ウナギ、食べた? ブログネタ:ウナギ、食べた? 参加中
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土用はちょっと過ぎてたけど、通には名の通った店で。
何しろ前を通りかかったら、あまりにも鰻の焼けるいい匂いがしてきたもので、辛抱たまらず。

あの鰻を焼く香りというか、焼く時に出る煙というか、あれは一番の客寄せに効果的ですよね。
昔読んだ「美味しんぼ」で、鰻屋さんを繁盛させるために、まず第一に換気扇のスイッチを切って煙を店から通りに出すようにしたら、その匂いにつられてお客さんが次から次に入ってくるという展開があったんだけど、あれは本当だわ。炭火であぶった鰻の匂いには、誰も太刀打ちできないわ、特に空腹だったら。

さて、その時はメニューを見て、腹具合と共に懐具合とも相談してお昼だったのでランチセットを頼みました。鰻丼にお吸い物と茶碗蒸しと香の物がついて1600円。普段昼ご飯なんかマックの100円コーヒーだったりする私にとっては結構な金額ですよ、これ。

ところが周りの人達が注文しているのは、どれも鰻重のそれも特上ばかり。ちなみにお値段は3200円。ランチが2食食えるっつーの。

特上じゃなかったら、そこの店の味ってものは味わえないんでしょうか?

1600円のランチで食べた鰻でも充分おいしかったですが、3200円だとその倍おいしいんでしょうか?

若干の疑問を残しつつ、でもどうせ3200円出すならレアステーキ(with 赤ワイン)の方が食べた気するわよねえ等と心の中で呟きながらどっこいしょと立ち上がる私。レストランは椅子席だから座ってても楽だしね、なんて心の中でつけたしたりして。

そうなんですよ、老舗なせいなのかそれとも鰻屋というものがおしなべてそうなのかはわかりませんが、その店では卓はすべて畳の上、客はすべて座布団の上だったんですよね。

そのため私はその鰻屋にいる間中ずっと正座だったわけで。

広くもない店内の周りを見れば、慣れた様子の他のお客さん達は男性はもちろん全員あぐらで、なおかつ柱を背にして寄りかかったり、肘掛け窓に肘をついて体を預けたり、すっかりくつろいでる御様子。女性客もスカートの中で膝を崩して脚は横に投げ出してるようだ。まるで自分の家にいるのと変わらない。

寿司とか鰻とかは値段が高くても気取って食べるものじゃないのね、なんて思ってしまう。
宵越しの金は持たないと豪語していた江戸っ子の食べ物にまさにふさわしい。
今日のランチが1600円だったから明日から一週間お昼は抜こう、なんて考えるみみっちい女の来るところではなさそうだ。金額気にしてたら美味しいものも味なんかわかんないもんね。


ところで鰻に欠かせない山椒だが、かつて家の庭にも一本あった。
これがもう、若芽の内から虫が付いて虫が付いてしょうがなく、虫を取りだしたらキリがないしかといって放っておくと丸坊主になってしまう。かといって食用に使いたいから殺虫剤を使うのもままならないし……等と毎年母が頭を悩ませていたものだが、ついにある年、出入りの造園業者が何かの機会でやって来た時
「タダでいいから誰かにあげて」
と言って引き取って貰ったそうだ。

で、後日母がその造園業者の所で植木を見ていると、見覚えのある山椒の木が結構な値段を付けられて並んでいたんだとか。

「こっちはタダでいいと言ったのに」
と母は不満顔だったが、向こうも商売なんだから仕方あるまい。

でも考えてみたらその山椒の木は元々その業者から買ったもの。

ひょっとして特に虫の付き易いものを売りつけては買った人が値を上げた頃に顔を出して引き取り、また何食わぬ顔をして同じ木を高く売りつけては(だってちゃんと何年か面倒見て育て上げたんだよ)、買い手が虫の多さに根負けしたころにひょっこりと顔を出してタダで引き取り、またそれを陳列して……を繰り返して利ざやを稼いでいるのかもしれない。

ボブさん所の山椒はどうです?

ある日ふらりと業者が立ち寄って
「おたくの山椒、虫は大丈夫ですかあ?」
なんて様子を探りに来てたりしませんか?

タダで引き取って貰ったりしてはダメですからね~。