春ドラマで私めの期待度No.1の作品がいよいよスタートしました。
冬クールにNHKで放送された「お別れホスピタル」と同様に、見ていてつらく重苦しくなるドラマで、見るにはそれなりの覚悟が必要ですが、
難しいテーマを敢えて取り上げドラマ化する民放では決してできないことに挑むNHKの姿勢には拍手を送りたいです。
NHK 火曜22時
「燕は戻ってこない」第1話
主演…石橋静河
脚本…長田育恵
演出…田中健二
このドラマのテーマは代理出産です。
日本では倫理的な面から法整備されておらず認められてはいません。
しかし、海外では生殖ビジネスとして成り立っています。
ヒロインのリキ(石橋静河)は地元で介護士をしていましたが、辞めて上京し今は非正規雇用で病院の受付事務をしています。
29歳ですが安い給料で毎月ギリギリの暮らしをしています。おまけに雇用の契約も期限が迫っています。
金と安心を手にできたらと願いながら、希望もなく淡々と暮らしているのです。
同じ29歳の設定でも「9ボーダー」のヒロイン七苗とはえらい違いです。
そんなリキは、同僚でやはりお金に困っているテル(伊藤万理華)から代理母に登録しないかと誘われます。
リキは自分の卵子が使われて知らない誰かの精子とかけあわされ子どもができるのは気味悪いと違和感を口にします。
しかし、テルは割りきっていて、献血で血を提供するのと卵子も変わらないと、あっけらからんと言います。
それで何10万って貰えるんだからと金さえ手にできたらと言うのです。
金のために死体損壊した今話題の若者たちに通じる考え方ですね。
倫理観などどこへやらのようです。
代理出産に抵抗を感じていたリキですが、隣に不気味なおじさん(酒向芳)が引っ越してきて、いよいよこの暮らしに嫌気がさし、代理母のエージェントに会いに行きます。
リキには中絶の過去があるのですが、それはサロゲートマザーにはもってこいと認められ、リキは更に気をよくします。
リキが代理母になる相手の夫婦についても、並行して描かれ、それが元バレエダンサーの基(稲垣吾郎)と妻悠子(内田有紀)です。
基の母、千味子(黒木瞳)は基の遺伝子を残すべきと基の子を切望していて、不妊治療を重ねてきたようですが、悠子はできにくい身体で年齢も40代になり諦めかけていました。
基は悠子を気遣いながらも母の望みもはね除けられずに代理出産を希望します。
代理出産がリキや基、悠子にどんな思いをもたらすのか?ちょっと不謹慎ながら覗き見感覚で見届けていくことになりそうです。
「ただの卵の話です」というリキのナレーションには深いものを感じました。
石橋静河はやはりこういう憂いを帯びた役に合っていて期待通りです。
万人におすすめしにくいんですが「お別れホスピタル」をご覧になれた方は大丈夫だと思います。
今回の評価は…8