ティルダ・スウィントンは元々演技派&個性派としてインディ系の映画が好きなファンの間では有名な女優さんではあったけれど、でもごく普通の(いや、あまり普通ではない一部の)映画ファン達に広く名前を知られるようになったのは、この「コンスタンティン」で

キアヌ・リーブスを踏んでから!

である。
キアヌの胸にすっくと立って、右足で喉元をうりうりしながらいたぶるなんて、アナタ、キアヌファンはみんな見るなり悶絶しましたわよ、羨ましくて(←おい!)。


こ~の「コンスタンティン」、素晴らしく凝ってておもしろい作品なのに、何故か劇場公開時は今一つパッとせずに終わってしまいましたが、一部熱狂的なファンがついたのは確かです。少なくとも私の女友達はみんな気に入ってました。全員Sっ気があるとみえる。


ティルダ演じるガブリエルは天使のくせに全くもって慈悲の心を持たず、登場するなり優しそうな顔をしながらコンスタンティン(=キアヌ)の心にぐさぐさ突き刺さるような言葉を連発していきなり観客の度肝を抜いてくれたものですが、極めつけがこれですよ。あの「マトリックス」のネオだったキアヌをバスマット扱いして踏み踏みするんですから魂消るでしょ。


アクション・ヒーローとしてのキアヌや恋愛ドラマの主役としてのキアヌを求める観客には、だからこのコンスタンティン役は不満足なものだったのかもしれません。病気で死にかけてる役だからいつも顔は青ざめて見るからに不健康そうだし。ここまで仲間の協力を得ながら戦い抜いては来たものの、一番の敵を目にした時にはその足の下だなんて。


しかしですね、女性に人気のある非マッチョ系の美少年のタイプというのは、どこかしら女性の保護欲をそそるような痛々しさを秘めているものなのですよ。レオナルド・ディカプリオしかり、今は亡きリバー・フェニックスしかり。彼らが強がって振る舞うのは、どこかに弱い部分を持っているので、それを隠すためなのですね。でもそういう弱い部分が彼らのどこかにあることを女性達は敏感に感じ取り、そしてそこに惹かれるちゃったりするんですよねー。


キアヌもどっちかというと、そのタイプ。

彼は「スピード」や「マトリックス」で超人的なヒーローを演じているけれども、最終的には運命に従っちゃうんですよ。運命に抗うだけの力は彼にはないんですね。もっとも彼の場合は運命に身を任せることによって新局面が開けるんですが。ただ、やっぱり何というか、運命のままに「流されちゃう人」っていうイメージにはつながります。そこがマッチョなだけのヒーローとは違って、どちらかというと彼の中の女性的な部分として観客の目に映る。言ってみればそれが彼の「弱さ」です。


その「弱さ」を白日の下にさらけ出してくれたのが、ガブリエルだったわけで。

そうなの、私達本当はキアヌのそういう「弱い」部分を見たかったの、と一部ファンは狂喜したわけです。できれば私も踏みたい、なんちゃって。


とはいえ、一生彼を踏んでいたいわけではありません。

彼はこの後に現れるルシファーにもいいようにいたぶられますが(このシーンがまた最高なのよね~)、しかしルシファーを利用することで形勢を逆転させるのですよ。

踏みにじられていたはずのキアヌなのに、いつのまにか立場がすっかり逆転してしまう。


いやしくもキアヌ・リーブスが主人公ならやられっぱなしってことはあり得ない、それは映画ファンなら誰でも予測します。


その予測があるからこそ、一旦はガブリエルに踏まれることをファンは喜んで受け入れるのですよ。この屈辱を受けたままでいるキアヌじゃない、必ず晴らしてくれるという裏付けがあるから安心してちょっぴりサディスティックな喜びにもはしれるわけで。


設定が設定だけに、コンスタンティンの運命が文字通り地獄から天国、天国から地獄、という具合に激しく二転三転するのがこの映画の醍醐味です。キアヌは運命に翻弄されているようでいて、実はちゃっかり逆らってもいたりして。ガブリエルに踏まれルシファーに引きずられても、彼はしたたかで誇りを失わない。最高に格好いい役だと思います。


キアヌの中に女性的なものを見いだしていた彼のファンは、その「弱さ」を秘めた彼がしぶとく生き延びているのを見て喝采を送るのです。私達だって、踏みつけにされてばかりではいないわ、と。運命に翻弄されるだけが生き方じゃないのよ、とね。



ところでこの「コンスタンティン」、あまりヒットしなかったのにも関わらずティルダ以外にもシャイア・ラブーフやミシェル・モナハンといった新進スターを輩出しております(ミシェルのシーンはほとんどカットされてますが)。監督とキャスティング・ディレクターの腕の確かさが伺えます。何しろキアヌの相手役のレイチェル・ワイズはこの後「ナイロビの蜂」でアカデミー賞とってますからね。ティルダはもちろん「フィクサー」で今年の受賞者。ジャイモン・フンスーは「ブラッドダイヤモンド」でオスカーノミニー。錚々たるメンバーです。



監督の方は「アイ・アム・レジェンド」で大ヒットを飛ばしましたが、でも私は「コンスタンティン」の方が好き♪ もちろんティルダがキアヌを踏んでるからです♪