくない」と言った。

義母は理解してくれた。
夫にも義兄から催促のメールが来ていたが、夫は断った。
以来、義兄は私に距離を置き、会ってもよそよそしい。

義兄からすれば「ちょっと記事の端っこにでも載せてくれたらエエだけやん」と思うであろう。
しかし私が最も嫌な理由は、他人に頼るつもりの50歳の男が嫌なのである。

バブル期後半、アメリカ在住の有名日本人画家の絵を金持ちらがこぞって買って行く画廊で受け付けのバイトをした事がある。
凄い値段の絵を人はあっという間に買って行く姿を見ながらも、私は何度その絵を見ても「この絵のどこに価値があるのだろうか・・」と理解できなかった。
そりゃあ、「上手に描きはるわ~」とは思ったが、パソコンで描いたんか?というような絵具感の無い絵で、絵の価値って絵心の無い私が言うのも何であるが、人ぞれぞれやなと思ったのである。

そんなワケで、私は義兄からケチと思われているのであろうと思うが、少なくとも義兄の絵は上手ではあるが、私にとってはそれだけである。
自分でのし上がって行くがよい。
苦労せず義父母にお金を全て出してもらって来たツケである。
私とてイギリス生活にまだまだ馴染めていないのである。
人など助けている暇はない。
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