朝10時にみっぴと病院で待ち合わせて、
一度、院長先生に会いに行った。


院長先生は形式張ったことが嫌いだという。
会って挨拶もそこそこに、
みっぴはまるで院長先生につかみかかるような
勢いでわたしの状況の説明をした。

そして、
ぜひともS先生に手術をお願いしたいと。
ものの10分で話はまとまって、
すぐに外来のS先生の診察に向かった。


あまり待つことなく診察室に入り、
S先生に会った。

間違いであってほしかったけど、
やっぱり病名は癌で先生いわく「タチが悪い。」らしい。


勧められた手術は、やはり胃を全摘出する手術。

「若いから少しでも癌細胞を残したくない。
このタイプの癌は後ろで根を張っている危険がある。
手術はなるべく早いほうがいいでしょう。
木曜はもういっぱいだから来週の火曜日か明日。」


どーする?と先生が、こっちをくるりと向いた。


明日という言葉に一瞬ひるんだけど、一週間なんて待ちたくなかった。
外の待合いにいる彼とみっぴのところに駆けていって相談した。
全摘であること、手術が明日か一週間後であること。


すると
「やっちまえー」
「早いほうがいいでしょう」
という返事が返ってきて
そのまま入院が決定した。

あっという間だった。

みっぴは入院に必要な物を買いそろえに行ってくれて、わたしは手術前の
たくさんの検査で、彼と一緒に病院内を歩きまわる。


検査の順番待ちをしていたら、隣りに座っていたおじさんに声をかけられた。
「手術するの?そーに見えないけどねえー。」
「見えないですよね。ははは。」
「S先生かい?だったら大丈夫だよ。あの先生は頭抜けてうまいから。
うちのおばあちゃんも本当は内科だけど、S先生でなくちゃイヤだというから
無理に頼み込んで外科に入れてもらうんだよ。あの先生は患者のためになる
手術しかしないよ。」


噂どおりの先生だ。なんとなく安心。。。


それから超音波でおなかの中、胃のまわりの臓器をみた。
検査の先生は「これねー。3日前にきたばかりの機械で1億円するんだよ。」
なんて機械の自慢をしながら、さっきのおじさんと同じコトを言った。


「何で手術するの?ふーん。胃癌。何でわかったの?自覚症状あった?
へー。よくカメラ飲んだねえ。え。25歳以上で?良い会社だね。ラッキー
だったねえ。みつかって。S先生が言うなら大丈夫だよ。あの先生は県内で
一番上手なんだからね。ハイ。きれいだよ。この機械だと1mmまで見える
けど転移はないよ。」


手術よりも怖いのは転移だと思っていたから、そう言ってもらってとりあえず
安心した。レントゲンやCTスキャンも撮り終えて、買い物から戻ったみっぴと彼の3人で病棟にあがった。

それにしてもこっちから聞いてもいないのに、S先生の良い噂を立て続けに
聞いたわたしは素直ぢゃないなあー。
もしやさくらかっ。なんて思ったりした。


大部屋に案内されてから、
3人で近くのガストに行った。

検査の為にと、
朝から何も食べていなかった
わたしは目玉焼きハンバーグと
デザートまで食べた。


隣りでコーラだけしか飲まない
彼の方がよっぽど病人みたいだ。。。

食事が終わってみっぴは
「明日またくるよ。」と言って職場へ。


あたしと彼は病棟へ戻り、
買ってきてもらったものを整理したり
お母さんに連絡をしたりしていた。

すると外来が終わったS先生が病棟へ
あがってきて、手術の説明をしてくれた。


早期胃癌であること。
タチが悪く根をはっている可能性が
あることから胃は全摘。
また転移の可能性があることから、
脾臓とリンパ節の1、2群を摘出。

それから、
胃を全摘することで必然的に
胃の周りの迷走神経も一緒にとるため、
動きが鈍くなるという胆嚢も合わせて摘出。

胆嚢はそういう状態で残しておくと、
約50%の人は胆石ができちゃうらしい。

あと、
リンパ節の3,4群は取れないけど
組織を採取して転移を調べる。


転移。。。


早期胃癌だから、
転移なんてないんじゃないの??って
思ったけど、結局はとった組織を
全部こまかーーーく調べてみないと
わからない。


臓器を温存したいところだけど、
もしそれで少しでもガン細胞が残ったら、
それこそ取り返しがつかないことに
なるかもしれない。。。

手術自体は怖くない。
眠ってる間に終わっちゃうし。

でも、転移。。。。
すごく怖い。

「健診でみつかってラッキーだよ。」

きっとそうなんだろう。
でも、まだそー思えない自分がいる。


彼は高崎に宿を取った。
明日の朝には、弟とお母さんがくる。

きっとS先生なら大丈夫。


夜から絶食。



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アメーバチェック(白地)2001年当時に、自分のHPへ公開していた日記を一部移動しています。