予告編とか公式サイトの作り方で、その制作者が敢えて隠そうとしている「謎」が逆に浮かび上がって来ることがある。
「ミラーズ」もそうだったし、この「パッセンジャーズ」もそうだ。
「この謎は最後まで誰にも分からない」
と書かれた時点で、公式サイトやチラシにばらまかれた情報の中で「隠されている部分」が謎の中心だということが分かってしまうのだ。
映画の制作者は予告編やチラシの制作者よりももう少しだけ優秀な人が揃っているとみえて、実際に映画を見始めると自分の推測が間違っていたんじゃないかと感じさせてくれる。
その上手さは「謎」が「謎」であることを観客に悟らせない点にある。
あら、私が「謎」だと思った部分は全然関係ないことだったのかしら、と思っている間は好奇心から内容への興味も湧くが、その内「謎」があることが明らかになってきて、それが映画を見る前に自分のたてた推測通りだったりすると途端につまらなくなってしまう。
だからもう、私は予告やチラシを見るのをやめようかと思った。
だって、「パッセンジャーズ」、予告だったかチラシだったかを見た瞬間に思い描いた通りのストーリー展開だったから。
それが何故分かったかというと、要するに同じような内容の映画を以前に見ているからだ。ああ、このパターンだとこうくるな、というのがたくさん映画を見ていると自然と分かるようになってしまうのよ。
「パッセンジャーズ」の場合、「ミラーズ」と違ってホラー作品ではないため、映画を見ていて映像の部分で脅かされて楽しむということもできなかった。なんとかかんとか、退屈一歩寸前で辛くも踏みとどまっていたかな、という感じ。
私はアン・ハサウェイが案外好きなのでそれで彼女の映画はわりと見に行ってしまう。「パッセンジャーズ」のような映画でも見続けられたのはそこにアンがいるからだ。この映画がアンに合っているかどうかは別だが、彼女の大きな目や口の愛らしく動く様を見ているのは楽しかった。
でも彼女の出演する映画を見ていていつも思うのは、どうしてこんな美女なのにあてがわれる共演者の男ぶりはぱっとしないのだろうということ。
私の知っている中では、今までで一番マシな男だったのは「ゲット・スマート」のスティーブ・カレルじゃないだろうか?
男前だったのは「ブロークバック・マウンテン」のジェイク・ギレンホールだったかもしれないが、彼は彼女以外の人を心から愛していたのだから、役の上の彼女はとても幸せとは言えなかったし。
「プリティ・プリンセス2」の相手役はどう見ても彼女の引き立て役にすぎなかった。今調べたらクリス・パインでびっくりしたけど(「スター・トレック」の新しいカーク)。ハンサムには違いないんだけど、どこか物足りない人なのよね。カーク役でブレイクしたとして、その後だったらふさわしいと思ったかもしれないけれど。
「プラダを着た悪魔」のエイドリアン・グレにアーは……すいません、私の考えるハンサムの範疇からは完全に外れてまして……(単に私の好みの問題)。
で、「パッセンジャーズ」ではパトリック・ウィルソン。顔立ちは整っているんだけど、もひとつインパクトに欠けてるのよね~。薄いと申しましょうか、普通と申しましょうか。
思うにアンの顔立ちはハッキリしすぎていて、普段着で普通の生活を営んでいる役には、たぶん合わないのだ。
だから「プリティ・プリンセス」とか「ゲット・スマート」のようなどう見ても普通ではない役の方がぴたっとはまる。「ブロークバック・マウンテン」だって彼女のおかれている状況はあまり普通とはいえない。そういう普通でない映画に出てきて、相手役の男優が普通でない役を演じている時の方が彼女は生き生きとして見えるような気がする。
「パッセンジャーズ」の世界もあまり普通とはいえないし、パトリック・ウィルソンの演じた役がやってることはエキセントリックそのものだった。でもやっぱりアンと並ぶと、何か物足りない。アンの印象が強すぎて相手役の男性の魅力が褪せてしまうのだ。
それは結局、ロマンスにおいて二人が並んだ時にマイナスとして働いてしまう。釣り合いのとれたカップルとして安心して見守ることができず、映画を見ながらどうしても不満が募ってしまうのである。
アカデミー授賞式でヒュー・ジャックマンに舞台に連れ出されて踊っていた時のアン・ハサウェイは本当に光り輝いていたのに!
あの魅力を映画の中で再現するには、やはり相手役がヒュー・ジャックマンクラスでなければならないということだろうか。
私はサンドラ・ブロックも好きなのだが、彼女とアン・ハサウェイはちょっと似ていると思う。
サンドラはキアヌ・リーブスという最高の相手役を得て「スピード」でブレイクした。
アンに必要なのは当時のキアヌ・リーブスのような、美貌でありながら悪目立ちすることはなく、物静かで大人しいようでいて強烈な存在感のある、そんな若手俳優なのだろう。
誰か彼女にいい人、いませんかね~?