「○井さんっ。終わりましたよっっ。」 
看護婦さんの声で意識が戻った。


おなかに重たい痛み。
鉛の玉がのっかってるような、
ひどい筋肉痛みたいな。。。

「大丈夫ですかっ。」の問いかけに、
声にしたくてもなかなか声にならない
わたしの第一声は、
「。。。。て。。。。てんい。。。
てんいは。。。。」
だった。

この時点では
転移はわからないって知っていたのに、
我ながら、よっぽど気にしていたのか
一生懸命とぎれとぎれにそう言うと、
看護婦さんは何かを
答えてくれたけど、覚えていない。

ただ向こうで先生に
「第一声が転移は?です。
かなり気にしていますねえ。」
と言ってるのが聞こえてきた。

どっと疲れを感じた。

ああ~。
手術って、
本当に体力使うんだなあ。。。

「つかれた~。。。。」

ため息まじりに、
そうつぶやいたのは
だれか聞こえただろうか。


病棟の個室に入り、
しばらくするとみんなが心配そうに
のぞきこんでいる顔が見えた。

でもやけに視界が暗い。
なんだか真夜中みたい。

意識が何度も途切れては戻り、
途切れては戻り。。。

眠るのとは違う、感覚だった。 

繰り返されたうわごとは
「てんいは。。。」と「いたい~。。。」

だって「いたい」って言ったら、
脊髄に入れた麻酔のモルヒネとは別に
点滴の痛み止めをくれるって聞いていたから。。。

みっぴ、お母さん、弟が帰った。

なんとかありがとう。って言ったんだけど、
聞こえたのかな?

彼だけが残って、部屋が静かになった。
今夜は付き添ってくれるって。

体が冷えて、とてつもなく寒くなった。
さむいさむい。。。と繰り返すと、
電気毛布を入れてくれた。
それでも寒い。

毛布の温度をあげてもらったら、
今度は熱い。
あついあつい。。。と繰り返すと、
毛布をはいでくれた。

もっとはいで。。。もっと。。。
もっと。。。ああ。。全部はがないで。。。

とぎれとぎれににしか、
しゃべれないあたしの言葉を、
彼は辛抱強く聞き取って足下だけに
電気毛布を残してくれた。


静かな部屋に、心臓の音が聞こえる。
ぴっぴっぴっぴっぴっぴぴっ。
あっ不整脈だ。。。
やっぱぴぴっってなるんだなあ。。


一定時間で計られる血圧計。
しゅこーーーーーっと音がなって
うつらうつらしてるわたしは
それにびっくりして意識が戻ってくる。


一度すごく血圧が低くなって
アラームがせわしなくなった。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。
わああああああん。こわいこわいっ。

でも看護婦さんがベッドを調節して、
足を上げたら直った。
こんな状態で一晩。

彼は毛布も無い簡易ベッドで
付き添ってくれていた。

うなったり苦しそうにすると、
ときどき心配そうにのぞきこむのがわかる。

でも声が、出せない。


手術前の体重47.5キロ。絶食中。

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アメーバチェック(白地)2001年当時に、自分のHPへ公開していた日記を一部移動しています。