Rod Stewart - I Was Only Joking | イージー・ゴーイング 山川健一

Rod Stewart - I Was Only Joking

    フェイセズの頃のロッド・スチュワートはじつに良かった。今はストーンズに引き抜かれてしまったロン・ウッドのスライド・ギターをバックに歌うロッドはたまらなくいかがわしくて、素敵だった。『ネバー・ア・ダル・モーメント』というソロ・アルバムが気に入って、毎日のように聴いていた。
 思えば、ロッドぐらいいい加減な男はロック・シーンにも少ないのではないだろうか。歌がうまいのが禍いしているのか、自分のスタイルなんかすぐに放り出して、流行りのロックにとびつく。うまいのはわかるけど、それはないんじゃないのロッド、とぼくは何度思ったことだろう。
 やがて、ぼくはそんなロッドに愛想をつかしてしまった。『アトランティック・クロッシィング』も『ナイト・オン・ザ・タウン』も一応買ったけれど、大して聴きもしなかった。ところが、『明日へのキック・オフ』がリリースされ、このB面を聴いたとき、ぼくはロッドという男を、とても身近に感じ、彼のいい加減さや軽薄さがわかる気がした。結局ミック・ジャガーにもジョン・レノンにもなれなかった男。しかし、ロッドはただの不良少年でありつづけることができた。
 B面の最後の曲、「ただのジョークさ」は絶品だ。この曲はいわば私小説的な歌で、ロッドの本音がこめられている。

    今は静かにページをめくろう
 二十年以上もぼくはコスチュームを
    変えずにやってきたけど
    主人公はもうステージを去るべきなんだ
    観客は誰もぼくを理解してくれなかった
      ( I Was Only Joking/ただのジョークさ)

 あのいい加減な男も、たまにはこんなふうにシリアスに、弱気になることもあるのか、とぼくは思った。意外な気がした。
 同じ時期に彼のインタヴュー記事がなにかの雑誌に載って、その中でロッドは、「ロック・シーンには本当の友達なんか一人もいない」なんて言っていた。
「ただのジョークさ」は、本当にいい曲だ。とても稚拙な言い方で我ながら恥ずかしいが、とにかくいい曲なのだ。この曲を聴いてから、ぼくは彼を信用してもいいと思うようになった。
山川健一デジタル全集 Jacks
「みんな十九歳だった」より


↓画質は良くありませんが、最高のライヴです。ビデオテープで持っているのですが、もうデッキがないからね。これを見る度に、涙がこぼれる…

Rod Stewart - I Was Only Joking - Live 1981

https://m.youtube.com/watch?v=7_EQYS6iBTA