ブログネタ:「誰でも良かった」で殺されたくない!
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コック・ロビンを殺したのはだあれ?
一体コック・ロビンは何故殺されたのか。
何故彼は死ななければならなかったのか。
そこに答えはないんです。
これには頭を抱えましたね。
少なくとも人1人殺されたなら、そこには動機が存在するはずです。
しなきゃいけないんです。
だって……何の理由もなく殺されたら、殺された方がいたたまれないじゃない。
本文はここから
Who killed Cock Robin?
I, said the Sparrow,
With my bow and arrow,
I killed Cock Robin.
コック・ロビンを殺したのはだあれ?
それは私、と雀が言った
私の弓と矢でもって
コック・ロビンを殺したの
これは私のブログのタイトルで、有名なマザーグースの一節からとったものです。
日本でも有名なのは「パタリロ」の「クック・ロビン音頭」とか、さらにその元ネタとなった「ポーの一族」の「小鳥の巣」といった少女マンガで引用されていたからでしょうが、ミステリーファンには忘れられないのが
ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」ですね。私が最初に出会ったのもこの小説でした。
ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」ですね。私が最初に出会ったのもこの小説でした。
この誌はとても長いものですが、谷川俊太郎さんが訳されたものがこちら
にあります。
最初にこの詩に出会った時、とても不思議に思ったことがあります。
ミステリーの題材として使われていたせいでそう思ったのでしょうが、この詩には殺人の被害者と下手人と目撃者と証拠と、あとはそれに続くお弔いの様子がうたわれているのですが、肝心な動機が全く出てこないんですよね。
ミステリーの題材として使われていたせいでそう思ったのでしょうが、この詩には殺人の被害者と下手人と目撃者と証拠と、あとはそれに続くお弔いの様子がうたわれているのですが、肝心な動機が全く出てこないんですよね。
動機なき殺人(コック・ロビンはコマドリですが、ここは擬人化)であり、しかも犯人は自分だと雀が悪びれずに名乗り出ているのに、その後特に捕まったり裁かれたりされる様子もないんですよ。ロビンの恋人だったと思しき鳩が出てきますが、彼女に恨まれることさえない。殺されたコック・ロビンはそのお葬式だけがただ粛々と滞りなく行われてそれでおしまい。
一体コック・ロビンは何故殺されたのか。
何故彼は死ななければならなかったのか。
そこに答えはないんです。
これには頭を抱えましたね。
少なくとも人1人殺されたなら、そこには動機が存在するはずです。
しなきゃいけないんです。
だって……何の理由もなく殺されたら、殺された方がいたたまれないじゃない。
自分が死という代償を払ったのなら、それに見合うだけの価値がそこになかったら……ただ、命を無駄にしただけになる。
人間にとって自分の命以上に価値のあるものはないはずです(思想上はあるかもしれないけれど、本能的には)。
それを何の理由もなく奪われたら、死んだ者が浮かばれない……と生きてる方は思いますね。死んじゃった人が死の瞬間どう感じたかは個人によって違うでしょうし、それを知る術もないわけですけれど。
コック・ロビンの死は不条理そのもの。
その不条理故に私の心には深く残り、遂にはブログのタイトルにまでなってしまった。
何が不条理って、彼は「殺された」のに、誰もそのことを取り沙汰して騒ぎ立てたりせず、ただ黙って彼の「死」を受け入れて、まるでルーティンワークのように手際よくお葬式の手配をするから。
「殺された」というのは異常なできごとのはずなのに、それを気にする者が誰もいない。犯人の動機を追及する者も誰もいない。
何故か。
おそらく、その世界では「殺された」という事実が、ごく当たり前のことだから。
異常なできごとではないから、誰もそれを問題にしない……そういう事なのでしょう。
今、現代の日本人は「誰でもよかった」という無差別殺人に直面して、騒ぎ立てています。
無差別殺人は被害者にとっては殺されるいわれの全くない、いわば動機なき殺人。コック・ロビンと同じです。死は突然彼の上に降って降り、犯人は平気で名乗り出て、残された遺族は悲嘆にくれる。
それをこうして各メディアが取りあげて話題にし、加害者の非人間性をやり玉にあげて糾弾している内はまだいいのだと思います。
無差別殺人がありふれたできごとになってしまい、誰もそれを騒がなくなる……ただ黙って被害者の死を受け入れ、お葬式を出して終わりにする……そんな日が来ない事を祈ります。それはあまりに不条理で、生きている人間の精神を蝕むものです。
それは、加害者が個人ではなく、国家である時に起こります。
戦争という形をとって。
「誰でもよかったで殺されたくない」
その気持ちが本当ならば、平和を心の底から願わなくてはならないのです。